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 「お、お世話になりました。こ、今後とも、エルメシア様の、お、教えを胸に、け、研鑽を積みたいと、お、思います…」


 「いえ、こちらも久方ぶりに本気で戦うことが出来て、非常に楽しい日々でした。至らないところもありますが、貴方ならいずれ私を超えることが出来るやもしれません」


 「お、お、恐れ多い、です…」


 彼女との地獄の日々は、今度は1カ月間にも及んだ。それだけの長期間の鍛錬に耐えることが出来たのだ。俺の能力は間違いなく上昇している。しかしエルメシア様ほどの超越者を相手にするには少々実力が足りないようだった。


 しかし彼女曰くそれは俺の身体能力が大きく劣っているからとかではなく、俺自身が向上した身体能力を十全に活かすことが出来ていないためだそうだ。つまりこのまま研鑽を積んでいけば彼女にも十分勝つ可能性が…今のところは、その兆しぐらいしかみえてはいないがあるそうだ。


 それでも彼女がそう言ったという事は、間違いなくそれが事実であるという事だ。自分より上の実力者に褒められて嫌な気分はしない。この調子で自身でも研鑽を積みより高みを目指してみようという気になっていた。


 「さて、私もそろそろ本国に帰らなければなりません」


 彼女が元オスマニア帝国に残っていた理由は俺との鍛錬の為でもあるが、主たる目的は元オスマニア帝国に隣接する人間の国々と『教会』の動きに即座に対応するためであった。


 そして彼女との鍛錬をしたこの1カ月。周辺国家に大きな動きがみられないためようやく本国に帰ることになったのだ。


 当面の間は、人間達は元オスマニア帝国にすら寄り付かないだろう。昔よりもはるかに人間とヴァンパイアにある溝が大きくなりはしたが、このくらいの関係が両種族にとってちょうどよい距離間なのかもしれない。


 仲良くなれそうにない国とは、いくら隣接しているとはいえ無理に仲良くする必要はない。距離をとることで上手くいくならその方がずっと良いはずだ。もしかしたら、数百年後には再び人間の国との間に何かしらの国交が樹立するかもしれないが、今回起きた事件をよく知るヴァンパイアも存命しているはずだ。今回の失敗を踏まえて、よりよい関係の在り方を模索してもらいたいものだと思った。


 エルメシア様は俺に別れの言葉を告げて本国へと帰国していった。直前まで俺との戦闘訓練で多少は疲労していたはずだが、その素振りすら見せず一瞬にしてその後姿が掻き消えた。『転移』の魔法ではない。余りにも速い動きであったため、姿が掻き消えたように見えただけだ。相変わらず底知れない人だと思った。


 彼女の言が真なら俺もこんな動きが出来るはずだが…やはり鍛錬は大事なのだと理解させられる。


 休息も十分にとったし俺もそろそろ目的地を目指して移動を開始しよう。目的地はもちろん俺の故国であるライアル王国だ。


 距離は随分と離れているが、ヴァンパイアから入手した『飛行』の魔法の鍛錬を道中に行えばそれほど距離を感じることもないだろう。


 今の俺はアダマンタイト級冒険者を遥かに超える実力もあるし、『分体』『眷属』といった様々な能力もある。碌に策を弄しなくても復讐を成し遂げることは容易であろう。


 ようやくここまで来た。復讐を成し遂げる。その目標がもう目と鼻の先にまで来ていることに、歓喜の気持ちを抑えきることが出来なかった。

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