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 王城の中は人気が無くがらんとしていた。ほとんどの兵士は俺の迎撃に出ていたためその姿が見えないのは察していたが、使用人やら文官までの姿が見えないのは少しばかり疑問に思った。理由を知るために物置に隠れ潜んでいた豪華な服を着ている人間を『同化』する。すると、どうやら非戦闘員までもが兵士と一緒に俺の迎撃に出ていたとのことだ。


 少しでも多くの戦力を確保したかったのだろう。しかし文官や使用人に武器を持たせたからと言って戦力にはなりえない、むしろ足手まといになるんじゃないのか…俺はそう思ったが、この国の国王はそうは思わなかったようだ。


 自分の生き残る可能性を少しでも上げる。その為に取った方法だったのだろうが、結局は意味をなさなかった。そうして、非戦闘員すらも俺の迎撃に向かわせてまで稼いだ時間で自分たちは何をしていたのかと言うと、必死に逃げ支度をしていた。


 身一つで逃げ出せば少しは可愛げがあったが、王が最初にとった行動は宝物庫に入り金目の物の回収であった。つまり国王にとって臣下は、自分の金銭よりも価値が低いと判断したという事だ。


 俺が知りえた情報をもとに国王の元に向かうと、未だに金銭の回収に勤しんでいた。どうやら、こんなにも早くすべての兵士が返り討ちにあうことはないと踏んでいたようだ。すでに戦線が崩壊し、兵士たちが逃げ出したと知らせる者はいなかったのだろうか?いや、いないから逃げ支度の途中であったわけか。


 その後、国王とその家族、王城にいた高官やら高位貴族をすべからく拘束する。こいつら自体に深い恨みがあるというわけでもないが、俺を殺した国のトップとその家族である。全くの無関係というわけでもない、つまり俺の復讐の対象とすれば十分すぎるほどの関係者でもあると言えるわけだ。


 国王を捕らえたことで名実ともに王都は陥落したと言っても差支えは無いだろう。わずかながらの満足感と、あまりにもあっけなく終わったことに対する物足りなさを感じながら、俺は次なる行動の準備に入った。




 「ライアル王国の王都はこの俺の手によって陥落した!生き残った住民は明日の正午までに王城の観覧席の見える中庭に集合しろ!集合した住民に慈悲を施すチャンスを与えるが、そうでないものは確実なる死が待っている!繰り返す!ライアル王国の王都は…」


 俺の復讐計画を完璧に成し遂げるためには国民の協力が必要だ。そのため現在は人間に擬態させた『分体』、そして『支配』した人間を使って王都中に触れ回っている。王都は広いからな、今日の正午ではさすがに厳しいだろうと判断し集合時刻を明日に繰り上げてやった。


 そのため思いがけずに暇な時間が出来てしまった。


 騎士団の連中や俺を嵌めた商人たちの処刑の準備は『分体』の手によってもう間もなく終わる。差しあたってすることが無いとなると…暇つぶしにライアル王国の都市を滅ぼして、時間を潰すことにするか。


 すでに情報収集の為、主要都市に俺の『眷属』と『分体』を派遣している。すぐにでも目的地に『転移』することが出来るというわけだ。思い立ったが吉日。いや、『日』と言うよりは『瞬間』と言った方が近しい表現ではあるが…細かいことはどうでもいいか。とりあえず即座に行動を開始する。


 そうして『転移』した俺の目の前にあったのは、この国でもトップクラスの大きさを誇るボールトン公爵家の領都だ。王都ほどではないが都市面積も広く人口もかなりの数がいる。


 『フライ』の魔法で上空に飛び、領都全体を俯瞰できる位置に移動する。


 気持ちの良い朝日が昇り始め今日という一日が始まったばかりではあるが、この都市に住む住民の一生はここで終わる。『マジック・アロー』を発動し、上空から『索敵』能力で察知した生体反応を片っ端から狙い撃ちにした。


 この『マジック・アロー』という魔法。威力が低いという弱点もあるが、訓練により『麒麟』の鱗を吸収することで手に入れた『電撃』をそれに纏わせることで、貫通力を大きく強化することが出来た。これでどんな頑丈な建物の中にいようとも、問題なく射殺することが出来る。


 つまり老いも若きも、平民も貴族もこの魔法の間では皆等しく『死』を迎えるということだ。上位の冒険者なら何発かは耐えられるかもしれないが、魔法を発動している俺が上空にいる以上俺を倒すことは不可能、つまり根本的な解決は無理である。いずれは体力が尽き死ぬ運命にある。


 人口が多く少しばかり時間はかかってしまったが、正午前にはすべての人間を殺すことが出来た。王都陥落にかけていた時間よりはるかに短い時間、そして少ない戦力であったにも関わらずこの短時間で完了したのは、やはりギャバンのような楽に殺したくない人間がこの都市にはいなかったためだ。


 自身の強さを再認識と少しばかりの鬱憤を晴らした後、暇つぶしの為次なる目的地に向けて『転移』を開始した。

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