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エリーに連れられ向かった先にある廃屋には人影こそ無かったものの、何者かの魔力感じとることが出来た。念のために姿は隠しているのだろう。この場所のことを知っている人物の数は少ないはずだが、用心深いことはいいことだと感心する。


 「ルークさん!私です、エリーです!以前にお話しした、協力者であるゼロと新しく協力者になった獣人のロルフを連れてきました!」


 エリーがそう呼びかけるが、人影が俺達の前に出てくる気配はない。俺達が近くにいるからか。エリーが人質を取られ無理やり俺達に協力させられていると考えられなくもない。


 「ルークさんとやらも俺達が近くにいた状態じゃ簡単に姿を晒すわけにもいかないのだろ。俺達はしばらく建物の外にいるからその間に説得してくれ」


 「分かったわ。その……気分を悪くしないでね?あの人も悪気はないんだろうけど…」


 「そんなことは分かっているさ。長い期間人の都市で諜報活動しているんだ。慎重すぎるぐらい慎重な性格でないと、こんな危険な任務任せることなんてできないだろうからな。むしろ頼もしいと思えるぐらいだ」


 ルークさんとやらにも聞こえるように大きな声でそう言い残し、ロルフを連れて建物の外に出る。こういった小さな心配りは相手に与える印象をがらりと変えるのだ。


 「ロルフ、あそこに人の気配を感じることが出来たか?」


 「いや、僕はさっぱり分からなかったよ。僕たち以外の匂いを感じることは出来なかったけど、エリーがああ言っていたから多分あの場所にルークさんと言う人はいたんだろうね。さすがはエルフと言ったところだよ、僕の知らない何かしらの魔法を使っていたんだと思う。頼もしいよね」


 どうやらロルフはあの場所に人の気配を感じることが出来なかったようだ。何故ロルフにルークの匂いを感じることが出来なかったのか…恐らくルークが纏っていた風の魔法が彼の体臭を飛ばしていたからだろう。


 やはりエルフは魔法の使い方が非常にうまい。感嘆させられると同時に、その扱い方の一端でも吸収して自己の強化に何とか漕ぎ着けたいとも思った。


 「その様子だと…ゼロはルークさんの気配を感じ取ることが出来たみたいだね」


 どうやら顔に出ていたのか。俺もまだまだだ…いや、ロルフは戦士としての訓練を受けて来ているのだ。戦闘以外では素人の域を出ない今の俺ではバレてしまっても仕方のないことだろう。


 そういえば俺は生まれ変わって以降、戦闘訓練しかしてこなかった。今回は相手が協力者であるロルフだから良かったが、これからはそう言った面でも訓練しておかなければ敵に裏をかかれてしまうこともあるかもしれない。


 「分かるか?俺の持つ能力で魔力を察知することが出来るんだ」


 「…!それは…とんでもなくすごい能力だね。その能力の習得方法を教えてもらうことは出来るの?」


 「習得方法か…多分俺以外に習得するのは無理だろうな。ロルフも知っているだろうが、俺は普通の人間じゃない。というか人種ですらないわけなんだがな…と、これ以上は言うまい。まぁ、そういった込み入った事情があるから、獣人はおろかエルフでも習得できないだろうな。というか、どうやって習得方法を伝えたらいいのか、俺にすらさっぱり分からないんだ」


 「人種でない…って、もしかしてゼロは魔族なの?」


 「んなわけないだろ。大体魔族なんて伝説にうたわれているだけで、実在はしていないんじゃなかったか?」


 「ああいった伝説は実話がモデルになったケースが多いからね。実際に魔族が実在していてもおかしくは無いって、地元のばぁちゃんが言ってた」


 魔族とは、物語に出てくるいうなれば悪役的な存在だ。物語の冒頭で悪さをして、物語の後半で勇者に成敗されるっていうのが鉄板ストーリーである。


 それにしても俺が魔族か…。魔族は生まれながらに様々な強力な能力を持っていると記述されている。そう考えると俺も、索敵の能力から他者に擬態する能力など様々な能力を持っている。ロルフがそう判断しても仕方のないことかもしれない。


 ただ残念ながら俺には、魔族が物語でうたわれるほどの戦闘能力は有してはいない。


 侮られるのも危険だが、下手に期待されても面倒だ。ほどほどの力を出しながら全力は温存しておこうとも思っていたが…もしかしたら状況がそれを許してはくれないのかもしれない。

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