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 結論から言えば、俺の想定よりもかなり短い時間で移動することが出来た。バラビア王国から戻ってくるときは周辺の都市の様子を確認しながらの移動であり、自身の身体能力を向上を確かめることが出来なかったのだ。


 つまり全力で移動するのは今回が初めてであり、自分でもどのくらいの時間で移動できるのかと期待に胸を膨らませながら挑んだのだ。そうして始まった俺の王都までの旅路は、わずか半日で終わってしまうというあまりにもあっけないモノで終わってしまった。


 その際に、高速で移動するということに適した形態、つまり普段の人間形態ではなく四足獣に『擬態』して移動することにした。


 選んだのはミスリス級冒険者相当の強さを持つと言われる『マンティコア』だ。当時は殺すことに苦労したが、今回の結果を見ればその成果は十分に有ったと思う。その『マンティコア』の体に、これまで『同化』してきた様々な魔物の長所を加えることで本物の『マンティコア』よりも早い速度で移動することを可能にしたこの形態。


 名称を『合成獣』にしようか『ネオ・マンティコア』形態にしようか…そんなしょうもないことを考えながらの移動は意外にも楽しかったが、最終的には『マンティコア改』と呼称することにした。結局シンプルなのが一番良いのだ、覚えやすいし。


 ちなみにシンプルな名称に反して移動速度はもちろんのこと、戦闘力もかなり高い。マンティコア元々の戦闘法である柔軟かつ迅速に動くことで相手を奔走した戦い方もできるし、鋭い爪や蠍の尾のような毒針を持ち接近戦に持ち込まれても問題なく対応することが出来る。


 これに『麒麟』から頂いた鱗を部分的に展開することで高い機動力を保持したまま防御力も十分に確保することにも成功し、『タイラント・ビートル』から奪った毒牙の牙を口内に生やすことで相手にかみついた際に即座に無力化することもできる。


 更に進化した影響からか『タイラント・ビートル』の『マヒの吐息』まで使えるようになっており、その吐息に『毒ガス』を加えて放つことで並以上の相手でも近づくだけで殺すことも出来る。


 とは言ってもこの形態での戦闘は未経験であり、すべては俺の想定の話だ。すぐにでも試してみたいと思う気持ちが強いが、ここはドヴェル共和国。騒ぎを起こすことで、グレイグ将軍に迷惑が掛かってしまうのは忍びないのだ。しばらくは移動の時にのみこの形態に擬態することにする。そしてもしもの時の為に、この形態に慣れておくのだ。


 そんなことを考えての旅路であったが前述したように僅か半日で王都付近にまで到着することが出来た。王都にはアルマさんに同行している第二世代のドミネイト・スライムがいる為、うっかり別の大きな都市を首都と間違えたという事もない。


 王都から少し離れた場所で『マンティコア改』の擬態を解き、人間形態に擬態する。そのまま王都に行き、入城のため王都の城門の前の人の列に並ぶことにする。


 やはりと言うべきか城門の前には多くの人が並んでおり、人の出入りが活発なのだと実感した。そこで短くない時間待たされて、ようやく王都の中に入ることが出来た。


 王都に到着してすぐにアルマさんと合流していることになっており、ドミネイト・スライムのいる方向へと歩み始める。


 すると…かなり立派な商店の前に到着した。間違いない、ドミネイト・スライムの反応はこの商店から発せられているものであり、本体である俺がそれを見誤るという事は万に一つありはしない。


 とはいえ、不安が全くないというわけでもない。確認のためドミネイト・スライムに『念話』を送ろうと思った矢先、商店から1人の人物が出てくるのが見えた。やり手の商人が着ていそうな、清潔感があり、靴のつま先にまで手入れがしっかりと行き届いている立派な服装に身を包んだその人物に見覚えがあった。


 「お待ちしていましたゼロさん。眷属から貴方がすでにこの王都に到着していると聞き、あまりの速さに驚かされましたよ。さっ、店先で話すのも何ですので、どうぞ店の中にお入りください」


 「アルマさん…ですよね?少々…いや、かなり雰囲気が変わりましたね。それにこの店は…」


 「その辺りの事もお話ししましょう」


 そう言って、彼に促されるままに店の奥へと通され、何があったのか話を聞くことにした。

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