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 『分化』の能力、それは自身のスライム細胞と魔力を消費して、『核』のある本体とは違う、自分の意のままに動く『もう1つの体』を作り上げる能力だ。


 同時に複数の体を動かすことで頭が混乱するのかと言えばそうではない。むしろそれが当然であるかのように出来る。それも進化によって手に入れた能力なのだろう。ちなみに自立行動をさせておくことも出来るので、戦闘時においても邪魔になるということも無い。


 『分化』によって作られた体、『分体』の強さは『分化』を作ったときに消費されるスライム細胞の量と魔力量に比例される。今の俺が全力で『分化』を行えば金級冒険者以上の強さを持つ『分体』を作り上げることが出来る。


 ただし全力で作ってしまえば、1週間は『分体』は作れなくなってしまうというデメリットもある。しかし並のスライム程度の強さの『分体』であれば同時に複数体でも作ることが出来るので、眷属に頼らずとも、各地の情報収集が格段にしやすくなったという事だ。


 ちなみに『分体』の有する能力は俺の完全なる下位互換ではあるが、『分体』を作るときに少し手を加えることで『索敵』の能力に特化させたり、『寄生』の能力に特化させることも出来る。反面それ以外の能力は実戦に使用できるほどの能力は無かったが。

 

 『分体』が獲得した経験値や魔力はすべて本体である俺に還元される。『分体』は普通のスライムと同様に大気中の魔力を吸収することで問題なく生存できるため、必要なコストは作ったときのみ生じるという親切設計。


 おまけに『分体』を本体に戻すことで『分化』をした時に消費したスライム細胞と魔力が回復する。つまりこの『分体』を平時に大量に作っておけば、いざという時の保険にも使えるし、単に魔力タンクとしての使用法もあり俺にとってかなり有用な能力であった。平時では飽和気味であった魔力の消費先が出来たと言う事もあり、貧乏性な俺にとってぴったりと言える能力であった。


 とりあえず全力で作った『分体』の1体を先にドヴェル共和国に帰国させ、俺は俺の働きによって人通りがほとんどなくなったバラビア王国の僻地で能力の検証を続けた。それも1カ月もあれば大体の検証が終わった為、本体である俺もドヴェル共和国に戻ることにした。


 この1カ月。眷属からの情報によるとバラビア王国では精鋭部隊によって国王が討たれ、新たな国王として暫定的な措置ではあるがその精鋭部隊の隊長が国王代理に就任していた。


 国民からの不満の声があまり出ていないのは、前の国王が民衆を見捨てて逃げ出したという情報が瞬く間に広がっていたためであろう。ちなみにその情報を流したのは俺ではない。すでにこの国の状況は末期であり、当面はドヴェル共和国に侵攻する余裕はないと判断していたからだ。


 暫定的な措置とはいえ軍人が政治を行う事となってしまい、小さくない混乱が予想されていたが以外にもこの隊長、高位貴族家の出身であり為政者としての才覚もあったらしい。混乱した国を上手くまとめ上げ、被害を最小に留めることが出来ていたのだ。恐らくはこの状況をうまく乗り切った後も、その隊長が為政者の職を続けることになると予想された。


 例え他の貴族がそれを望まなくても、民衆がそれを望むはずだ。貴族が反旗を翻し内乱が発生しようとも、元は精鋭部隊の隊長だ。人望もあれば個人の戦闘力もある。俺の働きによって力と人心を失った貴族がいくら攻め込んで来ようとも、これを返り討ちにするなど容易であろう。


 いや、あえて反乱を起こさせることで新しい国造りの礎にでもするのかもしれない。自分に敵対する貴族を反逆罪という大義名分のもと打ち倒せば、自分の名声も高まりまさに一石二鳥。邪魔者を排除することで、自分の望む国政がやりやすくなると考えてもおかしくはない。


 そんな感じで色々と動きのあった1カ月であり、当然そこには少なくない血が流れ、俺の眷属も経験値獲得の機会に恵まれる場面も多かった。バラビア王国にいる眷属だけでもすでに100体を優に超え、進化した個体も2ケタに達している。


 彼らにはもうしばらくは混乱のさなかにあるバラビア王国に潜伏してもらい、状況が安定したら最低限の眷属を残して各地に散ってもらうことにしよう。他国の方が豊かな地が多いからな。当然魔物の遺体なども多くあり、経験値を得る機会が多いはずだ。


 新しく作った俺の『分体』には、バラビア王国に隣接する人間の国に情報収集に行ってもらうことにした。危険があるかもしれないので、例え殺されてしまってもいくらでも量産できる『分体』の方が何かと都合が良いのだ。


 メインとなるのは大量生産した、ただのスライム程度の強さの『分体』だが、1体だけ俺が全力で作った『分体』も組み込んだ。その『分体』は『擬態』の能力に特化して作った。そいつに人間の都市に潜入させることにしたのだ。銀級冒険者のタグでも持たせておけば、問題なく都市内部で情報収集をさせることが出来るはずだ。


 さて、進化したことにより想定よりも長い期間バラビア王国に潜入していたわけだが、為すべきことも終わり、進化によって獲得した能力の検証も大体は終わらせた。いい加減ドヴェル共和国に戻ろう。レオン達が俺を待ちわびているかもしれない。

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