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 道中に待機させていた伏兵はすべて撤退させた。ゼノンが来るという情報が入ったのだろう、兵士達や冒険者らの追撃が無くなったからだ。そしてゼノンと戦うことになれば、伏兵は間違いなく返り討ちにあってしまう。


 もちろん、「本命」と戦わせる前に少しでも体力を削っておきたいところではあるが、せっかくここまで死者なく作戦を遂行できたのだ。どうせなら最後までそれを成し遂げたいと思ったからだ。


 そしてゼノンを倒すための「本命」として用意したのが、解放軍最強の男であるレオンだ。


 「まさか俺とお前だけで、ゼノン・パルドクスと戦うことになるとはな」


 『怖気づいたのか?』


 「まさか。だが慎重なお前の事だから、解放軍の幹部とか、エルフなどと協力して戦うものだと思っていた」


 『俺も最初はそうしようと思っていたんだけどな。だがあまりにも多勢に無勢だと、流石のゼノン・パルドクスも撤退してしまうんじゃないかと思ってな。そうなると、次に姿を現すとすれば、間違いなく冒険者や兵士たちと一緒に行動しているだろう。そうなってしまえば、奴を殺すのが余計に難しくなってしまう。奴がこちらを侮った状態にある今こそ、奴を倒す最大のチャンスなんだと思う』


 「1対1なら奴も撤退しないということか。特に自分の強さに誇りを持っている奴なら、なおさら、か。とはいえ、こちらは本当は2人がかりではあるんだがな」


 今の俺はパラサイト・スライムの能力を使ってレオンに寄生した状態にある。本家本元のパラサイト・スライムほど寄生主を強化することは出来ないが、いざとなれば2対1に持ち込むことも出来るし、それ以外にも俺には数々の特殊能力がある。


 それを加味すれば単にパラサイト・スライムを寄生させて戦うよりも、勝率が上がるのは言うまでもない。


 時刻はマリスレイブを襲撃して3日後のお昼時。ゼノンに渡された連絡用の魔道具はかなり高性能だったのか、冒険者がサルカの森に入って数時間もしないうちにゼノンが森から出た事を眷属の1体が確認した。解放軍の連中をさっさと撤退させておいて良かったと心の底から思った。


 恐るべき速さで移動し、その日のうちにマリスレイブに帰還したゼノンは本日の朝方、こちらに向けて出発していたのだ。


 前日まで、危険な森の中で活動していたはずなんだが…すさまじい体力だと思った。


 ここまで俺達に関する情報は人間達には一切渡っていないため手探り状態から俺達の追撃を始めたはずなのだが、こちらの逃走経路を的確に見抜き、確実にこちらに近づいてきている。


 戦士職である奴が基本的には1人で冒険者として活動しているのは、自分1人で何でもできるため仲間が必要なかったのかもしれない。いや、単に性格のせいという可能性もあるが。


 そんなことを考えていると、ついに俺の索敵範囲にまで奴が侵攻してきた。もうしばらくしない内に、奴もこちらの気配を感じる取ることが出来るだろう。


 『いよいよ、だな。心の準部は出来ているな』


 「無論だ。だが、いざとなればお前は俺の事を置いて撤退してくれ。お前が逃げるだけの時間は何とか稼いで見せよう」


 『…随分と弱音を吐くんだな。しかし、何でいきなりそんなこと言うんだ?』


 「お前には果たしたい復讐があるのだろ?ならば、俺のことはいいからそれを優先しろと言っているんだ。お前の協力のおかげで同胞を解放できた時点で、俺の目的を達成することができた。ならば次はお前が目的を達成させる番だと言っている」


 『………』


 「それにゼノンを倒すとき、実際に奴と戦った経験が役立つかもしれないからな。俺1人の犠牲で次の戦いが優位に運べるなら、それを優先させるべきだ」


 『…ふぅ、そうだな。いざとなれば、そうさせてもらおう。ただ、俺は一度決めたことは最後までやり通さないと気が済まない質なんだ。俺の復讐を、徹底的にやり通すと決めたようにな。そして俺は、この作戦では仲間からの死者を出さないと決めて挑んだ。そのための準備をしてきたつもりだ。そのことはお前も理解しておいてくれ』


 「そうか…すまない。少し弱気になっていたようだ。そうだな、せっかくここまで被害が無かったんだ。どうせなら最後までそうありたいものだな」


 そんな何気ない会話をしていると、前方の草木が揺れ1つの影が現れた。直接相対するのは初めてだが間違いない。こいつがゼノン・パルドクスだ。


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