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 時間の経過とともに、次第に冒険者達が集まってくる。当初は俺とレオンが物陰を利用しながらヒットアンドウェイで交互に攻撃を仕掛けることで、標的を絞らせない方法で少しずつではあるが確実に数を減らしていった。


 だが、冒険者の数が増えたことで当然警戒できる視野も広くなり、こちらが攻撃を仕掛ける前に察知され防がれてしまうようになった。


 仕方ない。作戦の2段階目として、混戦に持ち込むことにする。


 多少の負傷を覚悟で冒険者達の塊の中に突っ込み、適度にかき乱す。このとき、光源を持っている奴を集中して狙うのがミソだ。


 ただでさえ夜目を持たない人間相手に混戦に持ちこむことが出来れば、焦りからか同士討ちに発展するかもしれないという期待もある。


 「おい、誰だ、今俺に攻撃したのは!」


 「お前こそ誰だ!痛っ!やめろ、バカかお前は!俺は冒険者だぞ!」


 「いいからお前ら落ち着け!って俺に攻撃するんじゃない!どう考えても俺は味方だろ!おい、誰かこいつを止めろ!絶対こいつが襲撃者だ!」


 と、様々な声色を出して場をさらに混乱させる。スライム細胞を駆使すれば、色々な人間の声色を発声することも可能になるのだ。まぁ、じっくり聞けば多少演技がかっているように聞こえるだろうが、この場にいる冒険者にそれを察知できるほどの余裕はないだろう。


 レオンにはそのまま、混乱により孤立してしまった冒険者を端から順に狩っていってもらい、俺は適当な冒険者の姿に擬態して、仲間を助けるふりをして堂々と冒険者に近づき、暗がりに紛れて少しずつ冒険者を殺していく。


 十分時間を稼げたと思うタイミングで、眷属からすべての亜人を解放し城門から抜け出ることが出来たと念話が入る。


 それを合図にあらかじめ撤退の合図として決めていた、ファイヤーボールを放つ。詠唱の時間が十分に取れなかったため威力は大したことは無く、直撃した冒険者ですら殺す事は出来なかった。しかし、これはあくまでも合図を送るためのものだ。着弾と同時に辺りに爆煙が広がる。


 「おい!誰だ、こんな都市の真ん中で魔法を放つ大馬鹿野郎は!」


 「俺は見たぞ!そこの白いローブを纏ったマジックキャスターだ!」


 「はぁ?何で俺が?俺がそんなことするわけないだろ!そういうお前が放ったんじゃないのか!?」


 といった演技を挟み、物陰から俺達の支援に徹してもらったロルフに煙幕を発生させる魔道具を投げ込んでもらう。煙が一瞬にして広がったことを確認。ただでさえ暗く視界が悪い中で、煙が立ち込めたことで更なる混乱が巻き起こる。


 「おい、お前ら、自分勝手に動くんじゃない。今度勝手に動くやつがいたら、そいつが襲撃者に違いない。そんな奴がいたら、俺がこの手でたたっ切…ごっ…ふ…」


 「お、おい!、お前ら!今すぐここを離れるんだ!こんな煙の中にいたら、全員碌な抵抗が出来ないまま殺されてしまうぞ!散り散りになって逃げれば、襲撃者も的を絞れないはずだ!」


 俺の言葉を聞いた冒険者の幾人かがこの場を離れた気配を感じた。流石に全員が全員俺の言葉に従ったわけではないが、それでも今この場を離れても、それが襲撃者なのか冒険者なのか、他の冒険者達に知る術はないだろう。


 そろそろ俺も撤退することにしよう。レオンは俺がファイヤーボールを放った瞬間にそれを合図に撤退してもらったし、ロルフも俺が渡した煙幕をすべて消費したと同時に物陰を利用して撤退したはずだ。


 俺が最後まで残った理由はもちろん、仮に今の俺の姿が冒険者達に見られても人間に擬態した姿であるため即座に俺が襲撃者であるとは判断できないという思惑からだ。獣人であるレオンとロルフはそうはいかない。


 人間の都市にいる謎の獣人。それだけでも十分怪しいのに、この都市では亜人の奴隷を取引している。そのことを踏まえれば、チラリとでもその姿を見られてしまえば、現在自分たちを襲撃している犯人がこの獣人であると判断するのは当然な流れだろう。


 もちろん、レオン達が簡単にやられることは無いが、時間を稼がれ追加の冒険者が来てしまえばいずれは戦局が悪くなるだろうし、レオンが倒されてしまえば亜人を解放できたとしても、大局的にはこちらの負けになってしまうのだ。


 まぁ、いずれは今回の襲撃者が獣人であることは冒険者達も知ることにはなるかもしれないが、今はとりあえずこの瞬間を乗り切ることが先決だ。


 俺も混乱に乗じて冒険者の一団から離れ物陰に身を隠す。しばらくの間彼らの様子を眺めていたが、冒険者同士疑心暗鬼になっているようで、積極的に動く気配がみられなかった。そのことを確認した後、俺も建物と建物のすき間を利用しながら撤退することにした。


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