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 数日後、いつものマジクの形態に擬態して冒険者ギルドに行き受領した依頼の報告に向かう。ギルドの中に入ると顔見知りの冒険者が幾人か居り、軽くあいさつを交わす。


 彼らにとって俺と言う存在は「普段はソロで活動する変わり者だが、非常に礼儀正しく親しみやすい性格」と言った感じだろう。このギルドに来て以降対人関係には気を配っていたから、少なくともギルドの関係者に嫌われているという事は無いはずだ。


 「サルカの森での七色草の採取の依頼、無事完了しました。これが七色草です。あと、道中ハウリングベアに遭遇し、これを討伐。後で素材の買取をお願いします」


 「はい、お疲れさまでした。相変わらすお仕事がお早いですね、こちらとしても大変助かっています」


 「ものぐさな性格なだけですよ。仕事の様な面倒なことはさっさと終わらせて、後は宿でのんびりと過ごしたいと常々思っているだけですから」


 「それでもこちらとしては非常に助かっていることは事実です。七色草はこの辺りですとサルカの森でしか自生していませんからね。サルカの森まですこし距離が離れている割に報酬の額が少ないですから、上位の冒険者のパーティーですとそれほど美味しい依頼というわけでもないですから」


 「その点俺はソロで報酬を独り占めできますから、そこまで嫌な依頼というわけではありませんからね。ま、適材適所ということで」


 「そう言って頂けると、こちらも助かります」


 「そこはお互い様でしょう。…っと、そういえば、ちょっと気になったことがありまして。これを見てもらえますか?多分、魔物の鱗だと思うんですが…」


 そう言って『麒麟』の鱗を取り出して見せる。当然彼女はこれが何か知っているはずだ。数日前、俺(フィリップ形態)が鱗を見せた受付嬢と同じ受付嬢の列に並んだのだから。


 「……!これを一体どこで見つけられたのですか?」


 「サルカの森ですよ。大きい樹の幹に、突き刺さっていました。四足獣なんかが、体がかゆい時なんかに岩や木に体をこすりつけるって聞いたことがありましてね。もしかしたらそうしたときに刺さったものなんじゃないかと思ったんですが、これが刺さっていたのが俺の背よりも少し高い位置だったんです。だとすると、この鱗の持ち主は相当大きい魔物なんじゃないかと思いましてね。これは一応報告しておかなければ、と」


 「分かりました。申し訳ありませんが、このあと少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか、上のものを呼んできますので」


 そう言って奥の方に走っていく彼女。数日前も似たような景色を見たなと思いながら待っていると、やはりどこかで見たような、急いだ様子でラバナスがやってきた。


 「お待たせして申し訳ないマジク君。この鱗について、もう少し詳しく話を聞いてもいいだろうか」


 「別に構いませんが、お話できるほどの事は無いと思いますよ。先ほど彼女に言った内容がほとんどすべてですし」


 「何でもいいのです。例えば近くで大きな魔物の足跡を見つけたとか、大きな魔物に齧られたような跡のある動物を見かけたとか」


 「ああ、そういったものは一切ありませんでした。第一そんなものを見かけていたら最初に報告させてもらっていますよ」


 俺は余計なことは言わない。あくまで『麒麟』の鱗をサルカの森で見つけただけ、そういうスタンスで通すつもりだ。そうすれば仮にこの作戦が失敗してしまったときでも、余計な勘繰りを避けることができる。


 「先ほどからやけにこの鱗の事を聞いてきますが、この鱗に関して何か思うところでもあるんですか?」


 「ああ、そうなんだ。数日前、ある男がこれと同じものをギルドに持ち込んだことが始まりでな…」


 そう言って聞かされた内容は、俺が経験したやりとりをそっくりそのまま伝えてくれた。情報が不確実であるので、内容を多少はぐらかすと思っていたんだがなぁ。まぁ白昼堂々とギルドでやり取りをしたんだ。仮に自分が情報を伏せたとしても、いくらでも本当の内容を知る方法はあるので、隠す必要は無いと判断したのだろう。


 「なるほど、そんなことがあったんですね。それで、ギルドは今後どういった方針をとる予定なんですか」


 ここからが重要だ。俺が疑われることなく、何とかゼノン・パルドクスをサルカの森に派遣する方向に誘導したい。


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