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 城門の近くまで行くと、辺りには錬金油が大量に撒かれており撤退の準備は終わっているようだった。すでに獣人達の姿は無い。俺1人ならどのような方法でも逃げることが出来るため、先に逃げるようにあらかじめ通達していたためだ。


 俺も城門をくぐり抜け、撒かれた錬金油にむかってファイヤーボールを放つ。一気に燃え広がる炎。これで、しばらくの間はこの門を使うことは出来ないだろう。いや、都市内部の混乱の大きさからすれば、どのみち即座に追跡者を派遣することは出来ないだろうが、油断はしたくない。


 しばらく森の中を進むと、いくつかの魔力を感知する。人間のものではない…獣人達の魔力反応だ。解放した奴隷たちについていてやれと言っておいたんだが、俺のところに来てしまったようだ。俺の身を案じたのだろう、律儀な連中が多いと思った。


 「わざわざ出迎えご苦労だな。俺の心配なんかせずに、仲間の心配でもしていればいいものを。解放された獣人の中に、旧友を温めたい相手ぐらいいるんじゃないのか?」


 「仲間か…それを言うなら、お前も俺達の仲間だ。それを心配するのがおかしなことか?」


 「いや…うん、そうだな。これほどのことを共にやり遂げたんだからな。とはいえ、作戦はまだ継続中だ。解放した奴隷すべてがエルフの里に到着するまでは、油断しない方が良いだろう」


 しばらくの間は追手は無いだろうから、話しやすいように歩きながら情報交換を行うことにする。


 今回の作戦において解放軍側の死者はゼロ。負傷者はそれなりの数が出てしまったそうだが、エルフから渡されたポーションで即座に回復できたためだそうだ。


 話を聞けば俺が人の都市で購入したポーションよりも、エルフから渡されたポーションの方が性能が良いようだった。


 俺が作ったポーションでないので性能が劣ると言われて腹を立てるということは無いが、多少言いにくそうにしていた。制作方法が違うのか、それとも材料からして違うのか。暇な時間があれば調べてみるのもいいかもしれない。


 「そういや、レオンとロルフはどうした?先に撤退しているのか?」


 「ロルフさんは解放された中に知り合いがいるということで、そちらの方に向かっています。レオンさんは人間からの追跡に備えて、元気な者を中心にした新たな部隊編成の途中です。両御仁もあまりゼロさんのことを心配されていませんでしたね。貴方がこの程度のことでやられるはずが無い、と」


 「それは、信用してくれているってことでいいのか?いいんだろうな。…おっと、スマン念話が入ったようだ。……なるほど、了解した。他の眷属にもそう伝えてくれ」


 「どうかしましたか?」


 「レオンの、人間の追撃者に対する部隊編成が終わったようだ。元々、作戦開始前から大まかには決めていたからな、それほど時間がかからなかったようだ。ポーションのおかげで元負傷者も問題なく動けるようだし、そちらに人員をとられるという事もない。お前たちも事前に打ち合わせしておいた場所に身を潜めておいてくれ。後で手の空いたパラサイト・スライムが援軍にくるそうだ」


 「了解しました。その…激戦の後でお疲れだとは思いますが、頑張ってください」


 「ああ、お前たちもな。言うまでもないと思うが、お前たちの誰か一人でも欠けるようなことがあれば、この作戦は完遂したことにはならない。必ず生きて戻って来い」


 獣人達と別れ、当初の予定通りの俺が受け持つ場所に移動を開始する。正直これほどの被害を出されれば、人間も追撃する余裕はないのでは?という意見もあったが、俺はその意見を一蹴した。


 何せ今回の作戦で、俺達は貴族の面目を潰したのだ。そんなことをされて黙っていられる貴族なんて見たことが無い。本音を言えば、獣人達の意見ももっともだと理解できる。追手に人員を割くぐらいなら復興を優先した方が良いんじゃないか、と。


 俺もこの意見には大いに賛成だ。だが、実利よりも面目を優先させてしまうのが、俺の知る貴族と言う生き物なのだ。


 そして追手を差し向けられてしまえば、確実に俺達の逃走方向はバレてしまうだろう。解放された大量の獣人の移動の痕跡を、すべてを消すのは俺達だけでは不可能だからだ。


 ならば痕跡を消すのを最初から諦めて、その時間を疲労回復にあて、来るであろう追手を待ち伏せて倒してしまった方が効率がいいと俺が提案し、それが了承される形になったのだ。


 追撃戦も激戦が予想される。当然追手側も道中は警戒するだろうから、サーチ・スライムを使っての不意打ちも上手くいかないかもしれない。それでもこちらには、事前に入手しておいた冒険者達の情報と地理の優位性がある。それを使えば今回も有利に戦いを進めることが出来るだろう。


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