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 「おかえりなさい。それで、冒険者ギルドの様子はどうだった?」


 ギルドから正式に依頼を受理されてから数日後、本日はマジクの姿で、ギルドの様子を見に行った。いつもより活気がないと感じたのは、冒険者の数が若干ではあるが減ったことに起因しているのかもしれない。


 「思った通り、『麒麟』の鱗が高く売れることを聞いたいくつかの上位のパーティーが、サルカの森に向かったらしい。表向きの、他の依頼を受領してな。おかげであっち方面の依頼はほとんど出払っていた。そういえば、ゼノンが依頼でこの都市を離れたことを密かに喜んでいる冒険者も多かったな。どんだけ他の冒険者から嫌われてんだろ…」


 「噂では下位の冒険者に対しては普段からかなり横暴だったらしいけど……貴方は直接会ったことは無いの?」


 「彼がギルドに顔を出す時間と、常にずらすよう意識していたからな。大丈夫だとは思うけど、何らかの能力で俺の正体を暴くことが出来ないとも言い切れないし…用心のし過ぎだとは思うけど、バレた時のデメリットが大きすぎるから、わざわざ試してみようとも思わん」


 「それもそうよね。それで、目下最大の難敵になると思われたゼノンを、無事この都市から追い出すことは出来たようだけど、いよいよ行動を開始するつもりなの?」


 「いや、あともう1個、やっておきたいことがある。その為に準備を進めてきたんだが、最近になってようやくその努力が実を結んだようなんだ。その成果をこの目で確かめに行く予定だったんだが…ついてくるか?」


 「そうね。私の仕事はほとんど終わったし、そうさせてもらおうかしら」





 辺りは暗くなり始め城門はすでに閉じられてしまっているので、開通した穴を通って城壁の外へと出る。しばらく険しい道を進むと、人の寄り付かないような場所に、みすぼらしい掘っ立て小屋が建っている。中に入ると気を失って拘束されている商人と思われる格好をした人間と、レオンとロルフを含めた幾人かの獣人がいた。


 「時間通りだな。お前と一緒にいるそのエルフは?」


 「そういえば、レオンは初対面だったか。彼女はエリーと言って、エルフの警備隊の一員だ。腕は立つが、少しばかり向こう見ずなところもあってな。そのせいで色々と面倒を見たり、見られたり…。まぁ、彼女の裏表のない性格には精神的に助けられてるよ」


 「…人に紹介するときに、そういった紹介の仕方は無いんじゃない?コホン。獅子の獣人と言うことは、貴方がレオンね。そこにいるロルフからも話は聞いているわ。よろしく頼むわ」


 「ああ、こちらこそよろしく頼む。ロルフが君に、私のことをどう伝えたのかは気にはなるが…それで、ゼロ。今回俺たちを集めた理由は何なんだ?苦しめても心の痛まない、戦闘力のない悪人を連れて来てくれと言うことだったんだが」


 「ちょっとした実験さ」


 そういってここに来る間に回収した1体のスライムを皆に見せつけるように差し出す。エリーは俺の正体を知っているので、スライムを全くの弱者と判断してはいない様だが、レオンを含めた獣人達は貸し出したパラサイト・スライム見た後の現状においても、どこかスライムに対する侮ったような目線を向けてくる。


 少しだけ悔しい気持ちも当然あるが、まぁいい。こいつの能力を伝えてびっくりさせてやる。


 「こいつはドミネイト・スライムといって対象の精神を操る能力を持っているんだ。ただこいつ自体の強さは大したことが無いから、周りのサポートが必須ではあるんだが」


 そう伝えるとレオン達は驚いたような態度は見せたが、こちらを警戒するような動きは見せなかった。正直意外だった。


 「あまり…警戒とかしないんだな。もっと、こう、「俺達を精神支配するつもりか!」とか言われるもんだと思っていたんだけど…」


 「くくっ、用心深いお前にそのつもりがあるなら、わざわざ俺達にその能力を明かすことは無いだろ?仮にその意思があったとしても、その能力を明かすときは、すでに能力で俺達を支配した後になるだろうしな。つまり、今の俺達が精神支配されていないということは、お前にそのつもりが無いということだ」


 「私も同感だわ。それに貴方、人間に対しては割と容赦ないけど、私たち亜人種に対しては結構寛容と言うか、同族意識のようなものを持っているというか…少なくとも単に利用して使い捨ててやる!って感じはしないのよね」


 「なんか…思っていた展開と違うが…まぁいいか。これからこいつの能力を使って、そこにいる人間を精神支配の実験をするつもりだ。ここにいるメンバーは亜人救出作戦の主要なメンバーであるから、こいつの能力を知ったうえでどう作戦に役立てていくかを話し合いたいと思う」


 正直に言うと、ちょっと嬉しかった。エリーたちが俺を疑わなかったことが。彼らの期待を裏切らないようにしようと、固く心に誓った。


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