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 人間の国で情報収集を行うため、ドヴェル共和国の交易都市バーバリンを出立した俺は徒歩で2週間ほど離れている人間の国、『バラビア王国』の城郭都市『ベルレーン』に向かって移動していた。


 道中は『アーミー・ローカスト』に荒らされた大地が広がっていた。グレイグ将軍から仕入れた情報だと、ドヴェル共和国のよりも『バラビア王国』の方が『アーミー・ローカスト』の被害が大きかったらしい。


 移動中は魔物を警戒しなくても良いという利点はあるものの、こうも山も谷もない道中では暇で暇で仕方ないと思った。そうなると自然と歩みが速くなってしまい、当初2週間と予定していた移動期間も1週間ほどで目的地についてしまった。


 まぁ、早く着く分には問題は無い。そう思い、人間とドワーフの国との最前線基地でもある城郭都市『ベルレーン』の入場の為の手続きを行うため、城門に並ぶことにする。


 それにしても…何というか…寂れているな。城門に並ぶ人はほとんどいないし、城郭都市と言うだけあって高く、堅牢そうな城壁はあった。しかし所々が崩壊しかかっていながら、ろくな補修がされている様子がまるで無い。


 『バラビア王国』では困窮した財政状況が続いているとは聞いていたが、前線基地の補修にお金をかける余裕すらないとは…聞いていた以上に財政がやばいのか、ドワーフが攻め込んでくることは無いと完全に読み切っているのか…


 戦争なんかせずに国力を回復することを優先しろよ…とも思ったがその術がないんだった。そのため他国からの支援で戦争をしているのだ。豊かになるために戦争をしているのか、支援を受けるために戦争をしているのか分からない状況だ。


 「銅級冒険者のロジクか。…しかし、何でまたこんな場所に?」


 人が少ないという事は、入場にかかる待ち時間も当然短い。それにしても、城門の警備兵にすら『こんな場所』呼ばわりされるのか、この都市は。いや、地元の人間だからこそ、この都市がヤバイと言うことをひしひしと感じているのかもしれない。


 「地元の…俺の住む故郷にも碌な仕事が無いからな。少なくともこの都市は俺の故郷よりはデカいから、少しはまともな仕事があるんじゃないかと思って…」


 今回俺が用意したアンダーカバーは10代後半の冴えない感じの銅級冒険者だ。装備品もそれに相応しい物に交換済みで、少し猫背気味で歩くことでいかにも自信なさげな感じを演じている。


 仮に今まで使用してきたミスリル級冒険者のマジクというアンダーカバーでこんな寂れた町に来てしまえば、確実に目立ってしまうだろう。基本的にはミスリル級の実力があれば、どんな大きな都市に行っても大歓迎される。つまり余程の郷土愛でもなければ、こんな貧しい国に居続ける理由は無い。外国に行く方が楽に大金を稼ぐことが出来るのだ。


 ちなみについ先日まで使っていた『マジク』という呼び名にようやく慣れてきていたので、それに近い名前を選んだ。ちょうど似通った名前のタグが存在して良かったと心底思った。


 「…そうか。この国じゃどこも似たり寄ったりだからな、あまり期待はするな」


 そう言って冒険者のタグを返却してくる。かなりおざなりな入城検査だ、俺の様な不審者を見つけようとする意欲を感じない。いや、ここまで寂れていれば不審者もこの都市に来る理由は無いのかもしれない。


 とりあえず冒険者らしく、冒険者ギルドを目指すことにした。その経路にも当然人はほとんど見かけない。これまでいくつかの小さな街を見てきたが、ここまで人を見かけないというのも珍しい。どんなに小さな街でも、出店の1つや2つは見かけることが出来たからな。


 城門の警備兵に聞いた経路をたどり、目的地である冒険者ギルドに到着した。中に人は……ほとんどいない。飲んだくれている覇気のなさそうな冒険者が数人と、勤務中であるにもかかわらず読書をしている受付の職員が1人いるだけだ。


 突然冒険者ギルドに入ってきた、見慣れない銅級冒険者の俺に注意を向ける様子は無い。取るに足らない些事と判断したのか、他人に気を配るほどの余裕が無いのか。とりあえず依頼の貼ってあるボードの前に行き、この都市ではどのような依頼が貼り出されているのか調べることにする。


 ………。碌な依頼が一つもない。まぁ、この都市周辺にはあまり魔物は生息していないからな。多くの冒険者が飯の種にしている魔物の討伐が無くても致し方なしか。一番報酬の高い依頼は、商人からの護衛の依頼か。


 運ぶものは…ドワーフの国から仕入れた、ドワーフ製の高性能な商品かな?この都市には、それ以外には碌に売れそうなものは無さそうだし。まぁいいか、とりあえずギルドの職員に話を聞くことにしよう。有益な情報が有ればいいが…

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