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 エルメシア様が帰国してから1週間が経過した。その間も俺達は精力的に活動を続け3つの大きな都市と20以上の町や村などを襲撃し、これを被害なく壊滅させていった。


 主な街道に眷属や分体を配備し情報統制に成功しているためか、依然として他の都市から俺たちに対する討伐軍が派遣されてくる気配はない。今のうちに覆せないほどの大きな被害を与えておく。それが今後の俺達の計画に大きな影響を及ぼすかもしれないのだから、出来ることを出来るうちにしておくのだ。


 そして今日、久方ぶりに俺を含むヴァンパイア全員が王都に集まった。無論、理由もなく集まったのではない。明日に控える、この国でも5番目に大きな都市『ブルサレム』の襲撃計画の打ち合わせをするためだ。


 「やっぱ結界がねぇと、ミスリル級冒険者でも俺達の相手にならねぇな。あそこまで歯ごたえがねぇと、ダメだとは分かっているがついつい気が緩んで、油断しちまいそうになるぜ」


 「同感だな。ここらで一つ、俺達でも苦戦するような強者と戦い気を引き締めたいところだが…なぁ、新入り。俺達の次の襲撃地点に『アダマンタイト級冒険者』ってのは何人在籍してんのか?」


 「1人だけですね。残念ながら皆さんが気を引き締めることのできるような戦いになるのは少々難しいかと」


 ここにいるエルメシア様の部下は基本的スペックがめちゃくちゃ高いヴァンパイアの、更に戦闘の訓練を積んだ連中だ。そんな彼女らが苦戦する相手などそうはいない。


 彼女らと友情を育み、彼女らの事を良く知ることが出来た俺だから言えるが、こんな化物みたいな連中に喧嘩を売ろうとした『教会』と『オスマニア帝国』の連中は一体何を考えていたのかと聞いてみたくなった。当事者はすでに墓の中にいて不可能であるがな。


 果たして本当に戦って勝てると思っていたのだろうか。…分からないな。『教会』ってのは相手が亜人やら魔物だと戦力差を考えずに殲滅しようとしてくる。それが教義だから仕方ないのだろうが…そうか、教義を忠実に守るものが『教会』において上に出世していくというわけか。そうやって教義を忠実に守る狂信者だけが『教会』で出世をしていって実権を握り、『教会』がより先鋭化していく。


 「結界も無けりゃ、アダマンタイトも1人しかいねぇ。わざわざ俺達が集まって、こうして話し合いをする必要があったのか?3・4人も派遣すりゃ1日もありゃ余裕で蹂躙することが出来ただろ」


 「『アダマンタイト級のいる都市を襲撃するときは皆で協力して襲撃すること』それがエルメシア様との約束ですからね。ないとは思いますが、これ以上同胞の被害が出る可能性をわずかにでも減らすこと望んでおられましたので」


 確かに俺も少しばかり用心のし過ぎではないかと思う。…いや、それは油断だ。俺だって、そうして痛い目を見たことがあったのだ。大人しく上位者である、彼女の忠告を聞き入れることにしよう。


 「そ、そんな事言われなくても分かっている!ただ…戦力が過剰で少しばかり退屈になりそうだと思っただけだ」


 もう少し大きな都市なら強者もそれなりにいただろうし、もう少し小さな都市であればこうして集まることなく各自の判断で襲撃したはずだ。つまりギリギリ、全員で集まって襲撃するほどの大きさの都市であるわけだ。


 「でしたら…皆で勝負しませんか?誰が唯一のアダマンタイト級冒険者を殺すのか」


 「悪くは無いが…そんなの、一番最初に見つけた連中がそのまま殺すだろうから、すぐに決着がつくんじゃないのか?その後のモチベーションがダダ下がりになりそうだ」


 「いえ、逆です。殺した人が勝ちではなく、殺した人が負けというルールではどうでしょうか?」


 「なるほど…つまりそのアダマンタイトに遭遇したら、尻尾を巻くってさっさと逃げ出さなければならんと言う縛りプレーか。今までにない戦い方だな。ちなみに死なない程度に半殺しにしても大丈夫か?」


 「勿論です。半殺しにされたアダマンタイト級冒険者は、それに気がついた他の冒険者やら兵士らが高価なポーションを使用して優先的に回復してくれるはずです。つまりアダマンタイト級冒険者を殺さない限り、ずっとゲームが続くということです」


 都市で一番強い存在が、なすすべもなく都市がヴァンパイアによって蹂躙されている光景を見るのは想像を絶するほどの屈辱であろう。


 最後までアダマンタイト級冒険者が生き残った場合は皆でリンチするというのも悪くない。そしてその遺体を…いや、あえて殺さずにオスマニア帝国を蹂躙した後にでも隣国に引き渡し、ヴァンパイアの恐ろしさを世に広めてもらうという役割を与えるのも悪くはないか。アダマンタイト級の口からその情報が広まれば、恐怖も一入というやつだ。


 思い付きで提案したことだが、意外にも評判がよく皆のモチベーションが上がったことに満足した。少なくとも、油断したまま襲撃することにはならなそうなことに安堵した。

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