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 我々第1部隊が本格的な戦闘に突入してから30分ほどが経った。突然燃え広がった炎に気を取られた兵士たちを倒すのはそう難しいことではなく、想定よりもはるかに速いスピードでその数を減らすことに成功している。


 とは言えこれもボスが情報屋から買い取った情報で、緊急時における兵士たちの集合地点や、指揮をとる兵士長などの情報をあらかじめ入手しておいたおかげでもある。兵士長などを最優先で殺すことで、緊急時における指揮官の不在という状況もそれに拍車をかけているに違いない。


 『こちらゼロ、戦況を報告してくれ』


 おっと、ボスから念話が入った。どうやらあちらの方ではまだ、戦闘が起こっていないのだろう。声に余裕を感じる。


 『俺を通して、ご自身の目で確認すればいいじゃないですか。いや、正確に言うなら我々には目という器官は無いですけど…感覚を共有するだけで簡単に分かりますよね?』


 『まぁまぁ、こういったのはノリが大切じゃん?それに感覚を共有すると、意識を本体に戻すのに少しタイムラグが発生するんだよ。ロルフがいるから不意打ちされることはないだろうけど、警戒は必要だろ?』


 相変わらず用心深いことだ。いや、だからこそこれだけのことを実行しておきながら、事前に万全の準備をすることで今のところ被害なく事を進めることが出来ているのだ。むしろその用心深さは頼もしいと言える。まぁ、元々は俺だったのだから自画自賛…になるのか、ならないのか。


 『こちらは今のところ順調です。やはり指揮官を優先的に狙うことで、人間側の連携をうまく崩すことに成功しているのが大きいかと。いくら一般の兵士が弱いと言えども、数で押されてしまえば数で劣るこちらはいずれジリ貧になってしまいますからね』


 『うんうん、苦労して情報を集めた甲斐があったよ。ま、緊急時には連絡してくれ。援護に向かわせるから』


 『了解です』


 念話が終了した。何かしら感じたものがあったのか俺が寄生している獣人の、虎の獣人であるガラルが俺に話しかけてきた。


 「どうした、パラ・スラ。何かあったのか?」


 『いや、だからパラ・スラって呼び方は…まぁいいか。ボスから念話があったんだよ。作戦の進捗状況はどうだ?ってな。だから、問題なしって答えといた』


 「当然だな。これだけお膳立てされてんだ、負けるほうが難しいというものだ!」


 と、まぁ、結構豪胆な性格であるガラルはそう言うだけあって、多分肉弾戦だけで言えばボスに匹敵するだけの戦闘力は持っている。多少頭が弱いためボスが搦手や魔法を使ってしまえば、完封されてしまうだろうが…


 しかし、戦闘時における指揮能力は意外にも高く、この第1部隊の部隊長を任されている。今もわずかに崩壊しそうになった戦線をうまくまとめあげ、自身が遊撃として前線に突入し、敵を蹴散らして被害を最小限に抑えて見せた。


 まぁ、前線に出て戦うなど部隊長がすることではないような気もするが、この場では彼が1番強いのだから、被害を抑えるという意味ではあながち間違った判断とは言い切れないだろう。


 混戦にもなれば、俺も寄生主の死角をカバーするなどして気を張り詰める必要もあるが、今のところそうしなければならないほど追い詰められた状況でもない。寄生主を強化するだけなら、俺達は無意識下でもその能力を行使することができるのだから。


 戦線が膠着状態にある今、有利なのはこちらの方だ。


 時間が経てばたつほど当然火は燃え広がり、それを見た兵士たちの焦りは確実に募っていく。その焦りは当然前線で戦う兵士達の士気にもつながり、こちらがより有利に戦いを進めることが出来る。


 そもそも俺達第1部隊の目的は兵士たちを殺すことではなく、あくまで奴隷を解放するための時間を稼ぐことにある。


 そう考えると、この場での戦力が少し過剰すぎるような気もしないでもない。このままいけばこの場にいる敵兵を全員殺し尽くすことも出来そうだからな。ガラルの許可をとって、ボスに「戦力に余裕アリ、援護に行けます」と念話を送ることにした。


 『どうした、ガラル。少し不満そうだな』


 「敵が弱いのだ、仕方あるまい。俺はもう少し前線で戦う機会が欲しかった。かといって、部隊長である俺が他の部隊の援護に向かうわけにもいかんしな…」


 ここで戦うことがあまり無くても、奴隷たちをエルフの里まで護送する途中、人間達からの追手があるに違いない。その時戦えばいいと言ってやったら、ちょっとだけ元気が出たようだった。


 どちらかと言えば、俺はこのまま何もない方が良いんだけどな…そんなことを思いながら戦線に意識を向けた。


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