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第三章十一節

チャポン!


 「中々釣れないな。」


 コテージから少し離れ林を抜けた先にあるそこそこ大きな川に俺は釣りに来ていた。

 まだ風は冷たいが、日の光が穏やかに降り注いでいる。

 季節的には冬は終わり、春になりつつあるようだ。


「お!、、、よっ!」


 糸の先に括りつけた木がピクピクと動き、沈む瞬間を狙って竿を引き上げる。


「よしよし。」


 それほど大きくはないな、イワナに似ているけど、、あとでのノアに聞いてみるか。

 釣れた魚を木桶の中に入れて、再び糸を垂らす。

 あの後、イーリンに朝食を出すとすらっと平らげてまだ疲れが残っていたのか再び眠りについた。

 俺達は今日は休みにすることにしてファナとノアはイーリンを見ているとコテージに残り、俺はここに釣りに来ていた。

 特に目的もなくこうしているわけではあるのだが、まあ朝にやらかしてしまったから少し居づらくななったとか、まあそんな理由だ。


「でもあれには驚いたな。」


 彼女、イーリンの肌は、暗がりでも分かるよな白く張りのある肌にこびりついた黒い染みの帯が巻き付くように彼女の肌を犯していた。

 暗がりでは、その白さが際立っているせいで黒い帯部分は影に同化しているように見えた。

 あれは傷か?火傷か?と再び思い浮かべるが、一緒に見てしまった彼女の顔を思い出す。

 あの悲しく、悲壮に歪んだ目が俺を見ている顔を思い出し頭を振る。

 

「やめやめ。」


 何か触れてはいけないものに触れた気分になり、フゥーと息はいて一息つく。

 それよりもこれからどうするか、このまま拠点の襲撃と物資の略奪と情報の取得を続けるか、それとも一度戻るか。

 それにイーリンの事も、紅月の人なのは分かったが、彼女を襲撃したのもまた紅月の兵士?いやあれは暗殺者の類なんだろうと、もしもこのまま彼女を開放、もしくは陣営の近くまで送り届ければいいとは思うけど、彼女の敵がどこに潜んでいるかもわからない今はそう簡単な話ではない。

 せっかく助けのに送った先で殺されてもしょうがない、俺自身も助けたなら最後までしっかりと助けないと、ならばどうするか、オルスに連れて行って保護するにしても周りの人たちがどう思うか、まあなんにしても彼女の意思をしっかりと聞いてから行動を起こそう。

 とそう考えていると、フッと影が落ちる。

 

「フフフ、釣れますか?」


「ああ、大物が掛かったようだ。」


 俺はその影を作っている男に顔を向けそう答えた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 その場を、重い空気が支配する。時間がいくらか過ぎ次に何を言えばいいかわからずただ時間が過ぎて行く中で最初に声を出しなのは。


「フフフ、、、、引いてますよ。」


「え!、、、あ!!」


 振り向くと、地面に刺していた竿が激しくしなっていた。

 俺は急いで竿を手に取り取るとすごい力で俺の体ごと川へと引きずられそうになる。


「おわわ!」

 

「おっと!」


 俺の体を力強く支えたのは孟将軍だった。


「フフフ、さあ引き上げてください。」


 体制を整えて、川を見ると糸の先にはまだ暴れている魚の影、それも大きい。

 俺の後ろに居る孟将軍くらいはありそうだ。

 

「こいつは食いでがありそうだな。」


 と右に左にと暴れているそれにタイミングを合わせ一瞬力が弱まった瞬間を逃がさずに吊り上げる。


『Gaaaa!』


 釣り上げたモノが咆哮を上げ俺達に襲い掛かって来た。


「魚!?魚が声を上げた!!」


「フフフ、いやはや、この大陸は本当に面白いですね。」


 腰に手を添えて将軍は笑った。


 


 


「~~~~~~~~!」


 わたくしは、一人床の中で悶えていた。

 ここは、山荘の小屋の中にある一室でわたくしは一人目が覚める。

 まだ意識がはっきりしていない、最初ここが何処かなのかもわからなかった。

 上体を起こし、薄ぼけた目で周りを見る。

 壁も天井も、そして周りに置かれている調度品も見たこともない物だった。

 だけどその中で一つだけ見覚えのあるものが壁に掛けられていた。

 それは、わたくしが着ていた服、あちこちが破れ土で汚れているそれを見た時に私はすべてを思い出す。

 思い出して、一番最後に頭の中に浮かんだのが暗い部屋にわたくしが床へ投げ出されて醜態をさらしそれを男性に見られたことを思い出した。


「~~~~~~~~~!」


 思い出して悶えていた。

 わたくしは、幼少期かから宮殿で過ごし人と触れ合うことはあまりありませんでした。

 周りにいたのはわたくしの世話をしてくれていた侍女たちが数名だけの屋敷で十年すごしていた。

 周りは女性だけで、男性に初めて会ったのは、あのことがあった後になってからだった。

 最初は体格も声も全く違うそれに恐れたが、徐々に慣れて今ではそれほど気にしなくなっていた。

 でも、あんなこと、私の素肌を男性に見られたことなんとなかった。

 そもそも、同じ女性にだって素肌はさらさずにいた。

 その理由は、この肌にまとわりつく黒い火傷の後だ。

 今では、思い出すだけでも身が竦み体が震えるあの出来事、そこで私は全てを失い、残ったのが体に走る黒い帯状の火傷。

 それを見る度にあの時の光景が断片的に蘇り、夜も眠れない日々が続いた。

 そして人に見られることも恐れた。侍女に医者が私を見る憐みの目が私には何か汚い物を見るかのよう思えてしまった。

 だから私はそれ以降肌をさらさずに過ごしてきまた。

 湯網をするときも肌着を着て一人で浸かり、着替えもすべて自分一人でこなしてきました。

 そうするうちに数年、二度と人には見せまいとしていたこの姿を、男性に見られてしまうことになるとは。

 

「~~~~~、、、、、フゥ。」


 幾分か落ち着いて一息つく。だけど、私の心はまだ落ち着かずにいたのだ。


「入りますよ~。」


 ドアが開かれる。わたくしは入って来た人物をみる。

 

「あ!起きていたんですね、お加減はいかがですか?」


 栗色の髪の少女がそう言って入ってくる。

 彼女のことは覚えている。最初に目が覚めた時に見た顔だ。


「あなたはたしか、、、ノア、、、だったかしら?」


「はい!そうです。」


 と言った彼女は朗らかに笑い近くにあった椅子へと座る。


「すいません、お手をして礼しますね。」


「え!」


 そうゆうと手を取って手首に手を置いて目を閉じる。

 すると合わせた手が淡い緑の光に包まれると手に暖かなぬくもりを感じた。

 最初は驚いたけど、そのぬくもりが次第にわたくしの心を落ち着かせていく。


「うん、体の方は大丈夫ですね。」


 手を放してそう言った。


「い、今なにをしたの?」


「はい、私の魔力を使って異常があるかを調べたんです。その結果、体に有った毒は完全になくなっています。でも毒を受けた足の方はまだしばらくは動かすことはできないと思います。」


「そう、、、、それってどれくらい?」


 そう聞くと指を顎に当てトントンとしながら考えている。


「大体一週間くらいですかね。」


「一週間、、、。」


 そう聞いてぎゅっと唇をかみ手で布団を掴むと顔を伏せる。

 それじゃあ間に合わない。早く向かわないといけないのに。


「、、、、あ!お風呂入りませんか?!」


「、、、、え??」


 顔を上げると、ニコっと笑った顔が此方を見た。


「一応お体の方は綺麗に拭かせてもらいましたが、やっぱり一回温かいお湯に入って疲れを取った方がいいです。」


 と言って、立ち上がる。


「丁度今、お湯を沸かしたばかりで、すぐに入れるようになってますから。」


「え、え、、、、、、。」


 突然のことに、思考が追い付かずにいる。

 何!いったい何を言っているのこの子は、お風呂!今はそんな場合じゃないのに、わたくしにはやらなくちゃいけないことがあるのに!

 と思ったが、実際頭の中では今はのわたくしには何もできないと分かってしまうとそのことばをくちにだすことはできなかった。


「ファナさん!イーリンさんをお連れしてください。私は準備してきます。」


「うん。」


 とそこで初めて聞いた声が聞こえる。とても涼やかで、静かな風の様な澄んだ声。

 その声の主が部屋に入って来るのを見て顔を上げると、そこに立っていたのは蒼い髪の少女、年齢は同じくらいだろうかとおもった。

 だが、すぐに彼女が人間ではないことが分かった。それは蒼い髪から突き出ている赤い角、細く綺麗な角がみえる。

 始めて見るその姿に、驚いて目を見開いていると、ばっと布団がはがされ私の肩と足に手が入って来る。


「え!、、ちょっ!」


 あまりの唐突な行動に再び私は混乱する。がその角の少女は何の前触れもなくぐっと私の体を持ち上げて歩き出した。


「ちょっと、あなた!こんないきなり。」


「ファナ。」


「え?」


「私の名前はファナ。」


 といきなりの事に教で何度目か分からない混乱に、もう私の頭は思考することを拒否した。

 だから私は、そのままファナと名乗った彼女に抱かれたまま呆けていると。


「あなたは?」


「イーリン、です。」


「うん、イーリン、よろしく。」


 とファナが言った後、スタスタと歩き始めるのだった。 

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