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 「戻ってきたな、ゼロ。報告はお主の眷属から聞いておる。事後処理も上手くいっておるようじゃな」


 「はい、おかげさまで。そちらは何か変わったことはありませんでしたか?」


 「特には無いの。おっと、そういえばお主の眷属にするためのスライムを捕らえて練武場の方にまとめて置いておるから、後でそちらに行って眷属化してくるといい」


 「ありがとうございます」


 「それと明日、へい…ではなく、アーロン様がこちらに来られることになった。最後にもう一度話をしたいと、おっしゃっておった。言うまでもないが、無礼のないようにな」


 陛下…と、言おうとしていたのだろう。途中で言い淀んだのは、今回も一応お忍びと言う体で来るからなのだろう。言葉では発せられてはいないが、そのぐらいのことは察することが出来る。


 それにしても、わざわざ来る事もないだろうに。俺の眷属を使えばいつでも連絡をすることが出来るのだから。アーロン様のことが苦手というわけでもないが、お偉方と会話するというのは非常に疲れるのだ。こういうのは前世の名残なのだろう、小市民根性が魂に頑固にこびり付いているのだ。


 一通りの情報交換を終え練武場に移動した。どうやら先客がいる様だ。魔法の練習をしているようには見えない…剣による近接戦闘の鍛錬をしているようだ。どうやらレオンとその仲間たちの様だ。レオンが一人で複数の獣人を相手に互角以上の戦いを見せている。しばらくの間眺めていると、レオンが俺に気がついたようだ。


 「久しぶりだな、ゼロ。マリスレイブでやり残したことがあると言っていたが…その様子を見ると、無事に終わったようだな」


 「勿論。ただ今回の俺達の襲撃事件、獣人が襲撃者であるとバレても人間と獣人との間に必要以上に軋轢が生じないように色々と裏工作をしていたが、モキド…領主代行が襲撃者の正体を探るよりも復興を優先させたから、襲撃者の正体に未だ気が付いていないようなんだ。つまり、残念ながら俺のやっていた裏工作が無駄になってしまったようなんだ」


 もしかしたらモキドは襲撃者の正体が獣人であると薄々ではあるが気が付いていたのかもしれない。だから獣人の奴隷のいなくなったマリスレイブに再び襲撃が無いと確信しているからこそ、無理な調査をしていないと考えることも出来る。


 不確定要素が多く気になってることもあるが、ドミネイト・スライムが支配している人間を使って無理な調査をさせて相手を警戒させたくもない。とりあえず、差しあたって亜人にとって不都合が無いためこの件はこの辺りで手を引くことにした。


 ちなみに俺が支配していた人間は、現在眷属のドミネイト・スライムに支配権を譲り渡している。遠方に行く俺にとって不必要であるからだ。ドミネイト・スライムが支配した人間も幾人か殺されてしまったので、マリスレイブの情報を知る駒の補充が出来て丁度良いと言っていた。


 それにしても、支配権の移譲が簡単にできたことが意外であった。やはり俺は俺が思う以上に、眷属達の能力の掌握が上手くいっていないんじゃないかと思う。一度、マネジメント・スライムと話し合う必要があるかもしれない。いや、その辺のことはあいつに任せて俺は強くなることだけを考えて…考えが堂々巡りになる。後回しにしておこう。


 「剣の鍛錬をしていたようだが、ゼノンから頂戴したその装備を使いこなすことに難儀しているのか?」


 「今までフルプレートアーマーなんて装備したことなんて無かったからな、勝手が違うのから仕方ない事だ。剣もそうだ。間合いや鎧の重さにも慣れなければならない。いつまた、ゼノンの様な強者と戦うことになるか分からないからな。その時になって焦るのは愚かというものだ」


 「焦って鍛錬をしなくても、そんなに頻繁に強者と戦う機会が訪れるとは…っと、もしかして俺と一緒にドワーフの国に行ってくれるのか?」


 「そのつもりだ。どのみちこの辺りには居られないだろうからな、俺にとっても都合のいい話だと思ったからな」


 ゼノンの鎧をポンポンと叩いてそう言った。道中の不安が無いわけでもないからな、戦力面でも少し安心することが出来た。ゼノンは新しい装備に慣れるため鍛錬に戻り、俺は眷属を増やすため野良のスライムがまとめて置いてある区画に移動した。


 そこには大量のスライムが柵の中に雑に押し込まれていた。まぁスライムの軟体な体なら窮屈だと感じることもないだろう。


 何体か取り出しては眷属化を施し、またそこから何体か取り出しては眷属化を施すという作業を延々と繰り返す。獣人達の協力で経験値を大量獲得できたこと。そしてゼノンを殺し、奴の体を吸収したことでかなり位階を上げることが出来ていたのだろう。


 これ以上眷属化が出来ないという状況になるころには、すっかりと日が暮れてしまっていた。

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