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 グレイグ将軍と一通りの打ち合わせをした後、俺達の活動拠点となる場所に案内された。そこは商業区画にある大きな雑貨店であった。『死の商人』の周りを探るなら、同じく商業区画に拠点を構えた方が色々と都合が良いと判断しての事だろう。


 店の中に入ると店員以外には人はおらず、案内してくれたドワーフ…グレイグ将軍の腹心さんと、店員のドワーフが軽く目配せをした後に、そのまま店の奥へと誘導されることになった。


 そして突き当りにある商談用の、外に声が漏れ出ないような防音性の高そうな部屋に通された後、レオンが口を開く。


 「でかい店だな。ここが『秘密警察』とやらの拠点なのか?ずいぶんと金をかけているみたいだが…」


 「元はグレイグ将軍の親戚の店で、無理を言って譲ってもらったそうです。何でも『任務中のケガで退役せざるを得ない兵士たちに、第2に人生を歩めるための働ける場所を用意したい』といった理由で。まぁ、あながち間違ってはいませんが」


 そういえば、先ほど見た店員は片足が義足であった。しかし退役した後もこのような秘密組織の運営に携わることになるとは、第2の人生もなかなかに大変そうだ。


 「先ほどいた店員の方も当然こちらの事情は知っていますので安心してください。ケガをしてなお、グレイグ将軍に仕えることが出来るとは…彼も幸せ者ですね!」


 ドワーフとはマゾ集団なのかと邪推してしまいそうになるパワーワードだ。いや、それだけグレイグ将軍は人望が厚い人格者なのだと自分を納得させることにする。そんな彼が協力者としていることを頼もしく思うことにしよう。


 「そういえば、まだ名乗ってはいませんでしたね。私はグスタフ。グレイグ将軍の秘書官として働いております。皆さまとグレイグ将軍のつなぎ役として協力させてもらう予定だったのですが…」


 「俺の眷属の念話によっていつでも情報交換ができますからね。グレイグ将軍の腹心である貴方が頻繁にこの商店を出入りしていれば敵の注目を浴びてしまうかもしれませんから、その危険が無くなったことを良しと思いましょう」


 と、軽く慰めておく。が、あまり心に響いている様子は無い。グレイグ将軍という信仰対象の為に働くことこそが、彼の生きがいなのだろう。その内容が苦しければ苦しいほどグレイグ将軍の為になり、それが自身の幸せと感じることのできる変人なのだろう。


 だから俺の眷属が、その仕事の一部を奪ってしまったことに少なからず悪い感情を持っているのかもしれない。こういった感情は後になるほどじわじわと効いてくる…気がする。今のうちに手を打っておかなければ。


 「ま、まぁ、それにつなぎ役という、誰にでもできそうな仕事に貴方の様な優秀そうな人材を使うのは気が引けますからね。先ほどのグレイグ将軍の様子を見ると、貴方は将軍からかなり信用されているようでしたし、きっと将軍の傍で働かれた方が将軍の御為になる事でしょう」


 「ええ…ふふっ…そうですよね。いやぁ、ゼロさんはよく見ておいでだ。あの短い会談の間にそこまで見抜いていたとは。流石、エルフ国の国王陛下の信任が厚いというのも頷ける話ですよ…ふふっ……ふふふっ…」


 スマナイ、グレイグ将軍。俺は我が身可愛さに貴方を裏切ってしまった。絶対に伝わらないだろうが、一応心の中で謝罪させてもらおう。


 そこでふと思ったのは、もしかしたらグレイグ将軍は彼の将軍に対する過剰なまでの信仰心を危険と感じ、つなぎ役とすることで自身との距離を置きたかったのかもしれないということだ。


 ただ、そんなことは知ったこっちゃない。俺は俺の身が一番大切だ、今日会ったばかりのドワーフの身の安全を優先できるほど俺の人格?は出来てはいないのだ。


 まぁ、グスタフが将軍の不利になるようなことはしないだろうし、裏切ることは決してないだろう。身内のいざこざは、身内で解決しておいてくれ。心の底からそう思う。


 「では、私はこの辺りで帰らせてもらうことにします。グレイグ将軍を補佐しなければなりませんからね。この店の店員もある程度の事情は知っていますので、分からないことがあるなら遠慮なく聞いてくださっても大丈夫ですよ。それでは、失礼します」


 そう言って足早に去っていくグスタフさん。彼とはあまり関わりたくないタイプだなと思い視線を獣人達に向けると彼らも同じ思いだったようで、彼が去っていったことにどこかほっとした様な表情を浮かべている。


 やはり俺がグレイグ将軍に『寄生』して席を外している間、何かあったのかもしれないな…怖くて聞くことは出来ないが。気を取り直して、今後のことを話し合うことにした。

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