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俺達が王都を殲滅して1カ月が経過した。流石にこれほどの時間が経過していれば、いくら眷属を使って情報統制をしているとはいえ、各地にヴァンパイアがオスマニア帝国の各都市を蹂躙しているという情報は伝わってしまう。


 俺達が襲撃をかけるとすでに迎撃態勢を整えており、例え人間がヴァンパイアよりも脆弱な生き物であっても簡単に勝つことが出来なくなってしまっていた。そのため最近では殲滅計画に遅れが見え始めていたのだ。


 しかしここにきて待ちに待った情報が入る。エルメシア様がヴァンパイアの国から援軍を引き連れて来てくれたのだ。その数およそ300人。援軍とすれば少々心もとない数ではあるが、1人1人が数の不利を覆すほどの質の高さを有している。


 おまけに捕らわれていたヴァンパイアの情報を事前に知らされていたのだろう、部隊全体の士気が異様に高い。『分体』を使って常時情報を共有することが出来るが、ひとまず各地に散っているヴァンパイア達も含め一度王都に全員が集まることになった。


 「戻りが遅くなって申し訳ありません。ゼロからの報告で知っていますが皆、無事で何よりです」


 「そんな…遅くなったなどとは…恐れ多いです」


 「今回ばかりはエルミナに同意です。それに本国からこれほどの数の援軍を率いてくださるとは…本国もそれだけ本気であるということですな」


 「ええ、人間に捕らわれた同胞等に対する贖罪の気持ちもあるのでしょう。もっと多くの援軍の派遣も検討されましたが、本国の守りを手薄になるのも良くないとゼロからの進言もありましたので。本国の準備が整うまでひとまずはこの数を、と」


 オスマニア帝国を囮にしてヴァンパイアの本国に強襲を仕掛ける。流石にそれはないとは思うが『教会』なら本気でやりかねないからな。それに今の戦力でも時間をかけさえすれば十分にこの国を蹂躙できる。加えて300人もの援軍があればその時間をかなり短縮できるはずだ。


 それに何よりもエルメシア様が戻ってきたのだ。これで人間に敗北する未来など俺には想像することすらできない。いや、オリハルコン級の冒険者が来れば戦況がどうなるか分からないが…国境付近の都市を襲撃する部隊には他所よりも多くの人員を配備しておけば、こちら側の援軍が駆け付けるまでの時間ぐらいは稼げるはずだ。その間にエルメシア様が現地に向かえば被害は出ないだろう。


 「さて、それではゼロ。私が新しく連れて来た同胞たちにも、貴方の計画の進捗状況を教えてください」


 別に『俺』の計画ではないんだが。襲撃地点の事前調査など細々とした作業は生まれながらの強者であるヴァンパイアには不得手の作業であったらしく、俺が『分体』を使って各都市の情報を集め、そこから得た情報をもとに襲撃計画を組み立てていた。


 そのためか、いつの間にか俺が主導して計画を進行しているかのようになっていたのだ。その分だけ経験値を得る機会が多くなったため損をしているというわけではないんだが…まぁ、いいか。


 この会議室にはエルメシア様が連れて来たヴァンパイア達の、その指揮官に当たる者達がすべて集まってきている。エルメシア様から話を聞いてある程度は俺のことを信用しているはずだが、ここで更に存在感を示すことでより彼らから信頼を勝ち取っておくことにしよう。


 「分かりました。現在王都を中心に、オスマニア帝国にある都市の約10%の都市や村を襲撃、破壊してきました。私たちの奇襲が成功したこと、そして破壊出来たすべての都市が国王の直轄領であり、直属の支配者がすでに不在であるという状況が、これ程の損害を短期間で与えることが出来た最大の要因だと思われます」


 「つまり今後の戦いではそう簡単に襲撃が成功しない、そう見ているということでしょうか?」


 「『見ている』と言うよりは『見ていた』と言うほうが正しい表現です。エルメシア様が早々に戻ってきて下さったこと、そして多くの援軍を引き連れて下さったこと。これほどの戦力があれば何も問題はありません」


 さりげなく、援軍に来てくれた方々を持ち上げておく。煽ててヨイショしておこう。


 「んで、今後はどういった方法でオスマニア帝国殲滅作戦を進行していくつもりなんだ?」


 「基本的にはここ王都を中心に、徐々に徐々に国境線を目指しながら都市や街などを蹂躙していきます。強力な兵士や冒険者の情報は私が集めていますので、そういった場所を襲撃するときはこちらでメンバーの編成をさせてもらいます」


 最近では迎撃準備を整えられていたこともあり殲滅作戦が上手くいかず少し焦りを感じ始めていたが、非常に良いタイミングで援軍がやってきてくれたものだ。これも日頃の行いの良さかもしれないな、多分。

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