表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
263/271

263

 「よく集まってくれたライアル王国の民たちよ!事前に伝えていた通り、ここにいる連中には慈悲を与える用意がある!しかし全員ではない!助かりたければ、今から話す内容をしっかりと聞いておくことだな!」


 この場所に集まった民衆がざわめいている。当然といえば当然だろう。なぜなら観覧席から捕らえた国王やらその家族、高官などをロープで拘束して吊り下げているからな。目に見える形で、この国が終焉を迎えたことを否が応でも理解せざるを得ないのだ。


 王城の観覧席からの見た中庭には、3万人ほどの民衆が集まっていた。王都の人口は100万人を超えており、俺が殺した冒険者やら兵士らは精々5万人ほど。つまり俺の話を無視した愚かな連中が、王都の中には未だに90万人ほど残っているわけだ。


 助けが来るまで息を殺して家に立てこもっていよう、そんな甘い考えをしているのだろうか。しかしそれを許すほど優しい俺ではない。慈悲を施すチャンスを与えたのだ、それを無視するような輩を生かしておく理由はない。


 「その前に一つやっておかなければならないことがある!それは俺の勧告を無視し、この場に集まらなかった愚民共の抹殺だ!やれ!我が敬虔なる眷属達よ!」


 敬虔とは何ぞや?自分で言った言葉ではあるが、自分にツッコミを入れる。まぁ、こういうのは雰囲気が大事だ。王城にある中庭には周りを取り囲むように高い城壁が張り巡らされているが、その城壁より遥かに高い火柱が王都中から何本も燃え上がる。


 住民たちから悲鳴のような泣き叫ぶような苦痛を漏らすような何とも言えない声が次々と上がる。今までわずかに残っていたであろう俺に対する敵対心も、これで恐怖へと塗り替えることが出来たはずだ。


 ちなみにこれは『魔法陣』による大規模魔法だ。アーロン様に聞きに行ったところ普通に教えてくれた。『転移』の魔法と同じくドヴェル共和国を助けた報酬らしい。他にもいろいろと教わったが今回は必要なさそうだった。人目に付かないよう深夜にこそこそと王都中に準備し、それをたった今起動したわけだ。


 火柱から発せられる、熱く熱せられた空気が遠く離れたここにまで届いている。俺の言葉を無視して王城に来ていない、未だ都市の内部に留まっていた住民がどうなったかは語るまでもないだろう。


 「さて、余興は終いだ!これより本題に入る!これよりお前たちにはとあるゲームをしてもらう!そのゲームをクリアした者にのみ、この王都から生きて出る権利を与えよう!」


 自分で言うのもアレだが、かなりの暴論である。しかしそれに異を唱える者はいない。先ほどの光景を見れば当然と言えば当然か。


 「ここより先にある、兵士たちが弓矢の鍛錬をする訓練場に、俺が個人的に恨みのある人間を矢の的代わりに拘束している!ルールは簡単!その場所に置いている石を投げ、その拘束した人間を殺せ!お前たちが奴らをかわいそうだとか思う必要はない!なぜなら俺がこの国を襲撃したのは、奴らに対する深い憎しみがあったからだ!つまり間接的ではあるが、今の王国の状況を生み出した原因は奴らにあると言えるのだからな!」


 言うや否や、訓練場になだれこむ民衆たち。一応誰が殺したのかしっかりと確認できるようにするため、列に並ぶように伝えておきたかったが…まぁ、先に現場にいる俺の『眷属』が注意してくれるだろう。


 ちなみに件の訓練場には、かなりの数の『眷属』が集まっている。俺を殺した連中がもがき苦しむ様をじっくりとその目で観察したいのだ。民衆の誰が連中を殺したのかしっかりと見届けてくれるだろう。


 ちなみに王都の外の警備は『分体』にさせている。王都に近づこうとする商人やら冒険者を見つけ次第始末していっているが、今のところ近隣の都市では大きな騒ぎにはなっていない。それも時間の問題であろうが、大きな騒ぎになっても構わないと思う自分もいる。


 なぜならこの国のすべてを灰燼に帰す予定であるからだ。どれだけの準備をしていようが、それを食い破るだけの自信もあるしそれなりの準備も進めて来た。


 むしろ俺を討伐するため集めてきた戦力もろとも食い破る事で、この国の連中をより絶望の淵に追いやることが出来ると言うものだ。そう思うとむしろ、一生懸命準備してくれ、そうとさえ思えてくる。


 そんな事を考えていると「ゴツッ!」という、何か固いもの同士がぶつかるような音が訓練所からいくつも聞こえ始めてきた。いよいよ騎士団たちの処刑が始まったのだ。


 冒険者よりは弱いとはいえ、それなりの数の魔物を倒し位階を上げている騎士団だ。当然身体能力は平民よりもはるかに高い。民衆が投げる石で簡単に死ぬはずがないが、それこそが俺の狙いでもある。


 騎士団の連中が死ぬまでにいったいどれだけの時間が流れるだろうか。1日か2日か…もしかしたらもっとかかるかもしれない。その間俺と俺の『眷属』達を一体どれだけ楽しませてくれるだろう。奴らの死に様を想像するだけで、言葉では言い表せないほどの喜びが俺の心を満たしてくれる。


 ちなみに騎士団の連中は裸にひん剥いているが、俺を嵌めた商人には王城で見つけた高品質な鎧を纏わせている。こいつらは弱いからな、投石でも簡単に死にそうだったので最低限の措置というやつだ。


 ただ、外殻がいくら頑丈でも中身が柔らかいから案外簡単に死ぬんじゃないかと思っている。つまり民衆にとっては、見た目が最も頑丈そうな奴が一番殺しやすいと言うわけだ。そのことにいつ気が付くか…それも楽しみの一つだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ