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「聞くまでもないと思うが、ここにいる奴らは信用できるんだよな？」
「当然だ。こいつらは俺と同じ村出身で子供のころからの仲だ。人間達に味方することもないし、仲間を売るという事も決してない。ロルフは別の村出身だが…まぁ、お前を紹介したんだからな、もしかしたら今後お前たち2人で行動してもらうこともあるかもしれん。ならば、お前の能力を知っておいた方が良いんじゃないかと思って連れて来た」
「分かった。それとさっきまで俺の能力の一端を明かすと言っていたが、さらに踏み込んで俺の正体を明かそうと思う。くれぐれも、いきなり襲い掛かってくれるなよ」
そう言って擬態を解き、俺本来の姿であるスライムの姿に戻った。最近は人間の都市を拠点に活動しており、色々な人間の姿に擬態していた。この形態に戻るのは本当に久しぶりだ。
レオン達の様子を見れば心底驚いているようだ。いたずらが成功した、子供のような気持ちになる。
「さて、俺の正体を明かしたわけだが、何か聞きたいことでもないか？答えられる範囲なら、答えようとは思っているが………なんだ、無いのか？」
「いや、多分じゃがお主がスライムという事に驚いて、まだ、うまく頭が回っておらんのじゃろう」
「なるほど、そういうことですか。だったら俺に聞きたいことがあれば、いつでも…じゃなくて、周りに俺の正体を知らない人がいないときにでも聞いてくれ。それじゃあ、俺が聞いておきたいことでも質問しておくか。もちろん答えてくれるだろ？俺はここまで自分を明かしたんだからな」
「あ、ああ。もちろんだ、何が知りたい？」
「どうしてロルフはすぐに義勇軍と合流出来なかったんだ？俺が聞いた話だと、義勇軍はマリスレイブの近くで活動していたから、すぐに合流できるもんだと思っていたんだけど。やっぱりロルフから情報が漏れるのを危惧して、拠点を移していたからなのか？」
「それもあるが、主な目的は人間に襲撃された俺達の村の住民を、少し離れた場所にある他の獣人の村に護送していたからだ。この辺りの村だと、いつまた人間の襲撃があるか分からないからな。それに人員を割いたからロルフも義勇軍の匂いを感じにくくなってしまって、合流が遅くなったんだろう」
「なるほど、そういう事か。……ん？お前たちだけでマリスレイブの亜人を解放しようとしていたってことは、その移住先の村で義勇軍の戦闘員の募集とかはしなかったのか？」
「当然した。だが村の住民が急激に増えた混乱もあるだろうから、無理な招集はしなかったんだ。一応連絡手段を渡したから、余裕が出来ればこちらに合流してくれる奴が現れるかもしれんが」
「まぁ、獣人にとっては明日は我が身だろうしな。こういった人間の動きは、小さいうちに潰しておかないと……大きくなってからでは、手のつけようが無くなるかもしれないしな」
「スライムなのに、よく人間のことを知っているじゃないか。お前本当にスライムなのか？こんなに高い知性を持つスライムなんて聞いたこともない。俺達と共にここに来たスライムのように、お前も実は本体の使い魔なんじゃないのか？いや、別にスライムだから信用に値しないなんて、そう言うつもりは無いが」
「安心しろ、俺は間違いなく本体だ。それに人間の様な思考を持つスライムがいたって問題ないだろ？重要なのは、どうすれば亜人解放の可能性が上がるかどうか、だろ？」
「それもそう…だな。うん、問題は無い…だろう。いや、問題は無い！…それにしてもまさかゼロの正体がスライムだったとは驚いた。マリスレイブを治める領主の政敵とか思っていたけど、まさか魔物だったとはな。こりゃ確かに、人間に味方するという事は無いな、うん。…いや、だとしても亜人の味方をするというのもおかしな話…じゃないのか？亜人だって、魔物は殺すし……いや、スライムを殺した奴なんて人でも亜人でもめったにいないか…」
自分を必死に納得させようとしているのか、自分の考えを言葉に出しながら必死に頭を働かせているようだ。
「色々考えているようだけど、別に俺の行動原理は魔物を殺す存在と敵対するってわけじゃないぞ。お前たちが俺の目の前で魔物を殺しても文句を言うつもりは無い。俺は俺の復讐の為に強くなりたいんだ。その過程において、人間と敵対すればより多くの経験値を得られると思ったからエルフに協力しているわけだ」
「……スライムが復讐したい相手って一体どんな奴なんだ…すごい…気になるな……」
「ま、今はこれ以上言うつもりはないかな。俺達がもっと親しくなれば、もしかしたら俺の方から教えるかもしれん。とりあえず今は皆がいるところに戻って、今後の計画を話し合おう」
こちらから歩み寄ったことで、ある程度は打ち解けることも出来たと思う。獣人との共同作戦、何とか成功させなければと思う。
