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この依頼を受けた時、楽な任務になるだろうと思っていた。


貴族からの依頼ということで支援物資に心配はなく、自分以外の多くの銀級冒険者はもちろん金級冒険者もこの依頼を受けているという話を聞いていたからだ。


実際、町を出発するときに見た冒険者の数が100人は超えており、オーガ一体に対して過剰なのではないかと思ったほどだ。貴族という生き物はメンツをつぶされることをことさらに嫌がる傾向がある。そのためこれだけの数の冒険者が動員されたのだろうと思った。


自分の実力は同じ銀級冒険者の中では頭一つ抜け出ているという自負があり、新人のころからの目標の一つであった、金級冒険者まであとわずかというところまで来ているという自信もあった。


今回のオーガ討伐という依頼の達成が、その目標に近づくための大きな一歩になると思っていた。


それがどうだ。今の自分は情けないことこの上ないではないか。


自分の覚悟の無さがこの最悪といってもいい状況を生み出してしまったのだ。


もし、あの時俺があのオーガ・リーダーの足止めを完璧にこなしていれば、これほどの被害が出ることが無かったのではないのかと。


 あの時は自分がオーガ・リーダーの近くにいるにもかかわらず、魔法を放つように言ったジークを心の底から軽蔑した。自分の身を守るために俺を犠牲にしたんだ、と。


 だがそれは違った。彼は俺たちを逃がすために自分から進んで殿を務めたのだ。その言葉を聞いたとき、本当に自分の身を守ることしか考えていなかったのは俺の方だったことに気が付かされた。


 「お前のせいじゃない」そう言ってもらって少し気が楽になったのは事実だが、それでも自分で自分を許せる気には到底なれなかった。


 だからせめて、奴の情報だけは俺の命に代えてでもギルドまで持ち帰ろう。いや、持ち帰らなければならない。そして一刻も早くギルドから応援を出してもらう。そうでもしなければ俺は俺のことを一生許すことが出来そうにない。


 はやる気持ちをバネにして必死に足を動かす。舗装された来た道を戻れば、楽に早く移動することが出来るだろうが、あのオーガ・リーダーがそのことを予想できないとは到底思えない。待ち伏せされている可能性が高いと思っている。


 その為来た道は通らず、まったく舗装のされていない草木が生えている険しい場所、それこそ道とは言えないような所を通りながら町に向かっている。


 当然そんな道を通れば普段以上に疲労し、時間がかかってしまう。それでもオーガ・リーダーに遭遇する確率を少しでも下げるためには仕方のないことだ。オーガ・リーダーに見つかれば逃げることは絶対に不可能であるからだ。


 本日3本目となるポーションを飲む。ポーションにはケガを治療する効果の他に、体力を回復する効果も含まれている。


 長時間走り続けて、感覚のなくなりつつあった足に力が戻ってきた。体力を回復する目的のためだけにポーションを使用する。こんな贅沢が許されるのは、最低でもミスリルクラスの冒険者だ。俺も随分と偉くなったものだと、心の中で思えるほど体力が戻ってきた。


 しかしその考えをすぐにかなぐり捨てる。今は無駄なことを考える時ではない。そんなことを僅かにでも考える余裕があるのなら、一歩でも先に進まなければならない。そう思ったからだ。




 どれほどの距離を走っただろうか。方角的には間違いなく町の方に向かって移動している。しかし追跡を困難にするため、ジグザグに移動してきたことと、疲労による思考力の低下のためか頭が上手く働かない。そのため正確な自分の居場所が分からなくなりつつある。


 ここらで一度、休息をとった方がよいのではないか。しかし歩みを止めればあのオーガ・リーダーに追いつかれてしまう、そういった恐怖が俺を襲ってくる。何か休むための口実が欲しい、そう思っていたときだった。


 そこでふと正面を見ると、はるか先ではあるが、人間の姿が目に入った。助かった。町までもすぐだ。そう確信した。


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