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 流石はドワーフの国の防衛ラインである。城壁は高く、石落としや上部に作られた櫓ですら細部にまでこだわって作られているのが素人である俺でも簡単に見て取れる。それもドワーフの職人魂がなせる業なのだろう。


 城門の前に立つ警備兵に身分証を見せ、中に入る俺達一行。リースはドヴェル共和国内で使える自分の身分証があり、俺と獣人達はアーロン様から渡された身分証を提示することで問題なく入ることが出来た。


 ただ、俺達が渡した身分証を見た警備兵が驚いた表情を見せ、震える手で俺達に身分証を返したのは気のせいではないだろう。他国とは言え、王族が用意した身分証がその辺の身分証と同一のものでもないか。余計な面倒ごとに巻き込まれないことを切に願う事にしよう。


 城壁の中は元交易都市というだけあって様々な建造物が立ち並んでいた。そして、ドワーフだけでなく様々な人種がいた。エルフや獣人はもちろんのこと、なんと戦争をしているはずの人間までもいたのだ。


 まぁ、人間の国すべてと戦争しているわけでもないのでいてもおかしくは無いのだろうが、それを受け入れているドワーフも、戦争中にもかかわらず平然とやって来る人間もなかなか肝が据わっていると思った。そして俺と同じことを思ったのだろう、レオンが口を開く。


 「ふむ、交易都市と言うだけあって、かなり賑わっているようだな。まさか人間も来ているとは…」


 「まぁ、ドワーフ製の製品の質の良さは人間達も知っていますからね。人間の国に持って帰り販売すれば、それなりの利益が出ますから。ドヴェル共和国は現在戦争中ではありますが、危険を犯してでも自身の利益を追求する…それが商人という生き物なのですよ」


 「商人に偽装して、間者とか送り込まれたりしないのか?」


 「昔から付き合いがあり信用のある商人はある程度自由に行動できますが、そうでない、新規の商人とかだと腕に魔道具を付けて常に居場所が分かるようにしているそうですよ」


 「ドワーフ達に常に居場所を知られるというわけか。あまり居心地は良くなさそうだな」


 「嫌なら来るな、という事でしょうね。確かに人間とも取引をしてはいますが、当然快く思っていないドワーフの方が多いですからね。その辺りが最大限の譲歩ということなのでしょう」


 聞けば、ドワーフの国に商売に来る商人は遠方の国から来る人間も当然いるが、この国と戦争中の人間の国に属する商人もやって来ているのだそうだ。商売なので一応取引はするが、そうして商売することで得られた利益の一部が税として国に入り、それが戦費に使われているのだと思うと当然ドワーフ達もあまりいい気はしないだろう。


 「あちらに見えるのがこの都市の行政施設で、バーバリンの都市長と城壁の責任者を兼任しているグレイグ将軍がおられます。では、私の案内もここまでと言うことで」


 「そうか、ここまでの案内感謝する。リースはこの後の予定は?俺達からも何か礼をしたいんだが」


 「案内と言っても大したことはしていませんよ。皆さま旅慣れしていたのでこちらが手を貸したという事もありませんでしたし。むしろ戦力的にはいつもより安心して移動出来ましたので、逆に感謝したいぐらいですよ」


 「そう言ってもらえるとありがたい」


 「皆さんの武運を祈っております。そして私どもの商売が少しでもやり易くなるのであれば、それに勝る喜びはありません」


 なるほど、つまりは俺達が人間の国家に大きな打撃を与えて道中の安全を保障してくれと、そう言いたいんだな。もちろんそれは俺達も望むところだ。経験値の獲得につながるのだから。この2週間寝食を共にしたリースと別れ、俺達は行政施設に向かうことにした。

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