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 死んだのは騎士団の連中…ではなく、俺に冤罪を着せる為嘘の証言をした商人一人だ。齢60をとうに超えており、恐らくは最初に死ぬだろうと、そう当たりを付けていたがその予想が見事に的中したというわけだ。


 一応最低限の措置として、皮鎧を着させその上から一番頑丈そうな鎧も装備させておいたんだがな…逆にそれが負荷になってしまい、体力が低下してしまったためこんなにも早く死んでしまったのだろう。おお商人よ、こんなにあっさり死んでしまうとは情けない。


 個人的にはもう少し苦しんだ後に死んでもらいたかったわけだが…まぁ、何時間もの間あんな鎧を身にまとっていれば、それなりに苦痛を与えることも出来ただろうと納得することにする。それに復讐の対象はまだまだいる。お楽しみはこれからも続くのだ。


 しかしその前にやっておかなければならないことがある。この商人を殺した人間に褒美を与えることだ。俺は生真面目で正直者だからな、約束はちゃんと守るのだ。投石をしている民衆と拘束している騎士団の連中の間に『アース・ウォール』を展開し、民衆たちによる投石をいったん止めさせる。


 「おめでとう!そこの茶色い短髪で緑色の服を着ている君!君の投石によって見事に殺すことが出来た!そして何より今、俺はとっても機嫌がいい!慈悲を与えるのは君だけではなく、10人までなら命を助けることの出来る権利を君に与えよう!家族や恋人、友人を助けるのも構わない!大金持ちを助けて、謝礼金をふんだくるのも君の好きにすると良い!これより少し時間を与えよう!じっくりと考えて答えを出すことだな!」


 その緑色の服を着た青年はひとしきり喜びを嚙みしめていた。が、彼の周りに人が殺到する。理由は自分を助けてくれ、そう懸命に伝えているのだろう。彼が周りの民衆に押され、圧死しそうだったので、流石にそれは可哀想だったので助けてやることにした。俺が助けるといった奴が、ただの民衆によって圧死するなんてのは面白くないしな。


 彼はしばらくの間考えたあと、家族と恋人を助けるという無難な選択をした。わずかにだが、俺が本当に助ける意思があるのか疑念を抱くのではないか?とも思ったが、民衆に詰め寄られているときに彼を助けたことで、俺が本当に慈悲を施すつもりであると認識したのだろう。俺に恐怖の感情を向けることはあっても、疑いの目を向けることは無かった。


 「見事最初の達成者が現れた!残りは77名!みんな、最後まであきらめずに頑張ってくれ!」


 そう言って展開していた『アース・ウォール』を解除し、再びゲームの開始を宣言した。最初の達成者が現れたためか、先程よりも熱気が上昇している気がする。俺が慈悲を施すという意思が本気であると伝わったからかもしれないが。


 ちなみに緑色の服を着た青年とその一味は、とりあえずゲームが終わるまで王城の中で待機してもらうことにした。ギャバンとその家族を捕らえている周辺区画には近づかないようにと釘を刺し、それ以外は自由にさせている。


 何をしているのかな…そんなことを考えながら眺めていると、身内でひとしきり喜びを分かち合った後、周りにある金目の物をカバンに詰め始めていた。まぁ、自国の王都がこのありさまだ。この国で再び生活していくのは不可能だ。外国に逃げ、新しい地で生活を始めるにしても金銭は必要となるからな。火事場泥棒と思うまい、むしろたくましいとさえ思う。


 国王が逃げる時に持っていた、城の宝物庫から回収していた金銭の1部をゲームのクリア者に渡すのもいいかもしれない。より一層やる気になってくれるかもしれないしな。そんな事を考えていると、処刑風景を見て呆然としていたギャバンが気を持ち直したようだ。


 「私も……騎士団と同じ運命を辿るのか?」


 「いえ、貴方には別の結末を用意しています。彼らはあくまでも上の命令に従っただけの小物ですからね。主犯である貴方に、より多くの苦痛を与えるのは当然じゃないですか?そういう意味では、彼らもまたあなたの被害者と言えますね!」


 そう言ってギャバンの肩をポンポンと軽く叩くと同時に、こいつの耳に俺のスライム細胞を忍び込ませて『支配』する。まだ精神と体の『支配』権は奪わない。


 「おい!ギャバンの家族を連れてこい!」


 事前に『支配』しておいた人間にそう命令を下す。ギャバンの動悸が一気に速まったことを感じ取る。思わず笑みをこぼしてしまいそうになるが、必死に堪えた。


 「な…!ま、待ってくれ!君に危害を加えたのは私の罪だ、家族には関係がない!」


 「貴方は俺からすべてを奪ったんですよ?だったら貴方もすべてを奪われなければ、フェアじゃないでしょ?なぁに、俺は慈悲深いですからね、最期のチャンスは上げますよ」


 とは言ったが、そのチャンスをものにできるわけがないという自信もある。ま、ギャバンがどのような反応を見せてくるのか楽しみではあるがな。

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