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 「拉致するって話だったけど、まさか全員を即座に拉致してくるとは思わなかったよ」


 「む…そうか?暗部の連中も最近は情報収集ばかりさせていたから、こういった大仕事は久々で、つい気合を入れ過ぎたのかもしれん。まぁ、問題は無いだろ」


 そう言うレオン達獣人の足元には簀巻きにされた人間達が雑に転がされていた。ちなみにここは、城壁の内と外で穴を繋げている廃屋にある部屋の1室だ。獣人たちのたまり場の1つであり、密かに壁などを改造して音が外に漏れにくい構造にしてある。


 犯行は俺が所用を思い出し、レオン達から離れていたほんの数時間の間に行われていた。レオンが自慢するだけあって獣人達の隠密の能力はかなり高いことが予想出来ていたが、まさかこんなに早く全員を拉致してくるとは思ってもいなかった。


 とは言え不都合があるわけでもない。『支配』した人間が、商会で準備をする時間を多く確保できたと思えばむしろ喜ばしい事であるともいえる。


 しばらくの間雑談をしながら待っていると、ドミネイト・スライムである4番から、拉致した10人全員の支配が完了したと伝えられる。


 「お疲れ。今更なんだけどさ、支配した感覚ってどういった感じなんだ?」


 「気になるんだったら、自分で試してみたらどうっスか?俺の体を自切するんで、『同化』したらいいんじゃないっスか?」


 「そう言われりゃ、そうだな。って、ここにいる奴らはすでにお前が支配したから能力が使えないだろ」


 「いや、こちらの手違いで、1人多く拉致してきてしまった人間を隣の部屋に放置している。こいつはギャンブルで作った借金に苦しんでいるようでな、いつ姿を消してもおかしくないと周りから思われているほどのダメ人間だ。そのまま殺すのは勿体ないし、密かに城壁の外に連れ出して尋問の練習をするつもりだったが、そいつを使って能力の検証をすればいいだろう」


 「おおっ!そいつはありがたい。んじゃ、悪いが4番、お前の体の一部を俺にくれ」


 4番が自切した体の1部を『同化』する。これまでいくつかの眷属の能力の手に入れて多少慣れているのか、新しく手に入れた能力でもある程度ではあるが使用することができる。


 早速隣の部屋から拉致してきた人間を連れて来て、『支配』の能力を行使する。


 すると眷属とは違う、パスの様なものが繋がった感じがした。こちらから干渉することは出来るが、支配された側からは干渉することのできない、一方通行の様な感覚だ。


 初めて使った能力ではあるが、問題なく支配できたのは俺とこの人間との戦闘力の差があり過ぎるおかげかもしれないが、まぁ、良く分からないというのが本音だ。その辺りの事も、今後作戦に影響を及ぼさない範囲で検証していこうと思う。


 『支配』した人間を動かしてみる。例の薬を使われているわけではないようで、簡単に起こすことは出来たが反応が鈍い気がする。これは単にこの人間の身体能力が高くないからだろう。現に体には余分な脂肪が大量に纏わりついており、標準体型からかけ離れた体つきをしている。こいつを拉致してくるのは大変だっただろう。


 情報を手に入れるためパスを通じて記憶を探る。が、あまり上手くいかない。モヤがかかっているような感じだ。この辺りは俺の習熟度の低さが原因だろう。しばらくはこいつの体を使って、能力の習熟に勤めようと思う。


 「ふぅ、こんな感じか。大体分かったような気がする…で、この後こいつはどうすればいいんだ?」


 「とりあえず情報を引き出したら、後は『完全自立型形態』にすればいいっスよ。って、この言葉は俺が勝手に作った言葉なんで何を言っているのか分からないっスよね。口で説明するのがちょっと難しいし…俺が試しにやってみるんで、感覚を俺に同調して下さい。それで伝わればいいんスけど…」


 ……多少手古摺ったが何とか俺も行使することが出来た。この形態は『支配』した人間を大まかな行動方針をこちらで決めれば、後はそれに従って「支配した人間の意志」で活動するようになる。


 ちなみにこの形態にある人間はこちらにとって都合の悪い行動はしないようになっているが、こちらの行動方針に従って犯罪を犯し衛兵に捕まった場合、マジックキャスターの魔法によっては本人の意志とは関係なく情報を引き出される可能性もある。つまり『支配』したとはいえ、こちらに関する記憶は一切ない方が望ましいということだ。


 そのため対象が起きている相手に『支配』を使えば、こちらの姿を見ているかもしれないので、『支配』された人間の記憶を書き換えこちらに関する情報を消去する必要もある。しかし、そのための消費魔力が結構大きいらしいのであまり使用した良くないというのが本音のようだ。


 つまり『支配』して活動させる予定の人間は、気を失わせたまま『支配』するのが一番望ましいらしいということだ。


 無事『支配』の完了した人間から情報を抜き取り、拉致してきた位置に戻すことになった。今回手に入れた情報に目新しいものは無かったが、奴隷商の商会内部でこちらの手駒が出来たということは、俺達にとって大きな戦力になることだろう。


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