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 マリスレイブの都市内に入るため城門の前で並んでいると、いつもより人が少ない気がした。更には入場するときの検査もいつもより厳重に感じる。俺達が襲撃したことによる影響かもしれない。


 周囲に気を配りながら冒険者ギルドに向かう道中は、これといって変わったところは見受けられなかった。襲撃を受けて被害を受けた場所は都市の中心部に近いため、都市の外側にある冒険者ギルド近辺ではこれと言った被害は出してはいないので当然と言えば当然かもしれない。


 ギルドの中に入れば、いつもより大分活気が無い。それも俺達が襲撃した際に多くの冒険者の命を奪ったこと、そして、撤退した俺達の追撃に出た冒険者が1人も帰ってこなかったことを考えれば仕方のない事であろう。


 馴染みの受付嬢の前に並び、襲撃前に受領した依頼の報告をする。


 「コカトリスの討伐依頼の報告に来ました」


 「お疲れ様です、マジクさん。後で討伐対象の素材を買い取り窓口の方に提出しておいてください」


 「了解です。あと…何かあったのでしょうか?冒険者ギルドもそうですが、なんかこの都市全体の空気が重たいような気がして…」


 「あれ?マジクさんは…そうでした、コカトリス討伐の為少し離れた狩場に行かれていたんですね」


 「はい。薬の材料としてコカトリスの肝が必要と言う薬師の依頼を受領して、ここから少し離れた生息地である山に行っていました」


 「なるほど。特に隠し立てするようなこともありませんので、冒険者ギルドが現在把握しているすべての情報をお話ししましょう。貴方ほどの冒険者なら私どもが話さなくても簡単に情報を入手できるでしょう。隠し立てするだけ無駄ですからね」


 商業区で奴隷商の商館と、亜人の奴隷を使役していた商店が謎の部隊に襲撃され壊滅的な被害を受けたこと。都市の重要な行政施設が放火され、都市の行政に少なくない被害が出ておりその混乱が当面収まりそうにないこと。そして襲撃の騒ぎを聞きつけ、現場に向かおうとした冒険者の多くが返り討ちにされてしまい、多くの冒険者の命が失われたこと。そのすべてを話してくれた。


 ちなみにドミネイト・スライムを使って行っている情報工作に関する情報は一切なかった。まぁ、冒険者ギルドからすれば、都市の権力闘争などあまり興味が無いのかもしれない。


 「それで…その襲撃者の正体は分かっているのでしょうか?」


 「外装を深くかぶり、生き残った冒険者の中に直接顔を見たという人はいないようです。しかし奴隷商が襲撃され、そこから助けられた奴隷はすべて亜人だったことから、亜人が襲撃者なのでは?という意見が出ていますが、未だ確信的な証拠は見つかっていません」


 その情報が聞けてひとまず安心した。ちなみに同じく収容されていた人間の奴隷も、襲撃者の顔は見ていなかったとのことだ。夜間に襲撃をかけて、視界が多少悪くなるというリスクがありながら獣人一人一人に外装を纏わせたのは間違いではなかった。


 都市の人間からすれば、まずは襲撃者の正体から探さなければならないため捜査は難航を極めるだろう。その間に噂を流し亜人に対する同情を集めることが出来れば、襲撃者が亜人であったことが判明しても亜人に対する市民感情は憎しみよりも同情に傾くかもしれない。その基盤を今のうちに築き上げて置く。


 「逆に亜人だけを助けることで、襲撃者が亜人であると思わせる…その可能性も現在のところは否定しきれませんね。助け出された亜人がいるのなら、その亜人の追跡をしなかったのでしょうか?訓練された亜人ならともかく、捕らわれていた亜人を追跡することはそれほど難しい事とは思えませんが」


 「もちろん、追撃部隊は派遣しました。町の衛兵はもちろん、冒険者ギルドからも派遣しました。ですがどの部隊からも途中で連絡が途絶えてしまって…今も更なる追撃部隊を派遣するか、それとも他の都市に援軍を要請して、援軍が来てから部隊を派遣するのか…ギルド上層部でも話し合いが続いています」


 「そうして手をこまねいている間に逃げきられてしまう事も考えれば…少々まずいですね。とはいえ下手に派遣しても、先程の話からすれば被害が増えるだけでしょうし。ちなみに追撃に出たのはどういった方々なのでしょうか?」


 「最初は金級と銀級の合成パーティーを派遣しました。都市襲撃の犠牲者の中にはミスリス級冒険者もいましたので、わずかな痕跡でも発見できれば即座に撤退するように伝えておいたのですが…残念ながら1人も帰ってくることはありませんでした。その結果を受けてミスリス級の派遣を検討していたのですが…」


 「ですが?」


 「アダマンタイト級冒険者のゼノン・パルドクス様が突然現れ、自分が追撃に出るから足手まといは不要だとおっしゃられて…」


 「なるほど、確かにゼノンさん程の実力者に来ていただければ問題ないでしょうね…って、あれ?でも襲撃者の正体がまだ分からないと…」


 「はい。実はそのゼノン様とも連絡が取れなくなってしまったのです…」


 当然知っていた情報ではあるが、さも今初めて知りましたという表情をする。だんだん演技が上手くなってきている…気がする。



誤字の報告をしていただいた方、ありがとうございます

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