子供を虐待する両親
~家にて~
父親「おーい、帰ったぞ。ヒック」
母親「おっそ。何してたのよ」
父親「パチンコで勝ったからよ、ちょっと豪遊してた(笑)」
母親「…はあ!?またパチンコやってたの!?やめろっていつも言ってるじゃん!!」
父親「ワリイワリイ。まあ次もまた勝つからよ(笑)」
母親「そんなこと言って、いっつも負けてるくせに!!」
父親「うっせえ!!」
母親「てゆうか、ご飯はまだー?」
子供「…………………」
父親「なんだよ。まだできてねえのか??」
母親「武頼。おっそいんだけど」
子供「ごめんなさい……」
父親「マジで使えねえ。何のために産んだんだっけ。コイツ」
母親「おかしいわねえ。こきつかうために産んだのに。使えないなんて」
子供「…………………」
父親「まあ最悪、どっかに売り飛ばそうぜ(笑)」
母親「そうね。もうすぐ借金も底尽きるし、どこかに逃げますか(笑)」
子供「なんで…………」
バチン!!
子供「いたい……!!」
父親「口じゃなくて、手を動かせや!!」
母親「早く料理作ってくんない!?」
子供「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
父親「てゆうか、また冷凍食品かよ!!もう飽きたわ!!」
バチン!!
子供「ごめんなさい!!」
母親「少しはマシな料理作りなさいよ!!」
子供「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
父親「…まあ腹減ったし、仕方ねえから冷凍食品食うわ」
母親「アンタ、後でトイレ掃除もやっときなさいよ??」
父親「そうだな。滅茶苦茶汚かったしな。武頼、ちゃんとやれよ??」
子供「ごめんなさい…ごめんなさい…」
父親「あー眠くなってきたわ。寝よ」
母親「アンタ、まさか明日もパチンコ行くつもり??」
父親「おう。明日も勝ってくるぜ」
母親「…あっそ。ゲームして待ってるわ」
子供「……………………」
~次の日~
父親「あー、クソ負けた!!マジで最悪!!」
母親「はあ!?負けたの!?ふざけんな!!」
父親「うるせえぞ!!しょーがねえだろ!!」
母親「どうすんだよ、また金を減らしやがって!!」
父親「うるせえな!!明日またパチンコで増やしてやるから文句言うな!!」
子供?「……………………」
父親「おい。何見てんだよ。てか今日の飯はどうした??」
子供?「……………………」
父親「なんだクソガキ。なんか言いたいことでもあんのか??あ??」
子供?「………人間のクズ」
父親「…は??今なんつった??おうコラ」
子供?「さっさと死ねや!!人間のクズが!!バーカバーカ!!」
父親「なんだとゴルアアアアアア!!!」
母親「ちょっと!!あんまし大声で騒がないでよ。警察でも呼ばれたらどうすんのよ」
父親「うるせえ!!このガキは、この俺に逆らった。ぶっ殺す!!」
子供?「子供相手に、なにムキになってんだよ、おっさん。マジでダッサ(笑)」
父親「殺す!!マジで殺す!!」
子供?「だっせえだっせえだっせえわwwww」
父親「マジでキレた。今までは許してたけど、今回は本気で殺す」
母親「…なんか、変じゃない??アンタ、本当に、武頼なの??」
子供?「へえ。母親は流石に自分の息子じゃないことには気づいたか(笑) このマヌケ父親よりはまだ冷静に判断できてるな(笑)」
父親「死ねえええええええ!!」
子供?「動くんじゃねえ!!ライターを落とすぞ!?」
父親「ああ!?なんだこれ!?」
母親「うわ!!何この変な液体!?」
子供?「そこのアホ父親がこの家に戻ってくる前に、寝室に灯油をまいておいたんだよ!!」
父親「てめえ…何てことしやがる…」
子供?「こんくらいは当然用意する。こっちは命がかかってるからな」
父親「てめえ!!このガキをちゃんと見張っとけよ!!」
母親「はあ!?人のせいにすんじゃないわよ!!私はリビングでずっとゲームしてたのよ!!」
子供?「あーもう、うるせーうるせー。クズどもがわめくな」
父親「なんだとゴルア!!」
母親「親に向かってなんて口をきいてんのよ!!」
子供?「いや、この子も、流石にアンタらを親だと思ったことねえだろ…だって、まともに親らしいこと一切してないじゃん(笑)」
父親「…お前、さっき、自分の息子じゃない、って言ってたよな??」
母親「…ならアンタは、誰なの??」
子供?「俺の名前は安藤太郎、49歳だ。ついこの前に死んでから、幽霊になった」
父親「ああ!?どういうことだ!?幽霊!?」
母親「なんでそんな奴が私の息子に憑りつくのよ!!」
安藤「単純なことだよ。この子が救いを求めてたからさ」
父親「は??そんな理由で憑りつけるのかよ」
安藤「子供が、辛い、悲しい、寂しいとか負の感情を感じると、免疫が弱くなって、なんか俺みたいな幽霊が憑りつきやすくなるみたいなんだよね(笑)」
父親「はあ??なんだそりゃ。とりあえず早くそいつの中から消え失せろ」
母親「そうそう。その子は私たちにとって大事な存在だから」
安藤「…大事な存在、だと??てめえら、正気か??」
父親「ああ。当然だ」
安藤「この子に対して何1つ与えてない奴が、気安く子供に大事な存在とか言うんじゃねえ!!」
父親「はあ??別にいいだろうが」
安藤「てめえらにとっては、「食事を作って、家事をしてくれる」大事な存在ってだけだろ?」
父親「…………………」
安藤「親として何1つとして仕事をしてないお前らみたいな奴らに、この子を道具としてしか考えてない奴らに、子供について語って欲しくないね!!」
父親「別にいいだろうが。うるせーな」
母親「産んだのは、私達よ??部外者にとやかく言われたくない」
安藤「…とことん性根が腐ってやがるな。このクズ両親は」
安藤「なら、自分のその性格を反省するつもりは、ねえってことでいいんだな??」
父親「当然だろ。俺らの家族の形は、これでいいのさ」
安藤「ああ、そうか……なら、今ここでこの部屋に火をつけさせてもらう」
父親「はあ!?おい、ふざけんな!俺の家に勝手なことをするな!!」
母親「ちょっと!!近所で騒ぎになるでしょうが!!やめろ!!」
安藤「いい加減にしろや!!どこまでも自分のことばっかだな!!てめえらは!!」
安藤「自分の息子を微塵も心配しないで、よく「大事な存在」とか言えたな!!てめえらは、本当に親失格だよ!!もうこの子に何も言う資格はねえ!!」
安藤「自分の子供であるのをいいことに、平然と暴力をふるって恐怖を植え付けて、仕事を押し付けた挙句に、自分たちはのうのうと遊び惚ける。しかも借金の肩代わりとして、息子を売りつける、だと??アンタらは一体、どんな神経してんだ!!」
父親「うるせえなあ。説教なら聞かねえぞ??」
安藤「…なあ、なんでこんなことするんだ??」
父親「あ??」
安藤「アンタら、普通じゃない。もしかして自分の親にも、そんなことされていたんじゃないのか??だから、平然と自分の子供にこんなことをしている」
父親「……………………」
安藤「話してみろよ」
父親「…そうだよ。俺らの親も、こんな感じだったんだよ」
母親「…だから、私たちもこれが普通のことだと思ってた」
安藤「やっぱりか…」
父親「毎日毎日親父にはぶん殴られて、お袋には無視されてた。家事も俺が毎日やらされた。毎日が地獄のようにしんどかった。親は俺に何も教えてくれなかったから、勉強のこともよく知らないまま、クソみたいな中学校に入った。でもそこでは、クズだけど似たような境遇の友達ができた」
父親「そこで、コイツ(妻)とも出会った。コイツの親もパチンコとかギャンブルで大量の借金を作って失踪するような奴だったから、俺らはすぐに打ち解けあえた。中学を卒業した後は、一応しばらくは働いていたが、まあ中卒の扱いなんてひでえもんさ。中卒ってだけで白い目で見られて、あっさりとリストラされちまったのさ。コイツもそう。それでやる気もなくなって、今に至るってワケ」
安藤「…………………」
母親「アンタがどこの誰かは知らないけど、まあ私たちの気持ちはわからないだろうね」
安藤「…わからねえよ!!同情しかできねえ!!アンタらが経験した家庭での苦労や辛さは、恐らく俺なんかが計り知れるものではないんだろう」
父親「…ならもうとやかく言われる筋合いはねえな。もう消えてくれ」
安藤「だけど、その事は、アンタらの子供には関係ねえ!!この子は、アンタらに虐待されるために、この家庭に生まれてきたわけじゃねえんだよ!!」
父親「それは………………」
安藤「なんで同じことを、自分の子供にしてるんだ??アンタら2人は、共に親からひどい目に合って、それが地獄のように辛かったと理解しているはずだ!!まあそりゃ理解できるよなあ。親から暴力を受けたり、愛情をまったく注がれなかったり、さらには見捨てられたりして、辛くないなんて感じない人間はいねえ!!」
母親「……………………」
安藤「なんで自分が辛いと感じたことを、自分の子供にしちゃうんだよ!!第2、第3の自分を生み出してどうするんだよ!!お前らが、ここで止めなきゃダメだろ!!」
父親「……うるさい!!俺たちは、この生き方が、辛いながらも、正しいと思ってたんだよ!!自分の親がやってたからなあ!!」
安藤「ならば今ここで、はっきりと言ってやる!!その生き方は、100%間違っている!!このままだと、お前ら自身も破滅するし、この子自身の人生も奪うことになる!!」
父親「俺らも破滅する、だと??なんでそんなことがわかる!」
安藤「お前らはさあ、自分たちの親が、今どうなってるのかとか、考えたことはねえのか?」
父親「ないな。あいつらのことなんて、もう二度と考えたくない」
安藤「いいか??大人っていうのは、年を重ねるごとに衰えていくもんなんだ。そこで最後に支えてくれるのが、子供なんだよ。その最後の砦である子供に見捨てられた親は、絶望の老後を過ごすことになるのさ。いずれ働けなくなり、金もなくなり、自分のやったことを後悔するだろう」
父親「…そうなってる保証がどこにあるんだ」
安藤「それは、息子あるいは娘であったアンタら2人が1番良くわかってるんじゃないのか??アンタらの親が、70~80歳まで普通の生活を送れていると思うか??自分で家事も仕事もできず、酒やタバコ、ギャンブルの沼にはまった人生で、誰からの救いもなく生きていけると思うか??」
父親「……………………」
母親「……………………」
安藤「アンタらの親は、確実にロクな死に方をしない。俺が保証する。そもそも、自分が死んだときに誰からも看取られない人生なんて、それだけで虚しい」
父親「……………………」
安藤「だから、アンタら2人は、そんな親になるな!!まだ間に合う!!これ以上、今の生活を続けてしまうと、後戻りできないくらい子供の心がすさんでしまう!!自分たちが受けた痛みを生かして、今ここで生まれ変われ!!幸せな人生をつかみ取れ!!」
母親「私たち、変われるかしら……?」
安藤「できる、絶対できる!!子供は、こっちが全力で愛情を込めて、向き合いながら育てていれば、必ず、それに応えてくれる!!だからそう、アンタら2人にかかってるんだ!!」
父親「……………………」
母親「……………………」
父親「……やってみるか」
母親「……そうね。どうすればいいのかなんて、全然わかんないけど…」
安藤「そりゃそうだ。子育てなんて、毎日が発見の連続だよ(笑) だから滅茶苦茶大変だけど、それが自分の幸せに直結していくんだ。長い目で見るとな」
安藤「それに、守るべきものがあると、人は強くなれるんだ。明日を生きる活力にもなる」
父親「……………………」
母親「……………………」
安藤「どうだ??やれそうか??」
父親「やってみるよ…でもこんな俺に、教えてあげることなんて無いと思うけど…」
安藤「大丈夫さ。仕事さえしてれば、人間として絶対に成長できる。それにアンタらは、地獄のような辛さ、苦しさも過去に経験してる。そういった精神の面で、子供を支えてあげればいい」
母親「私も…とりあえず家事の勉強をして、アルバイトもやろうかな…」
安藤「その意気だ。意識1つで、自分の人生は変えられる。忘れないでくれ」
父親「わかった…心に刻んどくよ…」
安藤「俺は、しばらくここで見守ってるからな。頑張ってくれ」
父親「見張ってる、の間違いだろ…(笑) まあでも、俺らバカだから、そんなに早く変わることができるかわからないから、そうしてくれると助かる…」
安藤「おう。諦めずに頑張れよ。絶対に、幸せになれ!!」
安藤「…あ、言い忘れたけど、ちゃんと今までのこと、この子に謝っとけよ!!あと、部屋中灯油まみれにしてごめんなさい!!」
ガクン
父親「……………………」
子供?「……………………」
母親「武頼……?」
父親「……大丈夫か??」
子供「…ひ、ひいい!!ごめんなさい!!」
母親「……大丈夫。もう何もしないから。今までごめんね…」
父親「今まで、本当に、本当にすまなかった。信じてもらえないかもしれないが、もう二度と、暴力もふるわないし、家事を無理矢理やらせたりもしない…」
母親「…本当のことなの。私たち、反省したから…」
子供「……本当なの??」
父親「ああ。父さんもこれから、全力で仕事を探す。母さんも家事を学びつつ、アルバイトを始めていくつもりだ。これまでお前に苦労をかけ続けて、本当にすまなかった…」
母親「本当に、ごめんなさい…これからは、全力であなたを支えると誓う…」
子供「そっか……なら僕もできる限り、手伝うよ…」
父親「武頼…!!ありがとう…!!」
母親「父さんと母さん、頑張るから…!!」
安藤「子供の可能性は、無限大だからな。その成長を見守るだけでも、幸せを感じられるもんさ…これから色々大変だとは思うけど、頑張ってくれ!!」
安藤「…さて、またその辺をウロウロして、子供を救っていきますか!!」
~完~
読んでいただきありがとうございました。