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 私は『19番』。サーチ・スライムの『19番』だ。


 最近上位種に進化する眷属が多くなってきた。その進化した眷属のみで、つまり眷属の中で選び抜かれたエリートのみで結成されたチームの、暫定的とはいえリーダーを任されている。いわばエリートの中のエリート、それがこの私だ。


 とはいっても、所詮は暫定的な措置でありこれから様々な種類の上位種の眷属が生まれれば、もしかしたらリーダーに向いている能力を持った眷属が生まれ、私のこの地位を奪われてしまうかもしれない。


 そうならないためには何が必要なのか。簡単だ、結果が必要なのだ。『ボス』をして、ぐうの音も出ないほどの大成果を上げることが出来れば、私はリーダーで居続けることが出来るはずだ。


 そしてその成果を出すためには、私個人の努力だけでは如何ともしがたい。だから私は毎朝部下たちを集めてミーティングを開いている。前世の『私』…いや『私たち』はこのミーティングが時間の無駄としか思えず、そんなことに時間を使うぐらいならさっさと仕事をさせろと常々思っていた。


 しかしいざ自分が上役になると、どういうわけかこのミーティングを開きたくてたまらなくなる。全く持って、不思議なものだ。


 『さて、それでは今日のミーティングを始める。本日の議題はより効率的に敵を屠る方法だ。まずは点呼を取る』


 『…………アイアン』


 『ACIIIIIIIII!!』


 『ポポイ、スポポイ』


 『…何やっているんだ、貴様らは』


 『……キャラ付け』


 『キャラ付けってお前ら…そんなこと考える時間があるならもっと他に、やらなくちゃいけないことがたくさんあるだろ!』


 『そんなこと…だと…?ふざけるな!これは我々にとって死活問題なんだぞ!』


 『いや、死活問題って…少し言い過ぎじゃないか?大体何でキャラ付けすることが死活問題と関係しているんだ?』


 『そりゃリーダー、貴方には分からないでしょうね。貴方にあって我々にはないもの…それはアイデンティティ、ですよ…あ、ポイ』


 『え…何?そのとってつけたような適当な語尾。アイデンティティが欲しいなら他にもあったんじゃない?てか、なんでそんなもの急に欲しがるんだよ』


 『……俺達、アイアン・スライム、アシッド・スライム、ポイズン・スライムの3種類はリーダーのような特殊な進化をした眷属と違って、経験値を得れば普通に進化する、いわゆるどこにでもいるありふれたスライムの上位種だ。戦闘能力がただのスライムよりも高いという以外にこれといった特徴が無い。『ボス』が今後、力をつけていけば自然と数が多くなってしまうだろう。つまり、ただでさえ役職が無く存在感の薄い我々はより影が薄くなってしまう…』


 『そう!そのためのキャラ付けなのだ!特殊な進化をしながら、リーダーという役職まで与えられた貴様に!俺たちの苦しみが分かるのか!?』


 『…え?。てか、目立つ必要なんかある?俺もお前たちも、もともとは『ホーネスト』なんだぜ?最終的に復讐を成し遂げるという目的で俺たちの意思は統一されているはずじゃん?アイデンティティを出すことが復讐することに関係しているとは思えないんだけど』


 『それを言えるのは貴方が『持っている』存在だからポイ。結果は確かに優先されますが、そのための過程がどうなっても構わないというわけではないポイ。そもそも『持っている』貴方に『持たざる』我々を批判する権利なんて初めから無いポイね』


 『だから、せめてその『ポイ』は止めないか?色々と台無しな気がする』


 『う、うるさい!そんなこと自分が一番わかっているポイ!どうしても自分のアイデンティティが見つからないから無理して作ったんだポイ!』


 『……あ、ごめん聞いてなかった。それよりもお前ら仕事だ。北西2キロの位置に銅級冒険者のパーティーと思われる一団の反応があった。周囲に他の冒険者の反応は無し。直ちに現場に急行するぞ!』


 『ちょ、待てよ。何スルーしてくれてんのさ…ポイ』


 『スマン後にしてくれ。冒険者達が移動する前に近くまで行かないと、逃げられるかもしれん。せっかく見つけた獲物だ、何とかものにしたい』


 ミーティング?を切り上げ行動を開始する。


 不満を口にする者もいるが、まぁ彼もいざ戦闘になれば気持ちを切り替えてくれるだろう。俺は冒険者達の行動を予想し、入念に作戦を練る。


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