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 とは言えこれは、あくまで俺の推測だ。グレイグ将軍にも伝えて、彼の意見を聞くことにする。


 『ありえない…とは言い切れんな。今回こんな暴論を言い出した議員が『モルガナ商会』からの支援があったと突き止めたのはアルマ殿じゃった。幾人もの人を間に挟むことで本来なら発覚しなくてもおかしくはなかったが、お主の眷属である『ドミネイト・スライム』の能力のおかげで何とか突き止めることが出来たらしい』


 幾人もの人を挟んだという事は、その議員はもしかしたら『モルガナ商会』の存在には気が付いていないということかもしれない。つまり『モルガナ商会』からすればいつでも切り捨てることのできる捨て駒の一つと言う事か。


 実際に防衛費を削ってバーバリンが陥落してしまえば、防衛費の削減を訴えた議員はその責任を追及されて確実に処分される。その議員が『モルガナ商会』の存在に気が付いていないのであれば、いくらその議員が追及されても『モルガナ商会』は痛くもかゆくもないというわけだ。


 そして残るのは危機意識によって軍事費に多額の予算を割くべきだと思う国民だけ…まさに『モルガナ商会』が望む世界である。


 ちなみにバーバリンを人間達に攻略されても、首都までには大きな都市がいくつもある。そこをすべて攻略することは流石に人間達にも不可能だから、主な拠点が首都にある『モルガナ商会』に大きな被害は無いだろう。


 今回『ドミネイト・スライム』を使って情報を集めることが出来たがその情報をもとに『モルガナ商会』を政治的に追及ことは出来ないだろう。証拠の出どころが、謎のスライムと言われてこの国の議員が素直に納得するはずもないからな。いくらでも言い訳はできるだろうし、わざわざこちらの手の内を晒すのは避けたい。


 『そういえば、アルマさんがその情報を入手したとのことですが、もしかしてバーバリンから他の都市に移動したという事ですか?』


 『なんじゃ、聞いておらんかったのか?最初の数日はこの都市で情報収集をしておったが、流石に限界があると判断したようでな。アルマ殿と数人の獣人は拠点をドヴェル共和国の首都に移しておる。首都には『モルガナ商会』の本店もあるからな。当然得られる情報の質も量も増えたが警戒も厳重にされておるそうじゃ。そんな中でも着実に結果を出してくれておる、ありがたいことじゃ』


 確かにアルマさんならその辺りの事にも警戒しながら着実に成果を出してくれそうだ。ちなみに首都にもそれなりに獣人はいるそうなので、特に目立つこともなく活動をすることが出来ているとのことだ。


 『レオン殿と他数人は、バーバリンで冒険者登録をしてかなりの活躍を見せておるそうじゃ。活動期間は短いが、すでに金級冒険者にまで昇格していると聞く。彼らの実力なら当然と言えるがな』


 レオンの実力はゼノンの装備を含めるとアダマンタイト級に近い強さを持っているし、他の獣人達もミスリル級に近い実力を持つ者もいる。実力主義の冒険者という職業ならその昇格の速さも納得がいくというものだ。


 当初は裏で動く以上、下手に目立つことは避けたいという思いもあったが、バーバリンで活動する上である程度の信用が必要になる機会もあるかもしれないということで、彼らに冒険者として大々的に活動してもらうことになったのだ。


 言い逃れが出来ないほどの明確な証拠を掴んだとしても、それが謎の獣人達からもたらされたものと、名のある冒険者からもたらされたものとでは信憑性に違いが出てくるからだ。


 『それで…本題はなんじゃ?人間が侵攻して来てと報告するためだけに、念話を送ってきたわけではないのじゃろ?その程度の情報、こちらが掴んでおらんとは思ってはおらんじゃろ?』


 俺に知らされていない情報網も一つや二つはあるはずだから、そのことに驚くことは無い。


 『ええ、その通りです。この都市の事、そして周辺の都市の事は調べ尽くしました。はっきり言って、俺にとってもドワーフにとっても残しておくメリットは一切ありませんでした。そこでですね…周辺の都市ごときれいさっぱり、壊滅しようと思いまして』


 自分でも驚くほど明るい声が出た。自分で思う以上に、この都市での生活に嫌気がさしていたのかもしれない。

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