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 翌日、朝日がまだ登りきらない内に冒険者ギルドに行き情報収集を開始する。依頼が張り出されていないこの時間なら、ギルドの職員も余程の事でもなければ時間を持て余していることだろう。案の定暇そうにしている職員を見つけ自分のタグを見せながら声をかける。


 「すみません、金級冒険者のネスといいます。少し、お時間よろしいでしょうか?」


 「ええ、もちろん構いませんよ。どういった事でしょうか?」


 「実は昨日、この都市に来たばかりでして…」


 そんな感じで話し始め、ほどほどに世間話を交えながらこの職員から情報を得ることにした。有益な情報が得られた一方、残念ながらこの都市では経験値が大量に獲得できそうな、一大イベントが起きそうな気配は皆無であることが分かった。


 都市長は若くして有能。豊かな平野を拠点とする魔物も多くいるが、当然それを飯の種とする強力な冒険者の数も多く、政治的にも戦力的にもこの都市に穴という穴は無いように思えた。


 敢えて上げるとすれば豊かな土地を羨む近隣諸国の情勢ぐらいだそうだが、隣国との緩衝地としての地位を長い年月をかけて築き上げており、下手に干渉できない状況を築き上げているのだそうだ。


 「なるほど、『都市国家』というだけあって、金も地位も名誉も人も物も、すべてこの大きな都市に揃っていると言うことですか」


 「ええ。ですが先ほども言ったように、緩衝地としても地位を維持するのは並大抵のことではないですからね。当然、政治的にも難しい選択が迫られることもあります。それを長年に渡ってそつなくこなしている、『クロイツェン家』には一都市民からすれば感謝以外の言葉はありませんよ」


 そんな彼の言葉から、この都市の長であるクロイツェン家に対する負の感情は一切感じられない。為政者として有能であり人望もある。後継者が幼く現当主が突然死でもすれば多くの血が流れるかもしれないが、亜人を助けるためだとか、理由もなく恨みのない人物を暗殺するのは流石に気が進まない。


 「そう言えば…この都市にはアダマンタイト級冒険者の方はいらっしゃるのでしょうか?」


 「『今』はいらっしゃいませんが、この地を拠点に活動していらっしゃるアダマンタイト級冒険者はいますよ」


 「『今』は?」


 「ええ、両名…っと、この都市にはアダマンタイト級冒険者は2名いらっしゃいますが、2名共同じパーティーに所属しています。そのチームに護送の依頼が入っており、現在はこの都市にいらっしゃらないのですよ」


 2名…しかも同じパーティーに所属しているのか。アダマンタイト級冒険者というだけで戦力とすれば恐るべき存在であるのに、その2人が連携をとるとなれば今の俺でも討伐されかねないほどの脅威である。


 「流石に驚いていらっしゃるようですね。アダマンタイト級冒険者ともなると、他の冒険者と協力しなければならない状況などめったにありませんからね。性格が合わないとなるとパーティー組む以前の話にもなりますし」


 「以前いた都市にいたアダマンタイト級冒険者はその…正確にかなり難がありましたが、その御2方はどうなんでしょうか?」


 「面倒見がよく、周りに気配りも出来てる素晴らしい方々です。同じパーティーメンバー以外の冒険者からもとても尊敬されています」


 同じパーティーメンバー…ということは、その2人以外にもパーティーメンバーがいるという事か。強さは最低でも金…いや、ミスリルはあるだろう。つまりそれだけ脅威度が上がったことになる。この都市では何としてでも正体がバレてはならない、心のメモに強く書き記しておく。


 「それを聞いて安心しました。まぁ、私は旅の途中でこの都市に寄っただけですからね。あまり長居はするつもりはありませんが、アダマンタイト級でありながらそのような人格者がいらっしゃるとはこの都市の冒険者はとても心強いでしょうね」


 心の不安を悟られないよう、笑顔でそう返答する。


 「冒険者であるなら、1度あの方々と会って交友関係を持つというのも悪くは無いと思いますが…それは私どもが強制するわけにもいきませんからね」


 「それは機会があれば、ということで」


 何としてでもそのアダマンタイト級冒険者が戻ってくる前に、早急に情報収集を終わらせてこの都市を去らなければ。職員との話がひと段落が付いたところで、いつの間にか冒険者ギルドの建物に多くの人が集まり始めていることに気が付いた。そろそろ掲示板に今日の新しい依頼が張り出される時間なのだろう。


 職員が俺に別れを告げて建物の奥へと入っていく。


 当面は冒険者らしく依頼を達成しながら、この都市周辺に『眷属』と『分体』を配置していく。そして情報を集め、故国に帰るための準備も進める。はやる気持ちを何とか押さえ込みながら、平静を装いながら俺も掲示板の前に移動することにした。

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