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 「彼が冒険者に討伐されたと話を聞いたとき、私は後悔しました。もしかしたら彼に何らかの助力が出来たかもしれないと。貴方は…彼とは少し違うようですね」


 「俺の場合だと、故国から遠い場所で魔物に生まれ変わりましたからね。それに最初のころは『スライム』になったことに大きな絶望を感じ、しばらくの間は行動を起こす気にはなれなかったので。今にして思うと、あの頃の何もしていなかった時間が私にとって大切だったという事なのでしょう」


 「それを聞いて安心しました」


 「えっと…話を戻しますが、俺がゲオルグさんの遺体を吸収したことに関しては、皆さまはどう思われているのでしょうか?」


 「私とすれば特に何も。スライムが生物の死体を吸収するというのはある意味、自然の摂理でもありますから」


 彼女の配下のヴァンパイア達もこの件に関しては特に異論はない様だった。と、言うより、それ以前の問題として俺が本当にスライムなのかということに疑問を抱いているようだ。


 やはり『分体』越しで会うのではなく、本体で彼らと合流し顔を合わせてから話し合うことにしよう。そう提案すると、すんなりと了承された。やはり素性のよく知らないような相手と協力するのは避けたいと思っていたようだ。


 「それで、どこで合流します?やはり都市の外の方が、あなた方にとって都合がよいと思われますが…詳しい場所はあなた方が決めてください。私が指定すると…変に疑われてしまいそうですしね」


 俺が敵対するつもりなら、その場所に確実に罠を設置する。場所を選ぶ権利を譲ることで相手の警戒心を多少なりとも削ることが出来れば良いが。


 「王都の東にある山の麓に、壊滅した小さな村があります。3日後の深夜、そこで落ち合う事は可能でしょうか?」


 「問題ありません。あと、1つ気になっていたことがありまして。答えて頂けるとありがたいのですが…エルメシア様、どうして俺の『分体』の『擬態』に気が付いたのでしょうか?」


 「1つ目はにただのネズミとは違う気配を感じたこと。そして2つ目はそのネズミから血の匂いがしなかったことです。初めは何らかの魔法によって偽りの生命を作り出す術かと思いましたが…」


 意外にもすんなりと答えてくれた。やはり、よほどの相手でもなければ正体を見破られなさそうなことに安堵した。答えてくれたことに感謝を伝え、『分体』をえっちらおっちら移動させ帰らせるのも面倒だったので、パスを経由して『分体』の魔力を回収することでその『分体』を消滅させた。


 さて、とりあえずではあるがヴァンパイア達と会談するまでこじつけることは出来た。ならば今度は、彼女らに俺の有用性をアピールしなくてはならない。そこで情報収集用に作っておいた他の『分体』に意識を向ける。


 『教会』や王城に侵入させている『分体』は、ヴァンパイア達に向かわせた『分体』とは違い、その正体を見破られてはいなかった。まぁ、彼女クラスの実力者がそう何人もいるとは思えないからな。当然と言えば当然か。


 ちなみに、間違いなく世界でもトップクラスの実力をもつエルメシア様がすぐにでも実力行使に出ず情報収集を優先している理由は、捕らわれた同胞の身の安全を憂慮してとのことであった。つまり、人質とされてしまうのを避けたかったということだ。


 そうなると俺に求められるのは、『教会』に捕らわれ対ヴァンパイア用に構築された結界の動力源とされているヴァンパイアの救出に関してだろう。ヴァンパイアである彼女らに『教会』の内部の索敵は少々難しいはずだからな。


 そう思い、作った『分体』の内半数を『教会』に向かわせ情報収集を行わせているが、『教会』の建物が大きく、また地下深くにまで部屋が続いていることもあり、なかなか捜索が上手くいっていなかった。


 一応『索敵』も併用してはいるが、『結界』のせいか、詳しい場所までは掴むことまでは出来なかった。少しばかり焦りを感じてしまう。とは言え、王都に来てまだ初日だ。明日以降も捜索に力を入れることにしよう。


 できればヴァンパイア達との会談の前に、何か有力な情報を掴みたいところではあるが…かといって無理をすると、敵に何か悟られるかもしれない。行動を起こす前に敵に気取られてしまうのは下策だ。しばらくは難しい舵取りを迫られることになるだろう。

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