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 俺が銀級冒険者に昇格してから数カ月がたった。


 昇格のペースがかなり早く、俺の強さを見込んで最近では他の冒険者からパーティーを組まないかという話がよく来るようになった。手の内をあまりさらしたくない俺からすると、そのたびに断りを入れるのが少し面倒だと感じることが多くなってきていた今日この頃。


 それでもこの昇格の話を受けたのは、やはり上の級になるにつれて得られる情報の質と量がそれまでよりも多くなることに加えて、フィリップのようなつまらない相手に因縁をかけられることが無くなるという魅力もあったからだ。


 仕事の難易度はそれなりに上昇したが、眷属たちの働きで日々大量の経験値を得ることが出来ており、そのおかげもあり位階もかなり上がっている。つまり今の俺からすると難易度の上がった依頼も困難といえるものではなかった。


 眷属というと最近その数が100を超え、またその眷属の中から自分の眷属を作ることが出来るようになった個体も出始めたため、全体の数を把握することすら難しくなりつつあった。


 しかし暫定的に眷属たちの管理を任せていた眷属が管理能力に特化した能力を持つ上位種に進化し、おかげで効率よく成長することが出来ている。


 ちなみにその進化した眷属も見た目はただのスライムとそっくりであり、ギルドにもこのスライムに関するような情報が無かった。名前が無いと不便かと思い『マネジメント・スライム』と呼ぶことにした。


 それにしても特殊な進化をしたスライムに関する情報が全く見当たらないのは、見た目がただのスライムにそっくりであるため、人間達が気が付いていないだけなのではないかと最近思うようになった。探せば上位種であるスライムの新種が案外簡単に見つかるかもしれない。まぁ、見つけたからと言って何かあるわけでもないんだが。


 「清算が終わりました。こちらグレイボアの買取料と依頼達成による成功報酬です。金額をお確かめください』


 おっと、そういえば今は報酬の清算の途中であった。受領できる依頼のランクが上がるにつれて当然難易度は上がり、それに比例して成功報酬の額も多くなる。その為報酬の清算にかかる時間が以前よりも長くなっていたため、その間こうして考え事をしてしまう。


 「………八、九、十。はい、確かに頂戴しました。やっぱり、緊急の依頼だけあってなかなか割のいい仕事でしたね。紹介してくださってありがとうございました」


 「いえいえ、こちらこそ。ネスさんみたいな腕の立つ冒険者が運よく手が空いていたのはこちらとしても非常に幸運でした。これから作物の収穫シーズンに入りますから、収穫直前の畑の作物を食い荒らすボアに近くをうろつかれてしまうと、農家の方々が安心して畑仕事ができませんからね。少し前にご領主様が周辺のボア狩りを指示されていたようですが、どうやら運良く逃げ切った個体がいたようです。競争相手がいないせいか、いつの間にか進化してしまっていましたし。それにしてもネスさんはこういった魔物を探すのが非常にお上手ですよね。何か秘訣とかあるんですか?」


 「秘訣…というか、勘?ですかね。まぁ、田舎出身で魔物が身近にいる環境で生活していたんで、魔物がどういったところに巣を構えているのか大体ですが分かるんです」


 馬鹿正直に『眷属達に探させました』と言えるはずもなく、適当にそれっぽい嘘をついてその場をやり過ごす。だんだん嘘をつくことが上手くなってきた感じがするな…


 「勘…ですか、なるほど。上位の冒険者の方ですと意外と理屈とかではなく、ご自身の経験や勘を信じて行動なさる方も多いいと聞いたことがあります。いよいよネスさんも上級冒険者の仲間入りという事ですね」


 「いや~、流石にそれは言い過ぎですよ。自分なんてまだまだです。日々、自分の無力を噛みしめていますから」


 「うーん、流石に謙遜し過ぎじゃないですか?冒険者になってから1年足らずで銀級に昇格して、金級にも足が届きかけているそうじゃないですか。もう少し自信を持たれた方が良いと思いますよ」


 「そう…ですかね?…っと後ろに人が来ましたので自分はこれで。今度また何か美味しい依頼があれば、よろしくお願いします」


 いつものように練武場で鍛錬をした後、宿に向かう。周りからの目もあるのではあまり必要とは思えなかったが一応部屋のグレードも上げており、広々とした室内で今後の計画を練る。


 今の自分の実力はミスリス級といったぐらいか。冒険者としては一流の仲間入りといえるが、騎士団を相手にして勝てるほどの力はないことは自覚している。


 ただ最近力の伸びが以前よりも緩やかになってきているのは、強くなったことにより次の位階に成長するための経験値の量が増えたからなのだろう。


 少し前から進化した個体からなるエリート部隊を結成し、彼らを中心に少しずつ活動範囲を広めていってはいるが、慣れない環境で無理をさせて冒険者達に狩られてしまうのは本末転倒である。そのためまずは新しい環境になれることを優先させており、未だに大きな成果をあげられていない。まぁ、そこは今後の成果に期待することにしよう。


 いっそのこと俺自身が新しい環境に身を置くというのも悪くないだろう。そうなるとどこに移動するのが得策か…などと考えていると眷属から念話が届いた。


 『お久しぶりです、ゼロ。16番です。今お時間よろしいでしょうか?』


 『おう、久しぶりだな。距離が離れているほど念話に必要な魔力が多くなるから、最近はほとんど連絡を取り合っていなかったからな。まぁ定期的にお前から大量に経験値が送られてきていたから、あんまり心配はしていなかったけど。最近どうよ?』


 『順調ですね。ジルが魔物の配下を作ったことで全体の仕事の量は増え、一時期は寝る間を惜しんで仕事をしていました。ですが私の眷属を作ったことで役割分担が出来るようになって、以前よりも楽が出来ています』


 『寝る間を惜しんで』と言っているが、俺たちにはほとんど睡眠は必要ない。つまり16番なりのジョークなのだろう。


 『そいつはいいな。おっと、話が脱線してしまったな。それで、わざわざ念話を送ってきたってことはなんかあったのか?』


 『はい、朗報です。戦争が起きそうなんです。他でもない、私たちのせいで』


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