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『余計なお世話かもしれないが、最後に忠告はさせてくれ。これから向かう拠点には金級冒険者達のパーティーがいるんだが、こいつらだけには注意を払っておいた方がいい』
『以前モ似タヨウナ事ヲ言ッテイタナ。無論油断スル気ハ無イガ、コレマデノ奴ヨリモ強イノカ?』
『強い…と思う。そもそも冒険者のランクっていうのは鉄級から始まって銅級、銀級、金級へと上がっていくんだが、銀級と金級の実力の差は銅級と銀級の間にあるモノよりはるかに大きいんだ。才能のない者が努力でなんとかたどり着けるのが銀級までと言われているからな。つまり金級という称号は冒険者ギルドという大きな組織がそのパーティーの才能と実力を大々的に認めているということでもあるんだ。一応、金級よりも上のランクに【ミスリル級】とか【アダマンタイト級】とかあるんだが、こいつらは基本的にはこんな田舎に拠点を構えていないから警戒する必要はないと思う』
『ソノ、【ミスリル】トカ、【アダマンタイト】トカ言ウヤツハ、俺ヨリ強イノカ?』
『冒険者ギルドの指標としては、オーガ・リーダーは【ミスリル級】の冒険者と同程度の強さとみなされているんだ。16番と協力関係にある今のジルだとミスリル級冒険者とのタイマンなら勝ちは揺るがないだろうが、2人以上いるとちょっと厳しいだろうな。パーティー単位で来られたら、逃げ切ることすら難しいかもしれない。まぁ、さっきも言ったがこの二つは今は考えるだけ無駄だ。話を戻すが、大体下の級のパーティーが上の級の単体の戦闘力と同じぐらいと言われているから、よほどのことでもなければジルが負けるということはないと思う』
『ツマリ金級冒険者ノパーティーガ、1人ノ【ミスリル】級冒険者ト同程度ノ強サトイウワケカ。確カニソレナラ16番トイウ協力者ガイル俺ノ勝チハ揺ルガナイダロウ。シカシ先程カラ、何カ含ミノアル言イ方ヲシテイルナ。何カ気ニナルコトデモアルノカ?』
『ジルが傷の治療をしている間にその拠点にいる金級冒険者達の情報を色々と集めていたんだが、どうやらそのパーティーに魔法使い(マジックキャスター)がいるみたいなんだ。ジルはマジックキャスターについて何か知っていることはあるか?』
『俺ガカツイテイタ集落ノ長カラ、話ヲ聞イタコトガアル。長モカツテ今ノ俺ノヨウニ沢山ノ人間ヲ殺シテ進化シタ。ソノ時ニ遭遇シタ事ガアルト言ッテイタ。見タ目ガ貧弱デアッタカラ油断シテシマイ、強力ナ魔法ニヨル手痛イ一撃ヲ喰ラッテシマッタラシイ』
『確かにマジックキャスターは普通の冒険者と違って筋肉が発達しているわけでもないから、その強さが見た目に反映しにくいからな。相手の魔力を測る能力でもあるなら話は別なんだが。ただ、マジックキャスターの強さを知っているなら話は早い。マジックキャスター自体の身体能力があまり高くないこと、魔法の演唱時間がかかるということ、ダメージを受けてしまえば集中力が途切れてしまい演唱に集中することが出来ないこと、という弱点があるとはいえ、奴らが放つことの出来る火力は同じ金級冒険者の戦士が出すことのできる瞬間的な火力を大きく上回っている。さっき出てきた長の様に油断してしまえば、数に押されてそのままやられてしまうかもしれない』
『了解シタ。他ニ留意点ハアルカ?』
『特にはないかな。ただ警戒し過ぎて、相手に時間を与えてしまうのも得策ではない。こちらでそのマジックキャスターの外見的特徴も調べてきたから、その拠点に着いたら俺の指示に従って、そいつを優先的に無力化するように動いてくれ。その後は……お前の判断に任せるよ。あと、こちらで全体を俯瞰して見ておく。不測の事態が起きた時16番を通して連絡するから、それまでは好きに暴れてくれ』
そうこう話しているうちに最後の拠点のすぐ近くまで到着したようだ。すでに夜が明けておりこれまでの様に夜陰に紛れて…という風にいかないだろう。それでも勝機は十分にある。後はジルを信じて最後の戦いを見守ることにしよう。




