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 金級冒険者が中心となり、銀級冒険者がそれをサポートする形で戦端が開かれた。実力の劣る銅級の冒険者は金級と銀級冒険者達のサポートに徹しており、余程のことでもなければ前衛に出てくることはなかった。


 急造のパーティーであるためいずれボロが出るかと思っていたが、そういった穴を素早く埋めて反撃に転じることが上手い銀級冒険者がいたため、敵側の被害は驚くほど小さいもので収まってしまう。


 時間ばかりが無情にも過ぎていき、このままではマジックキャスターの咏唱が終わってしまう。無理に攻めに転じればジルの身もタダでは済まないだろうし、このまま敵に魔法を放つ時間を与えてしまうのもよろしくない。


 いや、あえて魔法を放たせるのも悪くないかもしれない。それを防がれたとき敵側の士気に少なからず影響を与えるはずだ。死中に活を求めるのだ。


 「皆さん、魔法の射線から離れてください!」


 マジックキャスターが周囲に警戒するよう呼びかける。魔法の演唱が終了したのだろう、ジャンの頭上に1メートルを超える大きな火の玉が浮かんでいた。


 敵側にも魔法を打つタイミングが知られてしまうため、本来ならこういった警告はしないはずであろう。しかしこの場所には息の合っているパーティーメンバーだけでなく、今回の依頼で初めて顔を合わせたような冒険者もいる。誤爆しないために、そして魔法の余波でダメージを負わないようにするために、十分な距離を稼ぐためにやむを得ずこういった合図を送ることにしたのだろう。


 それを合図に一人二人と少しずつジルから距離を取り始めた。一度に全員が後退しないのは、撤退する冒険者に合わせてオーガが後方にまで侵入してしまうのを防ぐためであろう。そしてそれに反比例するように矢や投石などの遠距離攻撃がいっきに増え始めた。


 本来ならこういった攻撃も仲間に当たらないように細心の注意しなければならないはずではあるが、人間よりも一回り以上大きな体格を持つオーガ・リーダーの顔を狙えば余程の事でもなければ、仲間に流れ弾が当たることはないと判断してか、大量に投じてきた。


 いよいよジルの周りにいる冒険者が最後の一人になった。先ほどから目についていた、冒険者達が空けてしまった穴をうまく塞ぐことのできた腕利きの銀級冒険者だ。


 「ベレス!もういい、後退しろ!そのままだとお前にも魔法が当たっちまうぞ!功績を上げたいのは分かるが、今は自重しろ!」


 「違う!こいつ、さっきから俺が後退しようとすると退路を防ぐように行動してきて……明らかに俺らの意図を知って、それをを潰そうとしてきやがる!」


 「いいから早く後退してください!このままでは……魔法が暴発してしまいます!」


 「……いや、そのまま打ってくれ。ジャンには悪いがこちらにも余裕はないんだ。安心しろとは言えないが、ポーションは用意してあるからすぐに治療はしてやれる」


 「おい!ふざけんなよ、あんた!いくら金級冒険者パーティーのリーダーだからといって、そんな横暴許されるわけないだろ!」


 「すまない。だが、今そのオーガ・リーダーに多少なりとも傷を負わせることが出来なければ、ここにいる冒険者全員の命が危ないんだ。やれ、ジャン!責任はすべて俺がとる!」


 「すみません、ベレスさん。何とかうまくよけてください『ファイヤー・ボール』!」


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