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 さっそく攻め落とした王都の生き残った法服貴族を捕まえ、肉ダルマの前まで連れて来た。その肉ダルマの正体を伝え、「こいつが死ねば次はお前だ。こうなりたくなければコレを延命させろ」そう命じたところ首を勢いよく縦に振っていた。


 貴族の様な特権階級という存在は自身が危機的状況でありながら、依然として偉そうな態度をとり続けるという謎の肝の太さがある。しかし今回はそのようなことは無く、交渉が簡単にいった事に人知れず喜んでいた。


 それも、まぁ、国王のこのような状況を見れば意地を張ることも出来ないかと納得もする。今度からそういった連中との交渉事では、似たようなことをして目に見える形で脅す方が楽に話が進むのだと学ぶことが出来た。


 俺達が拠点として使う予定である王城にエルメシア様配下のすべてのヴァンパイアが集結したことを確認し、王都の各地に配置した『分体』に『毒ガス』を生成、散布させ王都の住民を皆殺しにすることにした。


 王都の広さからすればかなりの時間を要することになるが、王都を囲う城門を破壊し王都からの脱出手段を失った民衆に都市の外に出ることは不可能であろう。俺の『毒ガス』の前では逃げ出そうとする者、家の中で災いが過ぎ去ることを期待して隠れ潜んでいる者に関係なく苦痛なき死を与えることが出来る。


 肉ダルマとその世話をする貴族に客室を与え、そこで生活をさせることにした。地下牢に押し込むのが良いという考えもあったが、こんな肉ダルマ、衛生環境の良くない地下牢に置けばすぐに病にかかり死亡してしまうはずだ。そのため、少々業腹ではあったが衛生環境に恵まれたきれいな客間で世話をさせることにしたのだ。


 王都をほぼ壊滅させた俺達は王城にある立派な議会室に集まり、今後の計画を話し合うことにした。


 「私は一度、国元に戻ろうかと思います。今回の顛末についても報告しておかなければなりませんからね」


 この中で最大戦力であるエルメシア様が抜ける。戦力的には少し心もとないと思うが『ドミニオン』を屠った今、この国に俺達とタイマンで勝つことのできる戦闘力を持つ存在などほとんど存在していないはずだ。


 結界を展開する魔道具の動力源にするためにヴァンパイアを生け捕りにする、そんな邪な考えを持たず各方面から超一流の冒険者を集めていればこのような状況にならなかったものを…いや、『教会』がそれを望んだのだ。まさしく自業自得という奴か。


 「次の作戦ですが…本音を言えば、私が本国での報告を終えこの地に戻ってくるまでは無理な行動を起こして欲しくは無いとないと思っていますが…」


 「恐れながらエルメシア様。王都が陥落したことは遅からず各方面に伝わることになるでしょう。そうなればこちらに対する迎撃態勢を整えるはず。ですのからその前に、出来る限りの損害をこの国に与えておかなければと愚考いたします」


 「私もそう思います、エルメシア様。同胞を長年にわたり苦しめたこの国は1分1秒たりともこの地上に存在を許してはいけません。敵がこちらの存在を知り、迎撃態勢を整えるまでに多くの都市を陥落させることが我らの目的を達成させるための近道なのではないでしょうか」


 「…貴方達の進言はもっともと言えるでしょう。エルミナ、貴方に私の代理を命じます。皆と協力し事に当たってください。強敵が現れた時は無理せず、私が戻るまで待機してなさい」


 「はっ!ご命令、承りました!」


 エルミナ…確かゲオルグ君の記憶だと、この集団の中ではエルメシア様に次ぐ実力の意持ち主だ。俺の主観でも対ヴァンパイア用の結界が無ければ『ドミニオン』にすら容易に勝つことが出来るほどの戦闘力がある。仮に結界下であろうとも、そう易々と負けることは無いはずだ。


 「そしてゼロ。貴方には参謀として、エルミナの補助をしてもらいたいのですが」


 部外者の俺に責任ある役職を任せるか。他のヴァンパイア達がどう思うか…少し不安に思ったが、それは杞憂であった。どうやら俺が結界を破壊したことで、俺を認めてくれたということだろう。新入り呼びが変わる気配は無さそうだが。


 「分かりました。微力ではありますが全力を尽くしましょう。では早速ですが、今後の襲撃計画についてですが…」


 別に参謀を任されることが分かっていたわけではないが、周辺の地理を『分体』を使ってすでに調査している。少し離れた場所に位置する都市も、王都にある司書室の書物を読むことで粗方の調べはついている。任された仕事は全力で取り組むのだ。

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