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 「我が勇敢なる解放軍戦士達よ!ついに我々は……」


 レオンが解放軍のメンバーを前に士気向上のための演説をしている。人の上に立つことに慣れているのか、こういった場面もそつなくこなす様は流石と言えるだろう。


 「……それでは作戦を発表する。特別顧問のゼロ!よろしく頼む」


 「はい、紹介にあずかりましたゼロです。よろしくお願いします。さて、今回の作戦ですが…」


 正直、いちいち紹介されなくても解放軍のメンバーとは何らかの形で関わってきているので皆俺のことを知っているし、当然逆もまた然りだ。だが、こういったものは形式が重要だ。野暮な突っ込みを入れて話の腰を折るという愚かなことはしない。


 当然作戦の内容も事前に通知済みであり、各々自分の役割は頭の中に叩き込んでこの場所に来ているはずだ。そうでなくても各班のリーダーにはパラサイト・スライムを寄生させており、いざとなればそちらから作戦の内容をいつでも確認できているようにもなっている。


 それにしても各班の主要メンバーに、パラサイト・スライムを寄生させることが出来るだけの数を用意するのは非常に骨が折れた。というのも、パラサイト・スライムのほとんどはジルに同行させてしまったからだ。


 そのため準備期間の間にエルフや手の空いている獣人達に協力してもらい、魔物を狩り眷属達の位階上昇に協力してもらったのだ。その結果、数カ月前とは比べ物にならない数の眷属が進化している。


 はっきり言って、現段階でも奴隷亜人解放作戦に協力しただけの価値があると言えるぐらいの見返りがあった。ならば今度はこちらがその恩に報いるだけの結果を出さなければ、申し訳ないというものだ。


 「……と言った感じに作戦を遂行してもらおうと思います。そして最も重要なのは、今回の作戦において、民間人にはかすり傷一つ負わせてはならないということを、しっかりと頭に叩き込んでおいてください」


 今回の作戦において最も重要なのは、マリスレイブを襲撃した後の事後処理にあると思う。当然その前の段階である亜人の解放も重要ではあるが、今回の件で獣人と人間達は敵対することになるかもしれないが、基本的にはこの都市の人間と獣人は殺し合いをするほど仲が悪いというわけではないということにある。


 つまり作戦の落としどころとして、あくまでも人間が罪のない獣人を奴隷とするために連れ去ったことに対する報復であると、人間達に強く理解させなくてはならないのだ。そうしなければ、襲撃者の正体が獣人であるとバレた時に関係のない、他の地域に住む獣人の迷惑になりかねないからだ。


 その為には、必要のない犠牲は決して出してはならない。


 仮に民間人を傷つけるようなことになれば、マリスレイブに住まう住民の市民感情を「獣人は野蛮な種族であり、隷属されても仕方ない存在」と思われてしまうかもしれないのだ。


 獣人の解放軍は統率が取れており、民間人を決して傷つけるようなことは無かった。そんな獣人がなぜ危険を犯してまで人間の住まう都市を襲撃したのか。それは人間が亜人に対して悪いことをしたからという結末にしなければならない。


 その為の布石は打ってある。俺達が襲撃した翌日に『支配』した奴隷商の職員達に、商会内でいかに獣人の扱いが悪かったのかを喧伝させ、獣人に対する同情の声を大きくさせる予定だ。


 当然そんなことですべての市民が納得するはずもないが、わずかにでも「仕方ない」と思わせることが出来ればこちらの作戦が成功したことになる。


 あくまで怖いのは「すべての市民が一丸となって獣人に対する悪意を向ける」ことであるからだ。


 まぁ、市民感情とは別に都市を襲撃されれば領主は間違いなく俺達に追手を差し向けることになるだろうが、俺達が破壊する予定である重要施設の復興などにも予算を取られることを考えれば、そう長い間兵士たちを派遣し続けるということも出来ないだろう。


 その間逃げ切り、うやむやになってしまえばこちらの勝利だ。冒険者を雇って派遣されるかもしれないが、今回の作戦でいくつもの上位の冒険者パーティーを無力化する予定であり、その算段はすでについている。


 その為に人間の情報屋などに少なくない額のお金を払って、有名な冒険者の弱点などを調べ上げたのだ。


 これは身バレすると面倒な獣人やエルフにはさせることのできない調査方法だったので、俺1人でやった。警戒されないため別々の情報屋を使っての情報収集はかなり大変な作業であったが、労力に見合った成果は出たと思う。


 それはマリスレイブに拠点を構える、金級以上の全冒険者パーティーのほぼすべの情報を集めることのできたという実績が証拠だ。


 やれることはすべてやった気はするが、不安というものが残るというのが本音ではある。


 これ以上考えれも仕方のないことか。後は出たとこ勝負だ、全身全霊で取り組もう。


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