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「この国は100年前の『アーミー・ローカスト』の災害によって少なくない被害を被ってしまい、当時の国王陛下がその責任を取る形で職を退任したんじゃ」


「責任をとるって…その災害は当時の国王のせいではないですよね?」


「無論その通りじゃ。じゃが、それをわかっていながらそれを理由に国王陛下を攻める愚か者もおる。得てしてそういった者の声が大きいというのは言わずもがなじゃな」


愁いを帯びた悲しげな表情でそう自嘲する。昔の職場でもいたな、そんな奴。感情論で人を攻めてくるんだ。こちらがいくら理論的に説明しても一切聞く耳を持たない。で、相手は感情でモノを言うもんだから説得することが出来ないんだ。同じことばかり言ってくる。そして最後にはこちらが折れざるを得なくなってしまうんだ。


それで結果が散々なものになっても自分では一切の責任は取らないし、それもすべて人のせい。思い出すだけでも腹が立つ。


「お主らは『民主主義』と言うものを知っておるか?」


 「確か王や貴族が政治を行うのではなく、民の投票などによって選ばれた代表が政治を行うべきだとされる政治思想…でしたか?」


 「概ねはあっておるの。そういった思想が当時はドワーフ国内で流行っておっての、当時の国王陛下に子供がおらんかったこともあって、陛下が退任されたことを期にわが国では民主化が推し進められることになったのじゃ」


 国民の声が直接政治に届くとされる民衆が主体となって政治を行うという政治の在り方か。もちろんメリットもたくさんあるだろうがデメリットも存在するだろう。


 例えば国を豊かにする素晴らしい政策を実行しようと思っても、いちいち議会を通して議員からの賛同を得なければならない。当然、皆が一同に賛同してくれるものでもないので、時間をかけて説得しなければならず、下手をしたら政策を実行する絶好の機会を失ってしまうかもしれない。


 まぁ、議員に多種多能な人材がいれば様々な政策が立案されるだろうから、1つの政策にこだわる必要は無いと考えることも出来るか。


 「それで国王が退任したことを機に、民主化した我が国は『ドヴェル王国』から『ドヴェル共和国』へと国名を変え、新たな出発をしたのが今からおよそ50年前の事じゃ」


 「王家が民主主義を認めたという事ですが、貴族の方々もそれに同意したという事ですか?ずいぶんと素直ですね、普通はもっと権力にしがみ付くものかと思うのですが」


 「儂らドワーフは人間と違い、基本的にはそれほど権力欲とかは無いからな。建国当時は色々と国が荒れておったかので強権を使わざるを得ん必要があったという事じゃ。それに王家、貴族と言っても世襲制の地方の代表の様な、形だけのものであったからな。それに固執する理由はそれほどなかったのじゃろう」


 なるほど、だからこそ「民主化」運動なんてすることが出来たというわけか。俺の前世の生まれ故郷であるライアル王国でそんな活動しようものなら、不敬罪で一族郎党縛り首の後、数日間は首を城の外に飾られることになるだろう。


 「そうして民主化した我が国では、投票によって国の代表を決めることになった。当時の多くの国民が、それが国をよりよくすることのできる大きな一歩であると信じ切っておったな」


 何か話し方に陰の様なものを感じるのは気のせいではないだろう。


 「そうして選ばれた代表の中におったのじゃ。国をそして民を裏切り、人間の国に支援をするべきだと声高に主張する愚か者どもがな」


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