スマホ中毒の母親
~電車にて~
子供「ねえ。ママ。ママ」
母親「……………………」
子供「ねえ。ママ。ママってば」
母親「……………………」
子供「ママ、ママ。ねえ」
母親「ちょっとごめん。静かにして」
子供「はい……」
母親(はあ。今ゲームで忙しいのに、ホントうざい)
子供「……………………」
母親「…………あークソ」
子供「…………ねえ、ママ、あれ見てよ!すごいよ!」
母親「…………うわ、ミスったわ。最悪」
子供「……ねえ、ママってば……」
母親「話しかけんなっつーの!!今忙しいの!!」
子供「ごめんなさい…………」
母親「……………………」
~家にて~
子供「ねえ。ママ。ママ」
母親「アハハ!この漫画おもしろ!!」
子供「ねえ。ママ。今日のご飯はなに??」
母親「……………………」
子供「ママ、ママ。ねえママってば」
母親「あーもうウザイ。ちょっと向こう行ってて」
子供「はい……」
母親「今いいとこなのよ。マジで邪魔」
子供「ねえ、遊ぼうよ…」
母親「無理。忙しい」
子供「いつもそういうけど、いつなら遊べるの…?」
母親「暇になったらね」
子供「いつ暇になるの…?」
母親「知らない」
子供「……………………」
母親「……………………」
子供?「おいてめえ!!スマホばっかやってんじゃねえぞ!!」
母親「!?!?ええ!?は??」
子供?「あーダル。ケツかゆいな」
母親「!?え??何?今しゃべったの、この子!?え??」
子供?「どんだけスマホに没頭してんだよ、お前。中学生か!!(笑)」
母親「は??アンタ、急にどうしたの??なにその口のきき方」
子供?「うるせえぞオバハン。一生スマホやってろ(笑)」
母親「あ??何??アンタ何様のつもり!?」
子供?「なんだ??さっきまでずっとスマホに没頭してたのに、急にどうした??いつも通り、俺のことなんて気にせず、どーぞどーぞスマホをやってください(笑)」
母親「その態度は、親として流石に見過ごせないわ。」
子供?「へえ。こんな時だけ親ぶるんだ(笑) 普段全然世話もしてないのにな。飯はほとんどカップラーメン。家事は全然しない。やるのはスマホばっかり。え?ニートですか?(笑)」
母親「ア、アンタ、誰なの…?明らかに様子が変よ…?頭でも打った??」
子供?「へえ。流石に自分の息子じゃないことには気づいたか(笑)」
母親「はあ…?」
子供?「俺の名前は安藤太郎、49歳だ。ついこの前に死んでから、幽霊になった」
母親「はあ!?どういうこと!?な、なんでそんな奴が、あたしの息子に憑りついてんのよ!」
安藤「さあ??この子供に負の感情が溜まったからかな?」
母親「…負の感情?」
安藤「子供が、辛い、悲しい、寂しいとか負の感情を感じると、免疫が弱くなって、なんか俺みたいな幽霊が憑りつきやすくなるみたいなんだよね(笑)」
母親「あ、そうなの…意味わかんないけど、早く消えてちょうだい」
安藤「ああ、そうするわ。児童養護施設にでも行ってくるわ」
母親「ちょっと待ってよ!!アンタに早くその身体から出ていけって言ってんの!!」
安藤「は…?いや、だってアンタにとっては、この子自体もういらないだろ?」
母親「は??意味わかんないんだけど。その子は必要なんだけど」
安藤「え??だってアンタ、息子のことなんてほとんど眼中になかったじゃん。ずっとそのスマホに釘付けだったじゃん(笑)」
母親「そんなの関係ない!!その子は大事な私の息子!!」
安藤「へえ。それなのに全然お世話もしてあげない、と。まだ4歳なのに」
母親「私の息子なんだから、どう接しようが私の勝手だろうが!!」
安藤「勝手なわけあるかボケ!!!」
母親「!!?」
安藤「てめえよお、子供が望んでアンタを選んだと思ってんのか??このガキは親を選べねえんだぞ??コイツの未来、将来はさあ、親であるアンタが握ってんだよ!!」
母親「だから何…?」
安藤「だからさあ、しっかりその責任をもって育てろって言ってんの!!それがどーーーーーしても、絶っ対に嫌だって言うなら、本気で厳しいこと言うけど、そもそも子供を産むんじゃねえ!!」
母親「なんで赤の他人のアンタに、そこまで言われなきゃいけないわけ?」
安藤「そこまで言うに決まってんだろ。コイツの未来がかかってんだぞ??」
母親「何を言われても、私はスマホをやめるつもりはないから」
安藤「へえ。アンタも、そうやって親に育てられてきたの??」
母親「そ、それは…」
~回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
母親の幼少期
母親「ママ!!ママ!!遊ぼ遊ぼ!!」
祖母「はいはい。今行きますからね」
母親「ママ、何してるの?」
祖母「破れた服を縫ってるの。ちょっと待っててね」
母親「まだー??」
祖母「ごめんね。この後にまだ洗濯とか掃除とか色々残ってるから…」
母親「もう!!はーやーくー!!」
祖母「はいはい。わかったわかった。まったくもうこの子は(笑)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
母親「……………………」
母親「む、昔は…す、スマホとかなかったし、今より全然娯楽も少なかった。だから、そう!だからよ!絶対に今と同じだったら、私の母さんもきっと同じことをしてた!!やるべきことが多いのよ!!今と昔じゃ時代が違うのよ!!そうよ、今はみんな自分のことで忙しいの!!」
安藤「自惚れんじゃねえ!!時代のせいだと!?今この瞬間、どれだけ忙しくても全力で子育てをしている全ての親に謝りやがれ!!」
母親「アンタに、私の何がわかんのよ!!バイトもして、家事もして、子育てをするのがこんなにしんどいとは思わなかった!!ああ…大学生の時みたいに遊びたい…ゲームしたい…友達と遊びたい…スマホで動画や漫画見ながらゴロゴロしたい…もっと遊びたい!!」
母親「その時に、「ああ、子育てって……めんどくさい」って本気で思った!悪い??」
安藤「ああ、悪い!!みんな、自分の時間を削りながらも子供の幸せを願って、全力で子育てをしてんだよ!!しかも人によっては、仕事をしながらだぞ??そんな人たちが自分の娯楽に避ける時間なんて、ほとんどあるわけねえだろうが!!学生気分を抜け!!責任を持て!!アンタはもう、1人の子の未来を担う、母親なんだ!!」
母親「……………………」
安藤「親ってのはみんな、子供を産んだその瞬間から覚悟を決めてんだよ!!自分の子供が!好きだから!!愛してるから!!幸せになって欲しいから!!!」
母親「……………………」
安藤「子育てが本当に大変なのはわかる。辛いのも。でもさ、それをする価値はあると思うぜ??子供が立派に育って、なおかつ親である自分をその時も愛してくれていたら、これほどまでに嬉しいことは無いと思わねえか??」
母親「……………………」
安藤「アンタは、どんな思いでその子を産んだ??産む前の自分の気持ちを思い出してみてくれ」
母親「それは……………」
~回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
母親、22歳の時
父親「なあ、おろしてもいいんだぜ…?」
母親「……………………」
父親「どうする?正直俺の稼ぎだけだと、養育費をちゃんと稼げるか怪しいし…」
母親「……………………」
父親「なあ、なんとか言ってくれよ…」
母親「…私、産みたい…」
父親「……そうか。なら、俺も、仕事、より一層頑張るよ…」
母親「…うん…ごめんね…」
父親「謝る必要はねえよ…2人で頑張ろうぜ」
母親「うん……」
母親「……………………」
母親「大丈夫。ちゃんと産むから。絶対に、私が、ちゃんと育てるから。絶対幸せにするから…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
母親「……………………」
安藤「どうだ??お前は変われそうか??」
母親「うん……私、もう一度心を入れ替えて頑張ってみる…」
安藤「そうか。良かった。この子も、絶対アンタが大好きだろうからな。応えてあげてくれよ」
母親「うん。ありがとう。この子を産んだ時のことを思い出した」
安藤「この先も大変だろうけど、くじけずに頑張ってくれ。」
母親「うん。頑張る」
安藤「また、何かあったら、この子に憑りつきにくるからな(笑)」
母親「もう二度と、あなたが憑りつかなくていいように、頑張る」
安藤「その意気だ。じゃあな」
ガクン
子供?「……………………」
母親「…晴樹?」
子供「ママ!!あれ?ぼく、何してたんだっけ??覚えてないや!(笑)」
母親「晴樹!!晴樹…」
子供「…え?ママ、どうしたの??なんで泣いてるの?」
母親「ママ、これから、頑張るからね!!ごめんね…ごめんね…」
子供「ママ、泣かないで……遊ぼ!!」
母親「うん!!」
安藤「まったく。世話が焼けるぜ……」
彼の名は、安藤太郎。49歳。結婚をして子供もいたが、事故で2人を失くしてしまう。ショックで眠れまくなり、夜に町を徘徊していた際に、近くの家から怒号と子供の泣き声が聞こえた。その家に行き、子供に虐待をしていた親を注意したところ、逆上して包丁で刺され、殺されてしまった。そのため子供に非道なことをする親に非常に強い怒りと憎しみを持っており、負の感情が強い子供に憑りつき、子供の扱いが特にひどい親を更生させる幽霊となって、この世を徘徊していたのだった。
~続く(3話完結)~