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 「昨日はスマンかったな」


 「いえいえ。そのおかげ…と言というのは少しばかり違う気もしますが、実りある1日を過ごすことが出来ましたので」


 「レオン殿と模擬戦をしたそうじゃな。しかも全戦全勝。ゼロ殿の成長の速さには驚かされるわ。敵にならんかったことを、心の底から安堵しておる」


 「全勝と言っても、危ない場面もありましたからね。やはり身体能力が大きく上昇したと言っても、戦士としては未熟なのだと実感させられました。驕らずに精進したいと思います」


 「戦闘技術に関しては短期間で身につくものではないからな。そういった物は日々の鍛錬がものをいう。今回の件でも世話になった事じゃし、今度手の空いたときでも指南でもしてやろうか?」


 「それはありがたいですね。残念ながら、獣人の中で今の俺とまともに打ち合えるのはレオンぐらいですからね。1人の相手ばかりしていると、変な癖がついてしまうのではないかと危惧していたんです」


 「それは良かった。…して、お主の進化した種の名称、なんと呼ぶのか?」


 「当然のように、冒険者ギルドにも情報はありませんでしたからね。『ドッペル・スライム』と呼称することにしました」


 そう言った感じで近況の報告を終え、これからの計画について打ち合わせをすることになった。と言っても、獣人のアルマさんがほとんどの段取りを進めていたという事もあり、俺が報告を受けるという形ではあったが。


 話は進み、昨日の会談の内容も聞くことが出来た。一応俺は関係者だからな。…いや、関係者と言うよりは当事者か。


 「モルガナ商会を始め、人間共の肩を持つような行動をしておった者共は大慌ての様じゃな。まぁ、バラビア王国があのような状態では我が国に侵攻してくる余裕は無かろう。彼奴等の計画を大きく見直さねばならんからな。いい気味じゃ」


 隣国に対して大分鬱憤が溜まっていたのだろう。カラカラと上機嫌に笑っている。


 「昨日の会議では、俺…ジャイアント・フロッグにどのような対応をするのか、話し合っていたそうですね」


 「うむ。この都市にあるモルガナ商会の支部長などは、『我が国の軍を派遣してジャイアント・フロッグの討伐を!』と声高に発言しておったな。何人かそれに同意した者もおった。全く、いくら金を積まれればそんな妄言を吐けるのやら…」


 「隣国とはいえ、敵対している国の危機を解決するために、自国の軍人を危険にさらすわけがありませんよね」


 「それを否定されると、今度は人道的な観点からバラビア王国に大規模な支援を!と食い下がる始末。あまりにも馬鹿々々しくて笑ってしまうのを堪えるのが大変じゃったわ!」


 『笑いを堪えるのが大変』と言っているが、グレイグ将軍が心の底から怒っているのが言葉の節々から容易に感じ取ることが出来た。なぜ国税を敵国の為に使わなければならないのか。彼の考えは至極まっとうなものだ。


 彼が怒っているのは恐らく発言の内容そのものよりも、そのような発言をする者が大事な会議の場に出席しているという現状をさしてのことだろう。そのような状況になるまでモルガナ商会をはじめとする、国賊を放置していた自分の対応の甘さなのかもしれない。


 「2週間後。首都で各地の有力者も交えて、今回の件を議題とした会議を開くことになっておる。その場所で彼奴等の国を裏切っているという決定的な証拠を突きつけ、この国の膿を出すつもりじゃが…」


 2週間後か…思ったより期間が空くなとも思ったが、各地から有力者を呼び寄せるならそれぐらいの時間がかかるのも仕方のない事だろう。連絡をとるのにも少なくない時間が必要なはずだ。誰もが俺のもつ念話の様な便利な能力を持っているわけではないのだから。それよりも気になったことが1つあった。


 「その口ぶりからすると、決定的と言えるほどの証拠はそろっていないという事でしょうか?」


 「アルマ殿が頑張ってくれておる様じゃがな、それなりの証拠は出揃ってはおるが完璧とは言い難いらしい。幾人かはとり逃してしまうかもしれんとのことじゃ。関係者の1人でも取り逃せば後々面倒なことになりかねん。そこでお主にも頼みたいことがある」


 「首都に先乗りして、アルマさんに協力して証拠を集めるのに協力して欲しいってことですか?もちろん、構いませんよ」


 「頼む。こちらでもできうる限りの協力はさせてもらおう」


 ここから王都までは馬車で1週間はかかるのだそうだ。結構近いなとも思ったが、ドヴェル共和国の街道はかなり舗装されているらしく、馬車もかなりの速度での移動が可能であるとのことでその日数で到着するとのことだ。


 生前は商業ギルドの職員で物流にも気を配っていたこともあり、舗装された道でどれ程の差が出るのかに興味が湧いたが、今回は進化による身体能力の上昇を実感するために自力で行くことにした。

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