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 「本当に行ってしまうのか?もう少しぐらい、この国に残ってはどうじゃ?」


 「お気持ちは嬉しいですが…これ以上俺がこの国にいても、出来ることなんてほとんどありませんよ。それにこの国には俺の『分体』が多くいます。本体である俺より多少能力は劣りますが、アルマさん達と協力すれば仮に『教会』の関係者が何かしらの行動を起こしたとしても問題なく対処できますよ」


 「そういう意味で言ったんではないんじゃがな…まぁ良いか。そういえば、レオン殿達との分かれは済んだのか?」


 「一応、昨日のうちに済ませておきました。と言っても、レオン達には『パラサイト・スライム』を含む幾体もの眷属と『分体』を同行させていますからね。別れ…と言ってよいものかどうか」


 「ま、確かにそうじゃな。それと確認じゃが、今回の礼も込めて儂の指揮する精鋭部隊で『パラサイト・スライム』を正式に運用することが決まった。ま、国の機密情報に関わる奴らには、その採用を見送っているがな」


 「こちらとしても、すべて信じきられるよりは気が楽ですよ。今後の関係は、今後の付き合い方で決めていくことにしましょう」


 「違いない。ま、気を付けていくんじゃな。世の中には儂やお主よりも遥かに強いヤツなどごまんとおる、常にそのぐらいの謙虚な気持ちでおればめったなことは起きんじゃろう」


 「ご忠告感謝します。それでは、これで…」


 わざわざバーバリンの外まで見送りに来てくれたグレイグ将軍に別れを告げ、当初目指していたメウリージャに向けて移動を開始した。思えば、ここまで来るのに随分と時間がかかったものだ。


 初めは何となく助けたエルフから始まった。漁夫の利を狙うつもりだったんだがな。まさかエルフを助けた後に、亜人を救うために人間の都市を襲撃することになるとは露ほども思わなかった。


 その後も驚きの連続だ。エルフを助けたことでエルフのお偉いさんに目を付けられ、ドワーフの国の援護に来ることになったのだから。


 まぁ、ドワーフの国に関しては裏方の仕事はほとんどアルマさんがやってくれた。俺がやったことは、敵対する人間の国を攻撃したぐらいだ。


 国力が低下し、強者がいない状態の国の戦力など大したことは無かった。いや、その状態でありながら手痛い一撃を受けたことに違いはないが。あらゆる状況下で、油断してはならないのだと改めて実感できたのは良い経験になったと思う。


 そんな反省をしながらの移動は、バラビア王国の隣国に位置する人間の国に立ち寄ったことでいったん中止した。理由はもちろん情報を集めることだ。


 バラビア王国の事、そして今後その人間の国がドヴェル共和国とどのような関係を築いていくのかという事。


 立ち寄った都市はそこそこ大きく、バラビア王国とも比較的近い立地であるため有益な情報がいくつもあった。どうやら向こう数年間は、ドヴェル共和国に間接的にも直接的にも一切関わらないことを決めたようだ。


 原因はもちろんジャイアント・フロッグだった。下手に人を派遣して、ジャイアント・フロッグの注意を自国に向けるのは下策だと判断したようだ。確かに人間は魔物を狩っている。しかし進んで強い魔物の興味は引きたくはない様だ。


 被害覚悟で無理に人員を派遣しても、得られるのは俺によって壊滅寸前の状況にまで追い込まれてしまった貧しい国からの恩だけ。それならば見捨てた方が良い、そう判断しても仕方のない事だろう。


 オマケに近々、隣接するバラビア王国のいくつかの都市を併呑するという噂まであった。王都は壊滅寸前で国力が大きく低下している今なら、ジャイアント・フロッグが襲撃してくる可能性も踏まえると現地のバラビア王国の民もむしろその併呑を喜んで受け入れるかもしれないな。バラビア王国からすれば踏んだり蹴ったりだ。…今までドワーフ達にしてきたことを考えれば、同情はしないけど。


 1週間ほど現地にとどまり情報収集をした後、それ以上有益そうな情報は無かったので銀級冒険者相当の強さを持つ『分体』を作成し、人間に『擬態』させてその都市に留まらせ本体である俺は目的地に向けて出発した。


 ドヴェル共和国から出発してから数週間が経った頃、ようやく目的地であるメウリージャに到着した。

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