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 俺の『昆虫誘引大作戦』は思いのほか上手くいっていた。今日で連続して7日間同じことをしているが、連日連夜、陣中で小さくない騒ぎとなっている。


 曰くご飯の中に虫が入っていた、曰く蜂や百足に刺された、曰く夜寝所の中に大量に虫が入ってきて羽音がうるさくて眠れない…など様々な騒ぎが起きている。中には大の虫嫌いの兵士もいるらしく、目の下に大きなクマを作り周りの同僚か大変心配されていた。


 陣を移動した方が良いと進言もあったそうだが、一度組み立てた陣を再構築するのは手間と時間がかかってしまい、また、その間に魔物からの襲撃があれば大きな損失になるという判断の元その提案は却下されていた。


 そう言った理由もあってか、陣中の士気は最悪。指揮官と兵士との間にも軋轢が生じ始め、俺が望む展開になりつつあることを人知れず喜んでいた。そろそろ最後の仕上げと行こう、俺が直接この陣に襲撃をかけるのだ。


 『と、言うわけで今夜、夜襲を掛けようと思う。何か気になることとか、意見がある奴は遠慮せず言ってくれ』


 『昆虫誘引大作戦』で主に働いていたのは昆虫であり、俺個人とすれば『インセクト・スライム』の能力を発動した後は特にすることもなかった。時間を持て余した俺は近隣にある野山に入り、眷属化にするためのスライムを探し回っていたぐらいだ。


 ここ1カ月、多くの街や都市を襲撃したことにより俺個人で稼いだ経験値の量もかなりのものとなっており、それなりの位階を上昇することが出来ていた。そのため思わぬ数のスライムを眷属化できたことに、俺自身が驚いたほどだ。やはり人間を殺すと、得られる経験値の量が多いと実感する。


 ジルのときもレオンのときもメインの戦闘はその両者に任せていたため、俺が常に前線に出て戦うという事もなかった。つまり本体である俺が、積極的に経験値を稼ぐことが出来なかったという事だ。


 だがこの国においては俺がメイン…というより俺単体での襲撃であり、危険が付きまとってはいたがその分経験値は多く稼ぐことが出来ていたというわけだ。まさにハイリスク、ハイリターン。こんな機会でもなければ挑まなかっただろうが、見返りは十分すぎるほどにあったと思う。


 そのため思いのほか増えた眷属によりこの陣を始め、方々に散って俺の行方を探っている索敵班の動向も逐次確認できている。手が余り過ぎて、王都の方にも眷属を派遣できているほどに、だ。


 『こちら、索敵部隊監視班。索敵部隊に配備されている人員に疲れの色が見え始めています。休みなしでいつ来るかもわからない魔物に備えているわけですからね、致し方ないかと。ボスが襲撃中に援軍に現れたとしても、本来の力で戦う事は出来ないと思われます』


 『こちら、陣中監視班。士気がかなり低いですね。ボスの作戦により、万全の状態とはいいがたいです。何かきっかけがあれば、すぐにでも瓦解しそうなほどに。そういえば、数少ないマジックキャスターがかなり参ってますね。普段都市の外で活動することが無いから、虫に対する耐性も他の兵士に比べて著しく低いようですね』


 『こちら王都監視班。陣と定時連絡はありますが、追加の援軍は派遣されそうにないです。ドヴェル共和国に侵攻した兵士を戻そうと伝令を送っているそうですが、連絡が一向に取れずに難儀しているそうです。グレイグ将軍に感謝ですね』


 『ん、皆の働きに感謝しよう。俺がこの陣にいる兵士を倒した暁には、その労力に報いるため諸君らに兵士の死体を進ぜよう。とはいえ、作戦は始まったばかり。作戦が終了するまで、皆気を緩めないように!』


 『『『応!』』』


 …やはり眷属は良い、こうした軍隊っぽいノリにもちゃんと乗ってくれる。思わず気を緩めてしまいそうになるが。すでに他の眷属達にも状況を伝え、いつでも魔力を過剰供給できる状態にある。夜中までまだ時間がある。情報収集は眷属に任せ、イメージトレーニングをして時間を潰すことにした。

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