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 戦闘が始まって1時間が経過した。両者共にそれなりに疲労しているようだ、剣速に衰えが見え始める。


 斬撃で俺のスライム細胞を減らすのは効率が悪いとはいえ、ゼノンほどの強者の斬撃ではそれなりに削り取られてしまうようだ。次第にレオンを覆う俺の細胞は減っていき、少しかすった程度の攻撃でもレオンに傷が出来てしまう。


 レオンもフルプレートアーマーを装備していればその程度の攻撃で傷を負うことは無かっただろうが、そんな重いものを装備していれば、ただでさえスピードで劣るゼノンに一方的に攻撃され、反撃する間もなく倒されてしまっていただろう。


 ここまででゼノンに使わせた回復の魔道具の回数は4回。あと1回使えるか使えないかという具合まで魔力を消費させることは出来た。とはいえレオンも手持ちのポーションはすべて使い切ってしまっている。


 最後にポーションを使用してから今のところ致命傷になりえるほどの大きな負傷は無いが、このままいけばこれまでの傷による失血や痛みにより戦いに支障が出てしまうだろう。いずれにせよ戦況は悪いと言わざるを得ない。


 それでも何とか戦うことが出来ていたレオンの強さは流石と言えた。だが、そんな中で限界を迎えようとしていたものがあった。それはレオンの体力でもなければ、俺の魔力でもない。レオンの振るう剣であった。


 ゼノンの持つ剣は切断力を向上させる能力があるらしい。むしろこれまでよく持った方だと言える。それは、実際に戦っていない俺でも分かった事だ、実際に剣を握って戦っているレオンや、俺よりも剣士として遥か高みにいるゼノンはとうの昔に気が付いていただろう。


 「ちっ!諦めの悪い獣人だぜ。だが、まぁ、それもここまでだ。てめぇの持つポーチの盛り具合からすると、どうやらもうポーションは無いみたいだし、剣の方も限界だ。大人しくその首を差し出すってんなら、楽に殺してやるぜ」


 「ふざ…けるな……俺は、最後まで…諦めん!」


 「ふん!俺の慈悲ってものが分からんらしいな。ま、人間に劣る亜人なら仕方ない、か。せいぜい最後まであがいて俺を楽しませてくれ!」


 ゼノンの攻撃に先ほどまでの苛烈さがなくなった。勝負は決まった、ゆっくりと、じわじわとなぶり殺しにしよう、そう思っているのかもしれない。


 レオンもそう感じ取ったのだろう、ゼノンとは逆にこれまで以上に防御を捨て、攻撃に力を入れているように感じる。レオンの生傷が増える。一発逆転を狙っているのかもしれない。そのためか戦闘開始直後ほどの流麗さというものが無くなってしまった。このままでは確実に負けてしまう。なんとか落ち着きを取り戻してもらわねば。


 『おい!落ち着けレオン!そんな動きじゃ、相手の思うつぼだぞ!』


 『そんなことは分かっている。安心しろ、これは演技だ』


 『演技?どうしてそんなことを…』


 『奴の言う通り、俺の剣はもう限界だ。このままだと確実に俺は負ける』


 『だったら、なおさら落ち着いて戦いを進めなきゃだろ』


 『無理、だ。奴に勝つのは、今の俺には不可能だ…仮に援軍が来ても、あいつが相手だと被害が増えるだけだ。だからゼロ、お前が奴を倒してくれ』


 『頼ってくれるのは嬉しいが…お前より弱い俺に、あいつを倒すのは不可能だ』


 『俺が隙を作る……この身を囮としてな』




 「はぁ。ま、こんなもんか。所詮は亜人、何か秘策でもあるかと思ってしばらくの間いたぶっていたが、結局は力押ししかできない劣等種か。そろそろ…終わりにしようか!」


 速い!この戦いが始まって以降、最速の動きだ。最初から全力ではなかったということか。どこまでもこちらを虚仮にしてくれる。躱すことは出来ないし、カウンターを合わせることなど、なおのこと不可能だ。


 何とか奴の剣に己の持つ剣をぶつけ攻撃を防ぐレオン。それでも…ついに限界を迎えてしまったようだ。


 レオンの剣はその中ほどで断ち切られ、ゼノンの振り抜いた剣によって、レオンは胸元から大きく切り裂かれてしまった。


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