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202

 作戦を伝え終わったのだろう、俺の正面に残り少なくなった兵士たちが集まる。主武装は槍であった。機動力を確保するためだろう、魔道具は所持している者はいない。


 「行くぞ!お前ら!うおおおおお!」


 兵士の数は少なくなっていたが、士気は意外にも高い。先ほど作戦を立案していた2人は人望もあったのだろう。失敗したと思った。彼らを優先して倒すべきだったと。


 突撃を仕掛けてきた兵士の方に向き直し、これをいなしていく。ある者は捕食、吸収し、ある者は掴んで他の兵士に向かって投げつけた。愚直な攻撃が俺に届くことは無い。俺の注意をそらすという目的なら十分にその役目を果たしているがな。


 それなりの数の兵士を殺した頃だろうか、俺の背後に息を殺した兵士が姿を現した。例の魔道具を所持している。頃合いを見て俺に特攻を仕掛けるつもりだ。


 ヌルヌルとした足元に苦戦しながら必死に距離を詰めてくる。正面の兵士たちが一段と大きな声をあげ、注意を自分たちにのみ向けさせようとしてくる。しかし残念ながらその努力は身を結ばない。すでに作戦の内容が俺にバレてしまっているのだから。


 近くにいた兵士を掴み、振り向きざまに背後から近寄って来る兵士に投げつけた。…直撃した。恐らく即死だろう、魔道具を持った兵士はピクリとも動かない。これで兵士らの作戦は失敗だ。さぞ悔しがるだろう、そう思った。が、依然として兵士たちは愚直に突撃しかけてくる。


 何故だ!何故お前たちの士気は下がらない!そう疑問に思った時にはすでに遅かった。俺の目と鼻の先には、先程作戦会議をしていた2人組のもう片方が、大声をあげ勢いよく突撃してくる兵士の影に隠れるように、複数の魔道具を体に巻き付けて迫ってきていたのだ。


 …しまった、してやられてしまった!こいつは俺がこの2人の作戦会議の内容を聞いて、その会話の内容を魔物である俺が理解していることをすでに気づいていたのだ!小声で話し合った後に、作戦の内容を確認するかのように普通の大きさの声で確認し合ったのは、俺に嘘の作戦内容と伝えるためだったのだ。


 思えば最初から疑われていたのだろう。マジックキャスターを優先的に殺していったこと。そして魔道具を持った兵士が俺を取り囲んだ時だ。知性の低い魔物なら、魔道具の存在を理解できずにそのまま攻撃を続行し、次なる魔道具の爆発に巻き込むことが出来たはずなのだから。


 しかし俺は兵士たちの持つ魔道具が強烈な火力を有することに気付き、攻撃の手を緩めてしまった。恐らくその時点で、あの2人は俺が高い知性を持った魔物であると察したのだろう。流石に俺が人間との言葉を理解しているかどうかは賭けであっただろうが、彼らはその賭けに見事勝ったというわけだ。


 彼らの策に見事嵌り、俺は背後から接近する魔道具を持った兵士にばかり気を配ってしまった。その為正面から、周りの兵士の影に隠れながら魔道具を持った兵士が接近していることには気が付かなかったのだから。


 まったく、本当にしてやられてしまったよ。ここまで来るのが順調すぎて、油断してしまったようだ。そして、悔しいが彼らの方が1枚上手であったな。そんなこと思いながら、俺は爆発に巻き込まれてしまった。

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