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 捕らわれていたヴァンパイア達をどうするのか尋ねたところ、俺に吸収してくれとのことだった。理由は彼らの家族などにこのような状態を見せることが憚られるとのことだった。


 そう言うことならと喜んで吸収することにしたが、彼らの身に何が起きたのか知りたくなった。記憶を入手するために1人を『同化』したわけだが…どういうわけか記憶を得ることが出来なかったのだ。


 恐らくは『同化』する相手が死ぬ寸前まで確たる自我が無いと、記憶を得ることが出来ないということなのだろう。精神的には何十年も前に死んでいたからかもしれないな。少しばかり残念ではあったが、これも貴重な経験だと思うことにした。


 そんな感じで少しばかりの時間を貰いヴァンパイアの死体を吸収している間に、エルメシア様たちは着々と襲撃計画を構築していった。いや、『計画』と言うより『襲撃場所の確認』と言った方が近い感じだ。人間ごときに策を弄するまでもない、そんな雰囲気だ。


 ちなみに俺は王城襲撃部隊に配置された。


 エルメシア様が1人で王都にいる冒険者全員を足止めし、その間に俺達に攻略してくれとのことだった。しかし、俺から言わせると彼女を足止めすることのできる冒険者はこの王都にはいない。それほど時間を要さずに冒険者が全滅する未来は容易に予想することが出来た。


 とりあえずの準備は終わったとのことで行動を移すことになった。俺に同行する、王城に襲撃するエルメシア様の配下は全部で4人。結構な数がいるものだと思ったが、王城にはそれなりに腕利きの兵士もいるらしいので戦力配分は丁度良いのかもしれない。


 俺はエルメシア様の配下の事は『分体』を通してよく知っているが、彼女らからすれば俺の本体は初対面である。一応、自己紹介をして襲撃計画を練ることにした。


 「やっぱ国王は許せねぇ!俺がこの手でぶっ殺してやる!」


 「はぁ?何を言っているのですか貴方は。この国の国王を殺すのは、この私こそが最も相応しいはずです」


 「分かってねぇなぁ、お前らは。ただ殺すだけじゃこの怒りは収まらねぇ。この国の王族に生まれたことを後悔するだけの苦痛を味わわせねぇとな!」


 「ほぅ…貴様もたまには良いことを言うじゃないか。だが問題はそこじゃぁない。『どう』殺すかよりも『誰』が殺すかが最初の問題になるとは思わないのかね?」


 ダメだ。まとまりがなく、このままじゃ話し合いすら終わりそうにない。他の面々はすでに行動を開始し、この場所には俺達しかいない。止めるのは少々憚られるが仕方ない。


 「あの~皆さん、我々もそろそろ移動した方が良いんじゃないですか?他の方々はもうすでに行動を開始していますよ?誰が殺すかは置いておいて、とりあえず王城までは移動を開始しませんか?」


 「あん?何だ新入り、随分と気合が入っているじゃねぇか。一刻も早く王族の連中をぶっ殺したくってウズウズしてるじゃぁねぇか」


 「確かに、なかなか見どころがありそうですね。確かに彼の進言は最もと言えるでしょう。この国の民には一分一秒たりとも私たちと同じ空気を吸って欲しいとは思えませんからね。計画をすり合わせるのも大事ですが、私たちも移動することにしましょう」


 いつの間にか同族認定されてしまった。それはこの中で1人?だけ種族が違う俺にとって少しだけ嬉しい事ではあったが、彼女らと俺には少なくない温度差がある。まぁ目的が違えることは無いので、とりあえずヨシ!としよう。


 「そういや新入り。オメー、エルメシア様との地獄の特訓で逃げ出さなかったらしいな。最初はナヨナヨした変な奴だと思ったが、なかなか見どころがあるじゃねぇか」


 「エルメシア様が俺の身を案じて特訓を付けてくださったのは、言葉を交わさずとも感じていましたからね。そんな方の気持ちを裏切りたくはなかった、ただそれだけですよ」


 「ほぅ…エイミーの言っていた通りか。ブヨブヨした変な奴だと思っていたが、なかなか気骨があるじゃないか」


 ブヨブヨ…とは、俺のスライム形態時の事を指して言っているのだろう。こうして話してみると、やはりエルメシア様は配下達からかなり尊敬されているのだと感じた。


 そんな尊敬している方が俺を認めている、だから自分たちも俺のことを認めてくれているのだろう。短時間で彼らとの仲が深まったのは、それが原因の一つであるのは間違いなさそうだ。


 

和気藹々とした空気であったが、それも少しずつ変化していく。それはこの場にいる誰もが感じていることだろう。何故か。それは王城が近づいてきているのだ。誰がどのような方法で国王を殺すのか、俺は意外は皆そのことに考えを巡らせているのだ。

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