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 目についた警備兵を舌で捕まえて口の中に放り込む。やはり魔力が少ない分薄味だと感じた。それでも数を食えばそれなりの経験値にはなるだろうと思い、手当たり次第に吸収していく。


 その間、警備兵は果敢に俺の体に剣を突き立て俺を倒そうとしてくる。しかしその程度の攻撃が俺に通用するはずもない。丈夫な体表に覆われた俺の体は、その剣が俺を傷つけることすらかなわず簡単に弾き返してしまう。


 ここに上位の冒険者がいれば本物の『ジャイアント・フロッグ』との肌の質感の違いに違和感を覚えたかもしれないが、これまでの人生で碌に魔物と相対したことのない警備兵では気が付くはずもない。まぁ、気が付いても兵士らの運命が変わるわけも出ないが。


 3・40人ほどの警備兵を吸収したぐらいだったか、1人の警備兵が「もうダメだ…おしまいだぁ…」とつぶやいたかと思うと、少しでも身を軽くするためだろう、手に持っていた槍を捨て、被っていた兜を脱ぎ捨てて脱兎の如く駆け出した。


 それに触発されたのだろう、皆が急に散り散りとなって逃げだしたのだ。お前ら都市の警備兵だろ、住民の為に最期まで戦えよ…とも思ったが、命に釣り合うだけの給与をもらっていないのかもしれない。それなら仕方ない…のかな?


 ただ、面倒なことにはなった。これだけの数の警備兵に四散されて逃げられてしまえば、全員を追いかけて殺すのは少々難しい。仕方ない。何人かは諦めることにしよう。


 近くにいた警備兵は手で捕まえて、少し遠くにいる警備兵は舌でとらえて次々に口の中に放り込んでいく。結構な数の人間を捕食したが、俺の体積に変化が見られないことを不思議に思う人はいないのだろうかと思いながら、冒険者が多く滞在している、冒険者ギルド近くの宿泊施設に向けて移動を始めた。


 都市内部に侵入し我が物顔で都市内部を蹂躙し続けている謎の魔物。その来襲に備えて勇敢なる冒険者達は武器を構え、覚悟を決めた面持ちで俺を待ちかまえていた…と言うことは無かった。


 普段のこの時間なら多くの冒険者が宿泊している宿にいるため、この辺りにそれなりの数の魔力を感じることが出来た。しかし今はその数が極端に少ない。もしかしてではあるが、俺が警備兵を相手にしている間に騒ぎを聞きつけてさっさと逃げ出したという事か。


 自分の身が一番であるのは分かるが…少しぐらいこの都市の平和と安全のために貢献しようとは思わないのか。襲撃者である俺が言うべき言葉ではないとは思うが。


 とりあえず冒険者ギルドの建物を壊す。その直前に1人の男が転がるように飛び出してきた。こいつは…思い出すまでもない、数少ない冒険者ギルドの職員だ。流石に建物が壊されたとなっては、いつものようにスルーすることは出来ないか。


 俺の姿を見て瞬間、大きな悲鳴をあげて全力で逃げ出した。あくまでもこいつは単なるギルドの職員。冒険者のように多くの経験値を持っているわけではないが、この都市に最初に訪れた時に受けたあの冷たい対応を忘れたわけではない。


 舌でとっ捕まえて口の中に放り込んだ。こいつにも多少なりとも恨みがある。とはいえ、そこまで酷いものでもないからな。苦しめることなくサクッと殺してやった。


 やはり経験値的にはそれほど上手くは無いが、精神的には非常にスッキリした。


 …悦に浸るのはここまでにしよう。この都市にはまだまだ殺したい奴はたくさんいるからだ。何よりもこの程度の事で満足したくは無いのだ。


 索敵を使って目当ての人物の魔力を探る。………見つけた。どうやら裏路地に入って城門を目指して移動中の様だ。一応冒険者なんだから、騒ぎの中心に駆けつけて問題解決に協力しろよ…と思わなくもない。


 ただ自分の命を優先するというのは理解できる。生まれ故郷であれば命を賭してでも守るという選択肢もあっただろう。しかしこんな都市に命を懸ける価値は無い、そう判断してもおかしくは無いか。その気持ちだけは嫌というほど分かるのだ。

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