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 国王等の逃げた方向をヴァンパイア達に伝えてはいたが、どうやら間に合わなかったみたいだ。逃げてきた国王を『分体』の手で捕らえ、ヴァンパイア達が来るのをのんびりと待つことにした。


 『本体』である俺が先に到着し、しばらくしてようやく王城に侵攻したヴァンパイア達もやってきた。どうやら広い王城で迷子になっていてみたいであり、目的地を教えてもすぐには来ることが出来なかったらしい。悔しげな表情を見せていた。


 「くっそ~、先を越されていまったぜ。やるじゃねぇか、新入り!」


 背中をバンバンと叩かれるが地味に痛い。ただの人間だったらミンチになるぐらいの威力がありそうだ。彼女に悪意がなさそうなのが余計に質が悪い。まぁ、彼女も俺の強さをしているから遠慮していないのだろうが。


 「流石、エルメシア様が認めただけの事はありますね。それに『分体』という能力も素晴らしいというほかありません。無論、素晴らしい能力があってもそれを使いこなすこと会出来なければ意味はありませんが、貴方の場合ですと…」


 「だー!オメーの話はなげーんだ!もっと端的に伝えろ!」


 「そうは言いますが、素晴らしいことを素晴らしいと伝えるのが何が悪いというのでしょうか?私から言わせれば、貴方の話も短すぎて伝わり難いではありませんか!」


 「ふふっ、ここは少しにぎやかですね。ですが皆が無事で安心しました」


 「「「「エルメシア様!」」」」


 長々と続くかと思われたやり取りが一瞬で静まった。ゲオルグ君の記憶だと、永劫の時を生きるヴァンパイアは寿命という枷がないためか一度争うとなかなか収まらないということもあるのだそうだ。そのため、このタイミングでエルメシア様が来てくださったのは正直ありがたかった。ようやく話を進めることが出来そうだ。まぁ、この2人の場合だと、言い争いというよりもじゃれあっているという感じだが。


 「先に伝えましたが、俺はこの手で国王を殺すことにこだわりがあるわけではありません。お譲りしますので、どうぞ皆さんで話し合って決めてください」


 「いんや、一度決めたことを後から変更するのは気が進まねぇ。俺は辞退する。新入り、お前がやんな」


 「それについては私も同意します」


 「そうだな、我らの事は気にせず勝者の特権を行使するといい」


 特権とは言うが、俺に深い恨みがあるわけでもないからな…いや、ギャバンを殺すときのデモンストレーションだと思うことにしよう。ひっ捕らえた国王を叩き起こし、現状を軽く説明してやった。


 「お前には2つの選択肢がある。1つ目はヴァンパイアの国に行き、お前の先祖がした過ちを誠心誠意謝罪することでヴァンパイア達からの許しを得る事。そして2つ目はお前の先祖がした過ちを、自分の体で体感することだ」


 「な、なんだ貴様!私にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!」


 このような状況でありながらデカい口を叩く事のできる肝の太さは見事だが、この状況で相手を怒らせるのは得策ではないだろう。周囲にいたヴァンパイア達から殺気が放たれ、国王を一瞬で黙らせた。俺もキ〇タマがあれば玉ヒュンしていたと思う。


 「俺のオススメは後者だな。前述したヴァンパイアの国に行けば、例え国が許したとしても遺族らが黙ってはいないはずだ。良くて暗殺。悪ければ監禁された後、遺族たちの心の傷が癒えるまで永遠と拷問される日々を送ることになるだろう。でも後者は別だな。当面の間は死ぬことはない…ハズダ」


 「わ、分かった後者にしよう!何が起きるか分からんが殺されるよりはずっとマシだ!」


 「よし、決まりだな!俺達からしても、わざわざ殺される可能性の高いお前をヴァンパイア国まで連れて行くのは面倒だったしな。そう言う意味じゃ、助かったよ」


 先程まで明確な殺意を向けてきていたヴァンパイア達までもが、笑顔でその選択を受け入れたことに国王自身嫌な予感でもしたのだろう。だが、すでに賽は投げられたのだ。撤回される前に『電撃』の能力を使って即座に気絶させる。


 「国王自身が決めたので、彼らをこの国に捕らえられていたヴァンパイアの方々と同じ境遇になってもらおうと思います。ですが少しばかり作業量が多いので、誰かに手伝ってもらえるとありがたいのですが…」


 「そう言うことなら仕方ないな!ふむ、私が手伝ってやろう!」


 「確かに、ここで時間を消費し過ぎるのも今後の計画に支障をきたす可能性もありますからね。私も微力ながらお手伝いさせてもらいますよ」


 と言った感じで、ありがたいことに続々と協力者が申し出てくれた。エルメシア様は他の襲撃地点に赴いた配下の様子を見に行ってしまったが、俺と一緒に王城に攻め込んだ連中は皆、俺に手を貸してくれることになった。


 皆と協力して大きな仕事を成し遂げるのはいいことだ。ここにいる連中と作戦開始前よりも格段に仲良くなることが出来た気がする。そのきっかけの、犠牲となってくれた国王等には感謝の以外の言葉は見つからないな。


 それにしても、あっさりと後者を選択する辺り国王はヴァンパイアがされた措置についてあまり知らなかったのかもしれない。そこについては少しだけ同情する。少しだけ、だがな。せいぜい、先祖の罪をその身で償うといい。

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