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 「もういいぞ。入ってきてくれ」


 廃屋の中にいたエリーから声がかけられる。ようやく説得し終えたようだ。ロルフとの他愛のない会話を中断し廃屋の中に入ることにした。


 中にはエリーではないエルフがいる。彼がルークか。不愛想ではあるが、彼の人となりは里である程度聞いていたからか少しだけ親近感がわいてくる。


 「初めましてルークさん。俺はゼロと言います。貴方の事はカールさんからよく聞いていますよ。エルフの警備隊でもかなりの腕利きだとか。今後ともご協力のほどお願いします」


 「…カールから?ちなみにあいつ、俺の事なんて言っていたんだ?」


 「不愛想だが信頼できる、仲間思いのいいやつだ、と」


 「…チッ。あのおしゃべりが。まぁいい。お前たちにも策はあるんだろうが、俺達は俺達で動かせてもらう。問題は無いな?」


 「勿論です。情報を頂ければこちらでもタイミングを合わせるように動きますので。ただタイミングを合わせると言っても限界はありますので、これから来るであろう獣人達とも情報交換は密にしていただけると助かります。それと…ひとつ気になっていることがあるんですが、いいですか?」


 「何だ?言ってみろ」


 「ルークさん達はどうやってこの都市の内部に侵入したんですか?俺がエリーを侵入させたやり方は当然できないでしょうし、城壁を超えるにしても簡単にはいかないのでは?」


 「何だ、そんな事か。それなら俺に聞かなくてもエリーに聞けばよかったものを。まぁ、いい。俺達警備部隊の一部は『不可視化』という魔法が使えるんだ。諜報活動にもってこいの魔法だからな。これを使って城壁を乗り越えてやったんだ」


 「なるほど、そんな魔法があったんですね。流石にこの都市にある高い城壁を、兵士に見つかることなく登りきるのは難しいと思っていましたので。疑問が解決しました、ありがとうございます。ちなみにこの魔法は使用者以外の姿を隠すことも出来るのですか」


 「無理だな。ただ、使用者と触れた状態であるなら消すことも出来るが、使用者と離れた瞬間その効力は失う」


 「分かりました。やはり魔法と言えど万能の力ではないという事ですか。残念です」


 「無い物はあきらめろ。ある物だけで最上の結果を出すことだけ考えろ」


 「御教授、ありがとうございます」


 「……ずいぶんと謙虚なんだな。エリーから聞いた話では魔物を率いて人間の町を襲撃したりと、自分の力を過信した危うい奴だと思い危惧していたんだが」


 「自分が大胆な行動に出るときは事前の調査をしっかりしたうえで、問題が無いと判断したときに限ります。慎重になり過ぎてチャンスを逃してしまったこともありますが」


 「自分の力を過信するよりは、はるかにいい。ローゼリア様がお前を認めたのもその慎重な性格が気に入ったのかもしれないな」


 その後、穴を振り進める場所の下見を済ませて宿に帰ることにした。今回初めてルークに会って話をしたが感触は悪くなかったと思う。


 そして数日後。エリーの時と同じように首輪を装着してもらうことで、穴掘りが得意な獣人を城壁の中に潜入させることに成功する。ちなみにその首輪はエルフの里の鍛冶師に協力してもらい、隷属の首輪に見た目を似せて作ってもらった偽物だ。


 穴掘りが得意な獣人…一体何の獣人なのか気になっていたんだがウサギの獣人だった。早速下見をした場所に連れて行き、彼の意見を聞くことにした。


 「廃屋ということで周りの目を気にしなくてもいいですし、土の状態も悪くありません。これなら問題なく作業に入れそうです」


 「そりゃよかった。早速城壁の外にいる獣人と連絡を取って、ここに穴を掘ることを報告しておくよ。食べ物とか衣服とかはこっちで用意しておくが、何か他に必要なものはあるか?」


 「差しあたって必要なものは特にはありません。何かあれば、こちらから言わせてもらいます」


 「了解。あと、一応金を渡しておこう。気晴らしに都市内部を出歩くのは構わんが、その時はちゃんとその首輪を装着しておいてくれ。作業中はもちろん外しておいてもいいけどな。首輪を装備していない獣人が都市内部にいるのがバレてしまえば面倒ごとになる」


 「ええ、気を付けます」


 人が頻繁に出入りしていれば目立つかもしれないという事で、この場所に来るのは基本的に1日に1回までにした。彼の孤独な戦いが、今、始まる…と、思っていたが、彼らにとって穴掘りは大した苦労ではないらしい。趣味の延長の様な仕事であると言われ驚いた。


 やはり獣人の事はよく分からないと思った。掘った土を入れるためのマジックバッグを渡して、情報収集のため都市内部に向かうことにした。

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