家庭内暴力をする父親
~家にて~
父親「ただいま…」
母親「あなた、お帰りなさい」
父親「はあ。マジでムカつくわ…」
母親「…ご飯、机に置いとくわね」
父親「酒は??」
母親「あなた、毎日ちょっと飲みすぎよ。今日はやめといた方が…」
父親「ああん!?うるせえぞ!!いいから出せよ!!」
母親「ひい!!」
子供「…………………」
父親「おい。何見てんだよ」
母親「さやか。もう寝なさい」
子供「…………………」
父親「おい。なんだその目は。なんか文句あんのか?」
子供「…………………」
父親「こっちにこい」
バチン!!
子供「いたい!!パパいたい!」
父親「お前はいつもいつも!!そんな目で俺を見るんじゃねえ!!」
母親「やめて!!あなたやめて!!」
子供「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
父親「お前も、普段からこのガキをしつけてねえからこうなるんだよ!!」
子供「ごめんなさい!!」
父親「俺が仕事でいない間によお!!ちゃんとコイツをしつけとけよ!!オイ!!」
バチン!!
母親「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
父親「はあ…はあ…まったく…」
子供「ごめんなさい…ごめんなさい…」
父親「あーもう腹立つ。寝る」
~4日後~
父親「あー、マジでむしゃくしゃする!!本当にイライラする!!」
母親「あなた、お帰りなさい。落ち着いて…」
父親「落ち着いていられるかあ!!本当に、今日は、大変だったんだ!!」
子供「……………………」
父親「おい。何見てんだよ」
子供「……………………」
父親「なんだクソガキ。おい。まだ文句があんのか??」
子供「……………………」
父親「なんだよコラアアアアア!!」
ガシイ!!
母親「やめて!!」
子供「……………………」
父親「おい。なんとか言えよ」
子供?「…口が酒くさいな。おっさん」
父親「…は??」
子供?「ちょっと、離れてくれや(笑) マジできもすぎる(笑)」
父親「おい。なんだてめえゴルアアアアアア!!」
子供?「出た出た。すぐにそうやって大声出して、相手を威圧しようとする奴な。雑魚あるある。弱い奴ほど吠えるって言うよなあ(笑)」
父親「…なんだお前??本当に、さやかか…?」
子供?「へえ。流石に自分の娘じゃないことには気づいたか(笑)」
父親「はあ…?」
子供?「俺の名前は安藤太郎、49歳だ。ついこの前に死んでから、幽霊になった」
父親「ああ!?どういうことだ!?な、なんでそんな奴が、俺の娘に憑りついてんだ!」
安藤「さあ??この子供に負の感情が溜まったからかな?」
父親「…負の感情?」
安藤「子供が、辛い、悲しい、寂しいとか負の感情を感じると、免疫が弱くなって、なんか俺みたいな幽霊が憑りつきやすくなるみたいなんだよね(笑)」
父親「へえ…まあさっぱり意味はわからん。早く消え失せろ」
安藤「ああ、そうするわ。児童養護施設にでも行ってくるわ」
父親「はあ!?おい、ふざけんな!俺の娘に勝手なことをするな!!」
安藤「勝手なことをしてるのは。てめえだろうが!!」
父親「!?!?」
安藤「自分の娘であるのをいいことに、平然と暴力をふるって、ストレスのはけ口にして、恐怖を植え付けて。仕事がうまくいかないことで、子供にあたるとかマジでありえねえわ。この子には何も関係ねえだろうが!!」
父親「…ちょっと、やかましいな…」
安藤「動くなてめえ!!」
父親「!?!?」
母親「ちょっと!さやか、何してんの!!」
安藤「一歩でも俺に近づいたら、この包丁で刺す」
父親「てめえ…ここまで、やるか…」
安藤「当たり前だろうが。子供が大人に挑んでるんだぞ??」
父親「……………………」
安藤「なあ、なんでこんなことするんだ??」
父親「あ??」
安藤「アンタ、前はこんなことする奴じゃなかったはずだ。もしそうだったなら、そもそも結婚なんてしてないだろうしな」
父親「……………………」
安藤「話しやがれ」
父親「てめえには、わからん。最近部署が変わって、上司が滅茶苦茶ウザい奴になったんだ。そこで俺は上司に文句ばっかり言われながらも、毎日毎日死ぬ気で働いた。俺は大したスキルもないし、学歴もショボいから、転職なんて考えられない。だから絶対に逆らう訳にはいかねえ。それで、ずっっと我慢して仕事してた。家に帰ると、妻とはしょっちゅう口論になった」
父親「本っ当に細かいことに口うるさくて、家庭内でも俺は疲れなきゃ、ストレスを抱えなきゃいけないのか?って考えたら、もう耐えられなくなって、つい手を出してしまった。でもそれがきっかけで、妻は黙るようになった。その時に、暴力を使えば、家庭を支配できる、なんて考えちまったんだ…」
安藤「それが、エスカレートして、子供にもあたるようになったと??」
父親「まあ、そうだな…そんな俺を見るその子の目が、どうも耐えられなくて…なんか無言で、俺が責められてるみたいで…」
安藤「ふーん。そんなクソみたいな理由で暴力をふるってたのか」
父親「クソみたいな理由だと!?」
安藤「当たり前だろ!?あのなあ、暴力をふるうなんて、普通に考えて最低の行為だってわかるだろ?学校で習わなかったのかてめえは!!しかも子供に至っては、アンタを見てただけで殴るとか、マジでどうかしてるぞてめえ!!」
父親「……………………」
安藤「アンタが上司から受けたストレスを、そのまま家族に与えてどうすんだよ!?今度は自分の家族にその我慢をさせることになってんだぞ??仕事が辛いのはわかるよ!!でも父親であるアンタが、その負の連鎖を止めないでどうすんだよ!!」
父親「……………………」
安藤「アンタはさ、自分の父親に、そんなことされてたのか??」
父親「それは……………」
~回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
父親の幼少期
父親「うーーーん。何の音…?」
祖父「はあ。畜生…」
父親「父さん…?」
祖父「本当に、うまくいかねえ…毎日毎日…辛すぎる…酒飲まねえと、本当にやってられねえ…」
父親「父さん…どうしたの??」
祖父「!?おー、すまんすまん。俺の声で起きちゃったか。悪い悪い」
父親「何があったの??」
祖父「大丈夫だ。お前は何も気にしなくていい。これは、父さんの問題だ。さあ、もう寝なさい」
父親「うん……………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
父親「……………………」
安藤「お前の父親は、仕事でうまくいかなかったら、お前を殴ったか??」
父親「いや………………」
安藤「お前の父親は、イライラしてたら、お前に暴力をふるったか??」
父親「いいや……………」
安藤「ならお前も、頑張れ!!頑張ってこらえろ!!そのお父さんみたいに!!いや、日本中あるいは世界中の頑張るお父さん達みたいに!!」
父親「……………………」
安藤「アンタ、子供の出産には立ち会ったか?」
父親「そ、それは勿論…」
安藤「その時のことを思い出せ。アンタはきっと、そこで何か誓ったはずだよ」
父親「……………………」
~回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
父親、26歳の時
父親「はあはあ…どうでした!?無事に生まれたましたか!?」
看護婦「はい。元気な女の子です」
父親「妻の容態は!?」
看護婦「奥様も健康に全く異常ありません」
父親「よ、良かったあ……」
母親「見て、あなた。すごい可愛いわよ…?」
父親「ああ。よく、本当によく頑張った…」
母親「大切に…育てていこうね」
父親「ああ…絶対、絶対に俺が、お前たち2人を、守る。命にかえても守るよ。絶対に幸せにする」
母親「ありがとう…あなた。」
父親「お礼を言うのは、俺の方さ…次は、俺が死ぬ気で頑張る番だ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
父親「……………………」
安藤「どうだ??お前は変われそうか??」
父親「俺、全然、頑張れてねえじゃんか…幸せにできてねえじゃん…しっかりしろよ!俺!!」
安藤「思い出したか。良かった良かった。アンタのしたことは、決して許されることじゃないけど、アンタの罪をどうするかは、この子と奥さんが判断してくれるだろう」
父親「ああ。わかってる。今までのことは、絶対に許されることじゃない。これから一生かけて償っていくつもりだ。2人には、本当に申し訳ないことをした」
安藤「その意気だ。この先も大変だろうけど、くじけずに頑張ってくれ。」
父親「ああ。どんなことがあっても、必ず耐え抜くよ。」
安藤「また何かあったら、この子に憑りつくからな(笑)」
父親「もう二度と、アンタがここに来なくていいぐらい、頑張るよ」
安藤「その意気だ。じゃあな」
ガクン
子供?「……………………」
母親「さやか!?大丈夫!?」
父親「…さやか?」
子供「ママ…?パパ…?あれ?私、何してたんだっけ??」
母親「さやか!!さやか!!」
父親「さ、さやか…優子…今まで、本当に、本当にすまなかった!!」
母親「…………………」
子供「…………………」
父親「許されることではないことはわかってる。今後、俺の一生をかけて償っていく。次に暴力をふるってしまった時は、警察に行く。絶対に、二度としないと誓う。今まで怖い思いをさせて、本当にすまなかった。不甲斐ない、カスみたいな父親だが、どうかもう一度、俺にチャンスをくれ…!」
子供「……パパ、泣かないでよ……私は大丈夫だから…」
父親「さ、さやか…!!」
母親「良かった…これから、また一緒に頑張っていきましょう…」
父親「ああ!!今度こそ、絶対に、俺、頑張るから!!」
安藤「まったく。世話が焼けるぜ……」
~続く(次回、最終回)~