表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/271

158

 「色々と教えて頂いて、ありがとうございました」


 「いえ、こちらもまだ全容を把握できていませんので、お伝えできる情報が少なくて申し訳なく思っております」


 冒険者ギルドから得られた情報だと、領主であるマリアーベ伯爵からは追撃の為の部隊の派遣要請が出ているらしい。しかしゼノンほどの実力者の安否が分からない現状では冒険者ギルドからすれば、どうしても消極的な行動にならざるを得ないとのことだった。


 おまけに上位の冒険者不足もそこに関係してくる。ミスリス級のような上位の冒険者は、俺達が都市を襲撃した時にその異変を即座に察知して迎撃にやってきたが、事前の準備をしっかりしていた俺達はこれをそれほど苦労することなく返り討ちにすることが出来た。


 少し遅れて銅級や鉄級の冒険者も出張ってきたが、その頃には俺達の当初の目的である時間稼ぎがほとんど達成できていたため、無理に彼らを倒すことなく俺達はさっさと撤退したのだ。つまり初動の早かった上位の冒険者ほど被害は大きく、そうでない下位の冒険者の被害は意外にも少ないという結果になった。


 冒険者ギルドからすれば全体から見れば多少は数に余裕があるとはいえ、下位の冒険者にゼノンが安否不明になるほどの依頼を出すわけにもいかないので、追撃の部隊を出すことが出来なくなっている。


 もしかしたら数少ないミスリス級である俺に、領主から指名依頼が入るかもしれないから気を付けるようにとのアドバイスをもらった。まぁ、俺が追撃の依頼を受けても襲撃者側に殺されることは無いんだが。アドバイスをもらったことに感謝の意を示しておいた。


 さて、これからどうしたものか。商業区の奴隷商館跡に行ってみようか、なんてことを考えていると、不意に声を掛けられる。


 「マジクさんじゃねぇか。久しぶり、アンタは無事だったみたいだな」


 「ダクエルか、久しぶりだな。そちらも元気そうだな、安心したよ」


 声をかけてきたのは俺はこの都市に来て初めての依頼を一緒に受けた、銀級冒険者のダクエルとそのお仲間たちだった。


 「今回の謎の襲撃者の一連の事件で、かなりの数の上位の冒険者がやられちまったらしいから、アンタもどうかと心配していたんだ」


 「まぁな。サルカの森に麒麟がいるかもしれないって話だったから、用心して少し離れた場所に行っていたんだ。だがそのせいでその襲撃者に関する情報とかほとんど無くってな、飯を奢るかお前たちの知っている範囲で話を聞かせてくれないか?」


 「もちろん構わんぞ」


 そうして俺達一行は俺が彼らに紹介してもらった店に移動することにした。道中も話を聞きたかったが、中途半端な聞き方をして、重要な話を聞き逃すという事もしたくない。


 店についた後しばらくは各々の近況を報告したりして時間を潰し、ダクエル達に十分な酒が入り、口が軽くなったであろうタイミングを見計らって話を振ることにした。ギルドの受付嬢から聞いた話の内容とあまり大きな差は無かったが、いくつか気になる情報も聞けた。


 「領主の交代を求める運動が起きているって本当なのか?」


 「運動っていうほど、大きいものではないがな。それでもその流れは確実に大きくなっているらしい。これまではマリスレイブの経済が上手くいっていたからあまり話題になっていなかったけど、今回の襲撃事件で領主に対する不信感がそれに火をつけてしまったんじゃないかと噂になっている」


 正直ダメもとで領主交代のための情報操作をしていたが、案外うまくいきそうなことに驚いた。それは話は俺がギルドから入手した情報の中にはなかったのだ。何故そんなマイナーな情報をダクエルが知っていたのかと言うと、昔からこの地に住んでいて顔が広く色々な場所ともつながりがあったからだそうだ。


 俺達が必死になって集めた情報も、情報通の彼だったら案外知っていそうなイメージだ。ちょっとショックだ。


 それにしても、これは大きなチャンスでもある。ドミネイト・スライムが支配した人間のバックアップにより力を入れることにするか。仮に領主の交代が旨く行けばその混乱により襲撃事件の捜査はなかなか始まらないだろうし、仮に交代しなくても時間は十分に稼ぐことが出来る。


 それにしてもバックアップか。活動資金がかかりそうだ…いや、俺の手で現領主の暗殺という手もあるか。謎の襲撃者の捜査よりも、現領主の暗殺事件の方が重大であるからな。それにいまなら、多くの衛兵が死んだことにより警備の人手が足りていないはずだ。


 いや、あえて未遂に留めることで領主の警備兵を増やさせ、襲撃事件の捜査に人手を出させないようにするという手も…まぁ、臨機応変に対応しよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ