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 その後いくつかの冒険者達と遭遇し、情報収集を繰り返した。こちらとしても、他の冒険者に見つかってしまう危険性もあるので積極的に殺すつもりはなかったが、俺が一人で行動していることをいいことに俺の所持品を奪おうとしたり、エルフを見つけることのできない憂さばらしで俺を襲ってきた連中は遠慮なく返り討ちにしてやった。


 やはりと言うべきか、そういったいきなり暴力的な行動に出る冒険者の数が多かった。恐らくはエルフを奴隷とするためと知りながら、奴隷商からの護衛依頼を受ける冒険者は人格的に問題のある連中が比較的多いという事なのだろう。


 死体の処理はいつの間にか増えていた孫眷属達に任せた。タイラント・ビートル(タイラント・センチピード)の死体と、麒麟の素材を吸収した個体は無事位階を上げて進化しており、その上昇した力でもって眷属を作っていたのだ。そしてその孫眷属達は、この短い期間で里周辺の警備の一端を任されるまでの信頼を勝ち取っていたのだった。


 『お疲れ様です、ボス。この不敬な奴らの処理は俺らに任せてください。サクッと吸収して経験値に変えてやりますよ』


 『おう、任せた。そういや里で何か変わったこととか無かったか?』


 『攫われてしまった子供の親とかが一時、子供の救出に乗り出そうとしていましたが、ローゼリア様に説得されて今では多少落ち着いています。ですが、まぁ、ボスの眷属…つまり俺らの親?に毎日計画の進捗状況を聞きに来ているようでして…気持ちは分からないでもないが、少し面倒だと言っていました』


 『それは仕方ないな。子供の心配をしない親はいないだろうからな。多くのエルフと交流する機会が増えてよかったと思う事にしようか。…対応するのは俺じゃないし』


 『あと、里の事…というよりは里にいる眷属のことになりますが、『精霊樹』の魔力を吸収している眷属さんが、同じタイミングで眷属となった他の2体と違って経験値を得ることが出来ず、進化できそうにないことに悲観していましたね』


 『なるほど、あいつにも位階を上昇させる機会をあげてやらないといけないか。ただ、その眷属がポイズン・スライムとかに進化してしまったら、『精霊樹』の魔力を吸収されるのを、里の連中が嫌がるかもしれないな』


 『例えポイズン・スライムでも意識しないと毒を発生されることが出来ないとはいえ、大切な樹の近くに毒物があるというのは精神衛生的にあまりよろしいとは言えないでしょうからね』


 『そういうこと』


 『それと一部の眷属に限りますが、エルフ達の警備隊に同行して『念話』を使って警備活動の補助をしています。結構評判が良いようですよ、リアルタイムで情報交換ができますからね。他の部隊と連携するのに、かなり有効であると喜ばれていました』


 『ふふ、当然だな。これを機に『俺』の存在を更にエルフ達にアピールして、この里にとって無二の存在にまで成り上がってやるぜ!』


 『どうしたんすか?いきなり変な話し方をして。まぁ無二の存在に成るかどうかは別にして、この調子でエルフの里で『俺達』の有用性が証明されていけば…』


 『いずれは他のエルフの里にも『俺』のが配備が許されるだろう。そうなれば、どうなると思う?』


 『仮に『本体』に何かあったときでも、勢力範囲が広ければすべての眷属を討伐するのはほぼ不可能になる。そして『俺達』が一体でも残っていれば、野生のスライムを眷属にすることができます。例え時間はかかっても、いずれは威勢を取り戻すことが出来るでしょう』


 『そういうことだ。それじゃ、これ以上冒険者からは大した情報は手に入りそうにないから里に向かうとするわ。そうそう、こいつらの所持品で足がつきそうにない貴重品とか、現金とかは回収して里までもってきてくれ』


 『あれ?以前に比べてお金に対してシビアになりました?』


 『やっぱ、人の町で生活するならお金はいくらあっても足りないわ。まぁ色々と後ろ暗いことしているからなんだけどな。そんなわけで、お金はいくらあっても困らないからな、頼んだぞ』


 眷属と別れて、里に向かうことにする。初めてこの里に足を踏み入れた時はエリーの案内があったから迷うことなくたどり着くことが出来たが、今回はそれが無い。里の中にいる眷属とのつながりを意識してようやく近づくことが出来るのだ。


 それが無ければどうなってしまうのか、試しに意識しないようにしてみれば、直進しているつもりがいつの間にか方向転換してしまっていたりしたのだ。それに気が付いたのも、やはり眷属が里の中にいるおかげである。やはり『精霊樹』の力はすごい、そう感嘆しながら歩み続け、長い時間をかけてようやく里にたどり着くことが出来た。


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