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 休息を挟み、ゼノンの所持品の確認することにした。アダマンタイト級冒険者がどのようなものを持っているのか気になっていたのだ。


 「しかし…いいのか?ゼロ。俺がゼノンの装備していた鎧と剣、更には回復の魔道具までもらってしまって」


 「問題ない。それらの装備は俺が使うより、レオンが装備した方が有効に活用できるだろうからな。遠慮なくもらってくれ」


 確かに、今後いつ手に入れることが出来るか分からないような貴重な魔道具の数々に心残りが無いわけではないが、俺が使うよりレオンが持っていた方が良いと感じたのも事実だ。


 そもそも俺は剣士ではない。人間に擬態している間は剣を使った戦闘に慣れているため、そのような戦い方をしているが、俺本来の戦い方はあくまでスライムの体を生かした奇襲戦法だ。


 つまりは、倒すべき相手と真正面から向かい合ってしまった時点で、俺本来の戦い方ではないと言えるのだ。そういう意味では、俺にはそのような状況にならないようにすることが求めているのであり、高価な装備を身にまとうというのは、本来の戦いをはじめから諦めてしまっていると同義であると考えているからだ。


 ……まぁ、俺は人間の都市に潜入することも多いため、ゼノンの装備していたような、明らかに足がつきそうな高価な装備品をもらっても普段使いできないというのも理由に挙げられるわけだが。


 ちなみに所持していてもあまり目立たないであろう回復の魔道具を譲ったのも、俺が装備しても意味が無いということが分かったからだ。


 あの魔道具は、魔力があれば装備者の傷を癒すことが出来る。これは俺にとって必要が無かった。なぜなら、俺は最初から魔力さえあれば、自身のスライム細胞の数を即座に回復することが出来るからだ。


 痛覚のない俺は人間や獣人のように痛みによって戦いに支障が出るということもないし、失血によって意識が朦朧とすることもない。つまりは俺にとっては、スライムが最初から有している能力と大差が無い能力しか獲得できない魔道具であったということだ。


 売れば多少の金になっただろうが、鎧や剣ほど希少な品ではないが足がつく可能性もある。だったら装備一式そっくりレオンにやることで、彼の好感度を上げることにした方が良いと判断したのだ。


 「さて、最後にこいつの中身を確認するとするか」


 そう言って、ゼノンの腰に巻いていた、マジックバッグの中身を見ることにした。レオンもカリンも興味があるのだろう、身を乗り出してくる。……結構量がある。とりあえず全部外に出して、確認することにした。


 中にあったのは現金や、サルカの森で招集されるときに使ったであろう連絡用の魔道具、あとは一般に流通している野営用の食料品やそのための魔道具と言った感じだった。本音を言えば少し落胆した。アダマンタイト級冒険者といえどもこんなもんか、と。もっと、なんか、こう…見ただけでびっくりするようなものでもあるのかと期待していたが…そう思った矢先、瓶に入った液体を発見した。


 「何か見つけたんですか?それは……ポーション?しかし俺の知っているポーションとは色が違うような…」


 「だろうな。これは只のポーションじゃない…『魔力ポーション』だ。しかし、こいつがこんなものを持っていたとは…」


 「そんなに驚くようなことなのか?『魔力ポーション』というと、名前からして魔力を回復できるんだろうが、回復の魔道具をもつゼノンが所持していてもおかしくは無いんじゃないのか?」


 「所持する方の理由は分かっている。問題なのは、ゼノンがこれを入手することができた方の理由だ。もしかすると、ゼノンはマリアーベ伯爵と繋がりがあったのかもしれないな…」


 レオンの様な純粋な戦士職にはあまりなじみが無いだろうが、この『魔力ポーション』は戦略物資としてかなり重要な品となる。というのも、国同士、貴族同士の戦争においてマジックキャスターが戦局を左右するほどの貴重な人材であるからだ。


 国や貴族同士の戦争は、最終的には歩兵同士のぶつかり合いで決着がつく。そのため相手の歩兵の突撃の勢いを、どのようにして潰すのかが勝敗を分ける大きな鍵となる。その勢いを潰す常套手段として、マジックキャスターの放つ魔法があげられるのだ。


 そのため王侯貴族は優秀なマジックキャスターの確保に躍起になっている。しかし、ただでさえ数の少ないマジックキャスターの、さらに優秀なマジックキャスターなどそう簡単に確保できるものではない。


 優秀なマジックキャスターの数の差を埋める方法の一つに、マジックキャスターの放つことのできる魔法の数を増やすということが考えられる。つまり魔力を回復させることのできる『魔力ポーション』は、貴族にとって是が非でも確保しておきたい戦略物資の一つであるのだ。


 よって、この『魔力ポーション』の売買には王侯貴族により厳しい制限がかけられている。自領で制作された『魔力ポーション』が自分と敵対する貴族に渡りでもしたら、目も当てられない程の損失につながるかもしれないためだ。


 俺がそのことを知っているのは、前世で何度か取り扱ったことがあったからだ。そのときは兵士による厳しい監視のもと、身を削るような思いで取り扱ったんだったか。今思い出しても、身の竦む思いである。


 そんな貴重な物資をゼノンが保有していた…これはゼノンとマリアーベ伯爵と繋がりを示す証拠ではないのだろうかと考えたわけだ。


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