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 「ほ、報告します!王都内部にヴァンパイアと思しき謎の集団が出現しました!現在は重要拠点を襲撃しながら、王都内部を蹂躙しております!」


 「報告後苦労。…ふむ、ベルサレム卿、この襲撃者の狙いは何だと思う?」


 「順当に考えれば結界の発生源の特定かな?いや、陽動という可能性も否定できないか。どの道、僕たちが2人とも『教会』を離れるのは得策ではないだろうね」


 「道理だな。では、私が出るとしよう」


 「いいのかい?サンダーク卿」


 「無論だ。汚れたヴァンパイアと同じ地にいるというだけでも反吐が出る。一刻も早く奴らを成敗せねば、私の気が収まらんのだよ。貴公の読み通りこれが陽動である可能性も十分に有る。くれぐれも気を付けるように」


 「愚問だね。僕がヴァンパイアごときに後れを取るとでも?おまけに『教会』内部はより強力な結界が張っているというのにさ。ま、忠告自体はありがたく受け取っておくよ」


 と言ったやり取りの後、件のサンダーク卿という人が腕利きの『テンプルナイツ』を率いて『教会』を出発し、ヴァンパイアの討伐に向かった。この2人が噂の『ドミニオン』か。『分体』越しで見るがやはり強そうだ…と、ちょっと前までの俺ならそう思っただろうが、エルメシア様との地獄の特訓の後では彼らの強さが微妙に感じられた。


 それでもやはり油断は禁物だろう。当然『ドミニオン』が動いた情報は『分体』を通してヴァンパイア達にも知らせた。流石のヴァンパイア達も、結界内では少々分が悪いだろう。


 そんなときに役に立つのがまたしても俺の『分体』だ。平民に『擬態』させて王都の各地に配置して、『ドミニオン』の位置を常に把握。おまけに嘘の目撃情報を流すことで現場の情報を混乱させるように動かしている。


 これならそう簡単に両者が接触することは無いはずだ。俺はその間に『教会』に侵入して結界を破壊する。おおよその場所までは突き止める事は出来たが、事前の調査では、やはり詳しい場所までは突き止めることはできなかった。


 そのため今回の襲撃の混乱を利用して探しだすことにしたのだ。行き当たりばったりな計画ではあるが、今回は仲間が強力すぎるので案外どうとでもなるんじゃない?という楽観的な気持ちでいられたのだ。


 ベルサレム卿と呼ばれた人物が、『教会』の大聖堂と呼ばれる場所で自身の配下と思われるテンプルナイツと共に襲撃者の来襲に備えていた。


 立地的にも『教会』のちょうど中央に位置しているため、仮にどのような場所から敵が侵入してきたとしても即座に迎撃に向かうことのできる、なかなか良い場所に駐留していると敵ながら感心させられた。


 そして、その『大聖堂』から繋がる『地下聖堂』の更に奥に、俺ですら平時では探ることのできなかった重要そうな場所が隠されてあったのだ。つまり正攻法ではその場所に向かうためには『ドミニオン』である彼を倒さなければならないというわけだ。


 強力な結界が展開されている『教会』であることに加えて、配下の『テンプルナイツ』の支援を受けた彼を倒すのはいくら『ヴァンパイア』といえど困難極まる作業だ。恐らくエルメシア様でもそう簡単にはいかないと思われるほどに。


 しかし俺なら結界による妨害は意味をなさない。正面から襲撃をかけても十分に勝機はあったが、わざわざ危険を犯す理由はない。そのため、昼間、大聖堂が一般公開されている間に隙を見て地下聖堂に移動し『擬態』で身を隠し、ヴァンパイア達が王都に襲撃を仕掛けたタイミングを見計らって更にその奥に侵入することにしたのだ。


 そしてその計画は無事に成功。地下聖堂の奥へ続く道を守る『テンプルナイツ』の隙を見て暗殺に成功。『ドミニオン』が『大聖堂』に詰めていることを知っているため油断していたのだろう、思ったよりも簡単にいった。彼らを『同化』してその姿と知識を獲得し、同行させていた『分体』に『テンプルナイツ』の姿を『擬態』させて、まるで何事もなかったかのような状況を作り出した。


 これは、ほんの数分間の出来事だ。思えば俺も随分と強くなったものだと感心する。この10日間、自分よりも遥かに格上との戦闘で失いかけていた自信を取り戻すことが出来た。


 テンプルナイツの記憶に従って地下聖堂を奥へ奥へと突き進む。道中、教会の研究者らしき者達ともすれ違い、少しでも多くの情報を得るためそいつらも見つけ次第『同化』していった。


 順調だ。このまま行けば問題なく作戦は成功する。そう思っていたが、研究者の記憶が正しければ、ヴァンパイア達の真の目的は達成されないのではないかと言うことに一抹の不安を覚えた。

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